2020年にスタートした女性専用のタクシーアプリが話題を呼んでいる。その背景には、女性はタクシーに気軽に乗れないという問題がある。(フロントロウ編集部)
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女性専用タクシーアプリがアメリカで誕生

 アメリカのジョージア州アトランタで、ある企業が話題を呼んでいる。「HERide」は配車サービスのアプリ。しかしアメリカではすでにUber(ウーバー)やLyft(リフト)といったタクシーアプリが非常に多くの人々に使用されているが、なぜHERideが注目を集めているのだろうか?

 それは、このタクシーが“女性専用”なことにある。

 HERideは黒人女性2人が2020年にスタートしたタクシーサービス。創設者であるジュリアン・アンダーソンは、元々Uberのドライバーとして働いていたが、深夜にタクシーを利用した女性客からは運転手が女性で良かったと安心する声が多く、その後はジュリアンを指名する女性も多かったそう。

 女性が直面するその状況について考えていたジュリアンは、ある時、UberもLyftもたった2人が立ちあげた企業だと知って、自分も行動を起こすことにしたという。そこで、ドヴィエンヌ・スタークスとともにHERideを立ち上げた。

 HERideが提供するタクシーの運転手は全員が女性で、経歴などを厳しくチェックしたうえで雇用されているという。また、女性の人権を重要視する同企業は、女性客だけでなく女性運転手への支払いも業界のスタンダートよりも高く設定しており、さらにインセンティブをつけているそう。

 しかし、“女性専用”にはいつだって非難が起こる。米Essenceのインタビューでジュリアンは、「私たちのプラットフォームが女性ドライバーを優先しているため、それは(男性に)差別的だと言う人がいます」と明かしたうえで、その信念についてこう述べた。

 「私たちは議論を起こすことを強く信じています。誰かが始めなければいけません。私たちは、初めての女性による女性のためのライドシェアアプリではないですが、この事業の後ろで非常に明確な行動喚起をしており、人々に教育を望む初めての2人だと思っています」

 タクシーアプリのUberではUberが把握しているものだけで2017~2018年に「5,981件」の性暴力が報告されており、被害者の9割が女性だったという。また、先日7月13日には約550人の女性を原告として、Uberドライバーによるレイプや性暴力、ストーカー、誘拐といった暴力を理由にUberに対して裁判が起こされた。

 日本でも、電車の女性専用車両には非難が起こることもあるが、根本的な原因である痴漢といった性暴力の解決にはまったくと言っていいほど対策が行なわれていない。女性専用を非難する前に、なぜ女性専用が必要となるのか、そして本来は“女性専用が必要でない社会”が必要とされているにもかかわらず、女性専用が作られざるを得ない状況となっていることについて考えるべきだろう。

(フロントロウ編集部)

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