中絶の権利が覆されようとしているアメリカ
今年のグラミー賞で最優秀新人賞を受賞した、現在19歳のシンガーソングライターであるオリヴィア・ロドリゴが、現地時間5月4日に米・ワシントンD.C.のジ・アンセムで行なった公演で、中絶の権利を訴えた。
アメリカでは先日、アメリカ連邦最高裁判所が女性の人工中絶をする権利を認めた1973年の判例「ロー対ウェイド判決」を覆す見通しであることを示す草案の存在が明らかになり、波紋が広がることに。
この草案は、妊娠15週目以降の中絶を禁じたミシシッピ州独自の法律の合憲性をめぐる訴訟に関し、“中絶を認めるかどうかは各州に委ねるべき”だとする多数意見をまとめたもの。この草案が成立すれば、中絶に反対意見を唱える政治家が主導権を持つ州で女性たちの選ぶ権利が脅かされる可能性が高く、NPO団体プランド・ペアレントフッドは、アメリカの複数の州が草案の成立後に中絶を違法とすることを検討していると伝えている。
オリヴィア・ロドリゴが中絶の権利を訴え
連邦最高裁のあるワシントンD.C.などでは抗議デモも行なわれるなど、この草案に多くの反対の声があがっているなか、今回、オリヴィアもワシントンD.C.でのライブで中絶の権利に言及。
「私たちがいるここワシントンDCで、最高裁が下しかねない決断にいかに私が胸を痛めているということを伝える機会を逃すわけにはいかなかった」と、中絶の権利を脅かしかねない草案に触れたオリヴィアは、「私たちの身体は決して政治家たちの手に委ねられるべきじゃない」と断言。
「私たちが自分たちの身体の権利を守るために声をあげられることを私は願ってる。安全な中絶は、昔の人たちが懸命に取り組んでくれた結果の権利なのだから」と続けて、中絶の権利を訴えた。
� | Olivia talked about women’s abortion rights tonight at #SOURTOURdc� pic.twitter.com/emQoggVfnV
— Olivia Rodrigo Daily (@DailyRodrigo) May 5, 2022
この草案をめぐっては、オリヴィアだけでなく多くの著名人からも抗議の声があがっており、オリヴィアも大ファンであることで知られるシンガーソングライターのフィービー・ブリジャーズは先日、草案を受けて自身が人知れず中絶していたことをSNSで告白。中絶の権利を支持するようファンに呼びかけた。
また、アメリカのジョー・バイデン大統領も草案を受けて中絶の権利を擁護しており、「女性の選択権は基本的な権利だと信じています。ロー判決はこの国でおよそ50年にわたって法律として存在し続けました。基本的な公平性と法の安定性から、それが覆らないことを望みます」と声明で述べた。(フロントロウ編集部)