ここ数年で耳にするようになった「包括的性教育」ってなに? また、日本の性教育で問題となる“はどめ規定”って?(フロントロウ編集部)

ユネスコによる「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」

 ここ数年で耳にすることが増えた「包括的性教育」。ユネスコなどが2009年に作った「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」で使用されている言葉で、そのなかでは8つのキーコンセプトを大事にしている。

① 人間関係
② 価値観、人権、文化、セクシャリティ
③ ジェンダーの理解
④ 暴力と安全確保
⑤ 健康とウェルビーイングのためのスキル
⑥ 人間の身体と発達
⑦ セクシャリティと性的行動
⑧ 性と生殖に関する健康

 性教育と聞くと、性行為や、理科的な受精や妊娠の仕組みを教えると想像しがちだが、ガイダンスに書かれている言葉からも、性教育は人間関係や生き方、ジェンダーといった多面的な視点から進めていくものだと分かる。

 国際性教育ガイダンスでは、5歳から8歳、9歳から12歳、12歳から15歳、15歳から18歳という4つの年齢グループに対して、それぞれの学習内容を設定している。つまり、子どもが5歳の頃から性教育をスタートさせることが推奨されている。

画像: ユネスコによる「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」

日本の性教育では「はどめ規定」が問題になる

 一方で、日本の性教育は世界的にみても非常に遅れており、子どもたちを守るためにも早急な変革が必要とされている。文部科学省が2021年に公開した「生命(いのち)の安全教育」では、性暴力やデートDVについても触れるものの、依然として“はどめ規定”に従ったものとなっている。

 学習指導要領のはどめ規定とは学習内容を限定した規定のことで、性に関するものでは、小学5年の理科の「人の受精に至る過程は取り扱わないものとする」と、中学1年の保健体育科の「妊娠の経過は取り扱わないものとする」の2つ。

 この記述があることが、日本の教育現場で「性交(セックス)」が取り扱われることを拒んでいる。

 一方で、国際セクシュアリティ教育ガイダンスでは、性交について取り扱われるのは9歳から12歳の段階。

画像: 日本の性教育では「はどめ規定」が問題になる

 文科省はNHKの取材に対して、「『はどめ規定』の内容についても、各学校でその必要性があると判断すれば、指導することはできる」と回答しているが、2018年に、足立区の中学校が授業で性交や避妊、人工妊娠中絶について教えたところ、自民党議員が文教委員会で問題視。教育への不当介入だとして大きな批判を浴びたものの、教育現場を委縮させることにも繋がってしまった。

 また、文科省によると、この「はどめ規定」が学習指導要領に初めて記載されたのは1998年の学習指導要領改訂時だというが、NHKが文科省に対して行政文書の開示請求を行なったところ、「はどめ規定が記載されるまでの経緯の詳細を示す文書はございません」と回答されるという不可解な出来事もあった。

 性教育の議論になると、一部から“やりすぎ”“過激”といった声があがることもあるが、知識がない性的な行為によって精神的・身体的に傷を負ってからでは遅いのは明白。

 2022年の参議院選挙にあわせて、みんなの未来を選ぶためのチェックリストが主要8政党に対して行なった質問状では、『「はどめ規定」を撤廃し、人権尊重と科学的根拠に基づく包括的性教育を推進しますか?』という項目があった。

 その質問において、推進しないとしたのは自民党のみ。「不適切な性教育やジェンダーフリー教育などは行わせません」と回答している。また、国民民主党は無回答。公明党は△としている。

 その他の政党は推進するとした。

(フロントロウ編集部)

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