ガブリエル・ユニオン、性暴力被害でPTSDを抱えた30年
映画『チアーズ!』や、リアリティ番組『アメリカズ・ゴット・タレント』の元審査員として知られるガブリエル・ユニオンは、19歳の時にレイプ被害に遭った。アルバイト先のショップで、拳銃を突きつけられてレイプをされた彼女は、その後PTSD(※)と診断された。
※心的外傷後ストレス障害。体験の記憶がフラッシュバックしたり、悪夢に見たり、不安や緊張が高まったり、辛さのあまり現実感がなくなったりする状態のこと。
その後、犯人は33年の実刑判決を受けた。また、アルバイト先のショップは、犯人が他の店舗でも強盗したことを知っていながら彼女に教えていなかったため、彼女はアルバイト先に対しても裁判を起こして勝訴している。
しかし、犯人が実刑判決を受けようと、ガブリエルの経験がなかったことになるわけではない。彼女はその後、現在まで、30年にわたってPTSDと闘い続けてきた。自伝『We're Going to Need More Wine』のなかで、被害に遭った直後の1年間は、裁判所かセラピーに行く以外にまったく外に出られなくなってしまったと明かしている。
そして先日、インスタグラムでふたたび被害経験やPTSDについて思いを綴ったガブリエル。他のサバイバーへの愛も溢れていた。
「レイプサバイバーとして、PTSDと30年間戦ってきました。その年月を、不安とパニック発作を抱えて生きることは決して簡単なことではなかった。不安が酷く、人生が縮められることもあった。外出することや、信号で左折することは恐怖になりえた。不安によって、参加することを楽しみにしていたパーティーや楽しいイベント(メットガラとか)への期待が、苦痛になってしまうこともある。
私たちが経験したことについて話す時には、初めてそれについて話した時に私たちを信じてほしい。ただナーバスになっているわけではないし、どのように不安を経験するかも、不安にどう向き合うかもそれぞれ異なる。そしてそれで良い。私はあなたが私を“治す”ことを必要としてない。不安を抱えている人に、あなたはひとりではないと、あなたは“大げさではない”と知ってほしいから、これをシェアします。私にはあなたが見えるし、共感するし、あなたへの愛は多く存在するの。いつでも。良い人たちを見て、愛しなさい。お互いに仲良くね」
性暴力被害の影響は大きく、長い
アメリカで性暴力撲滅のために活動する非営利団体RAINNによると、レイプ被害に遭った女性のうち94%が、その後2週間でPTSDを経験。そして、被害から9ヵ月ほどが経ってからPTSDを経験する女性も30%にのぼる。そして33%の女性が自殺を考え、13%が実際に自殺を試みるという。性暴力はそれだけ被害者の精神や生活を崩す。
ガブリエルの場合のように、犯人がすぐに捕まることもあるが、捕まらないことも多い。被害者が犯人を知っており、その後告発することもある。その場合に、第三者から“なぜ今さら”といった被害者非難(ヴィクティム・ブレ―ミング)やセカンドレイプが起こることも、残念ながら多い。しかしガブリエルが明かすように、被害はそう簡単に消えるものではないし、告発となれば、さらに十分な心の回復・準備が必要になる。
告発に時間がかかることについては、性暴力では被害者が被害を認識しづらいという点もある。一般社団法人Springの調査によると、挿入を伴う性暴力被害に遭った回答者のうち、63.3%がすぐにそれが「被害」だとは認識できなかったと答えた。また、身体に触れられる被害に遭った人では、約半数の割合だった。
ちなみに、性暴力の被害者は、そうでない人に比べてマリファナを使う確率が3.4倍、コカインを使う確率が6倍、そしてその他の有名な薬物を使う確率は10倍になる。アメリカと日本では状況が異なるだろうが、日本でもアルコールやたばこなど、依存性が高いものへの依存は危惧されると言える。
(フロントロウ編集部)