ジョナサン・ヴァン・ネスが、サル痘に対する政府の対応の遅さを批判。(フロントロウ編集部)

ジョナサン・ヴァン・ネス、サル痘は社会的弱者の立場を表していると指摘

 Netflixによるリアリティ番組『クィア・アイ』の美容担当であり、優しく温かい性格で知られるジョナサン・ヴァン・ネスが、米Timeに寄稿。現在、世界各国で危機感が募っているサル痘について、政府の対応を批判した。

 WHOによると、サル痘は「感染者や感染した動物、ウイルスに汚染された物との近い接触によって、人に移される」もの。性別に関係なく感染する可能性があるが、WHOの報告では感染者の99%が男性で、95%は男性とセックスをする男性となっている。

 そのため、ノンバイナリーであり恋愛対象は男性であるジョナサンは、サル痘への政府の対応が遅いのには、クィアな人々への無関心があると意見を述べた。

画像1: ジョナサン・ヴァン・ネス、サル痘は社会的弱者の立場を表していると指摘

 「サル痘に対する政府の未熟な対応を見続けていることは、奇妙なことです。そして多くの面から、私はそれがホモフォビアやトランスフォビアによって加速していると信じています。アウトブレイクが主に男性とセックスをする男性に影響する時に、選挙で選ばれた議員の多くには行動に起こす動機がありません。議員は自分たちの支援者には関係のないことだと思うからです。人々の命が危険にさらされていて、50のすべての州にクィアの人々はいるのですから、それはもちろんバカげたことです」

 政治家のなかに同性愛者や、女性や、少数民族といった人々は少ない。だからこそ、そういった人々の立場や権利は抑圧されたり、無視されたりしてきた。今回もその事例の1つだと指摘したジョナサンはさらに、80年代に起こったエイズ危機についても言及。エイズ危機では、男性とセックスをする男性が感染者を多く占めていたため“同性愛者の病気”という誤った情報(※)が広まり、差別・偏見のせいで政府が早急に対応しなかったという暗い歴史がある。ジョナサンは、その経験をしておきながら、今回も対応が改善されていないことについて、「リーダーたちには非常に落胆しています。とくに、バイデン大統領やペロシ下院議員といった、エイズ危機真っ只中にも政治家だった人達には」と苦言を呈した。

 ※HIV/AIDS は膣挿入でも感染する可能性があるが、アナルセックスの方が感染率が高い。男性とセックスする男性での感染率が高い一因は、アナルセックスをする割合が異性愛者の男女よりも高かったことがある。

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 そしてさらに、社会は新型コロナウイルスのパンデミックを経験したばかりであり、対応の経験や知識は蓄積されたはず。しかしジョナサンの周りでも感染者が出ており、ワクチンも行き渡っていないと実感しているそうで、「私たちは最近の歴史のなかで、政権が多くのワクチンを早急に調達したのを目撃しました。この政権がサル痘のワクチンを早急に調達することを優先するのを目撃できていないのは何故なのでしょうか?」と綴った。

 ジョナサンは87年生まれであり、エイズ危機は経験していないものの、2019年にHIV陽性であることを公表。25歳の時に診断を受けており、偏見と闘ってきた。そのため、今回のサル痘の状況は、HIVや、偏見をともなうすべての病気を抱える人、ひいては社会的弱者の置かれている立場を示しているとして、こんな思いで文章を終えた。

 「そして覚えていてください。現在の問題はサル痘ですが、HIVもまだあります。人々が苦しんでいる様々な病気があり、治療にアクセスするためには多くのスティグマとバリアがあります。これは、ただのサル痘の話ではありません。これは、私たちはどうやっていつも隅に追いやられている人々を見捨てているかの物語です。私たちは何を目撃したいのかについて、勇敢にならなくてはいけません。そして、誰も、この2カ月で広がっているアウトブレイクを目撃したいと思うべきではなかった」

(フロントロウ編集部)

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