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“女性だけ” “女性だから” 女性の服装に関する「理不尽なルール」が変わる

FRONTROW Editorial Dept.
BY FRONTROW Editorial Dept.
“女性だけ” “女性だから” 女性の服装に関する「理不尽なルール」が変わる

女性の生きやすさ働きやすさのハードルになっているドレスコード(=服装のルール)。日本でも問題になっており、数年前、女性に対して職場でハイヒールやパンプスの着用を強制することを禁止するよう求めるKuToo運動が広がったことがきっかけで、いくつかの企業でルールの見直しが行われたが、海外でもさまざまな場所でイノベーションが起きている。(フロントロウ編集部)

ヴァージン・アトランティック航空は「ジェンダー別の服装規程」を廃止

 多くの航空会社には、客室乗務員の服装やメイクアップに関するガイドラインが存在しており、老舗企業ほど女性客室乗務員に求めるルックスへの規定が厳しい傾向にある。

 そんな保守的な業界を変えるべく、イギリスのヴァージン・アトランティック航空は、2019年に社員が性別に縛られず快適に勤務できるよう一部のルールを変更。それまでリクエストがなければ支給されなかったパンツを、今後はスカートとともに規定の制服として支給することを決定した。さらに、フラットシューズの着用を認めると同時に、メイクアップは歓迎するが義務でははないとしてノーメイクも許可するなど、数年前からドレスコードやルールの緩和を進めてきた。

 その取り組みがさらに進化して、ヴァージン・アトランティック航空は2022年にジェンダー別の服装規程を廃止することを発表。この方針変更によって、ヴァージン・アトランティックで働く客室乗務員、パイロット、グランドスタッフは性別、性自認、性表現に関係なく、自分の好きな制服を着用できるようになった。

生徒が一致団結して女子生徒の自由を奪う「ブラック校則」を変更

生徒が一致団結して女子生徒の自由を奪う「ブラック校則」を変更

 日本でも最近よく耳にする「ブラック校則」。何十年も前に作られた校則が、現在に至るまで一度も改変されることなく存在しているのは日本だけでなく、海外も同じ。とくに、私服の学校が多いアメリカでは「タンクトップまたはキャミソール禁止」「レギンス禁止」「ショートパンツ禁止」など女子生徒だけを対象とした校則が多くあり、全米教育統計センターによると、アメリカ国内にある中学校の62%、高校の56%でこのような服装規定が設けられているという。

 カリフォルニア州アラメダにあるリンカーン中学校に通っていたクリステン・ウォンも、ブラック校則の犠牲になったひとり。当時12歳だったクリステンは、タンクトップにカーディガンを羽織っていたところ、ある女性教師に呼び止められて「(その服は)二度と着てはいけません。次はペナルティーを課します」と口頭で注意を受けたと米Fast Companyに語った。

 クリステンいわく、リンカーン中学校には、「破れたジーンズは禁止」「ブラジャーのストラップを見せてはいけない」「ショートパンツは一定の長さでなければならない」といった服装規定があったが、その影響を受けていたのは女子生徒ばかりで、男子生徒が夏の暑い日にタンクトップや短パンを着用していても注意されることはなかった。

 それから数週間後、慕っていた女性教師から「何人かの生徒がドレスコード(服装規定)に不満を表明しているんだけど、みんなで協力して変えてみない?」と声をかけられたクリステンは、行動を起こすことを決意。この取り組みに女子10名、男子1名が参加したそうで、リサーチや話し合いを何度も重ねた末に教育委員会に新しい方針を提案した。ひとりでも多くの先生の理解を得るため、クリステンたちはただ「変えてほしい」と訴えるのではなく、“冒涜的な言葉や不適切な画像が描かれたものがダメというのは理にかなっているが、いくつかのルールはそうではない”ということをしっかりと説明。その結果、服装規定の改定が行われることが正式に決まった。

 ちなみに、クリステンは最初に背中を押してくれた女性教師の提案で、自分の通っている学校だけでなく、アラメダ地区内にあるすべての学校の服装規程を改変し、各学校で自由に定められていたルールをひとつに統一することを約2年間かけて達成したそう。

女子プロスポーツの各団体や競技会が「白のユニフォーム」を見直し

女子プロスポーツの各団体や競技会が「白のユニフォーム」を見直し

 テニスの4大大会のひとつとして知られるウィンブルドン選手権では、選手は男女問わず、ユニフォームから靴、リストバンド、下着にいたるまで「白」を着用することが義務付けられている。なお、米CNNによると、この厳格なドレスコードは汗染みを隠す目的で導入されたものだという。

 女性限定で設けられたルールではないが、生理中の女性にとって白ほど恐ろしい色はない。テニスは試合の展開によって長丁場になることもあり、万が一、白い下着やユニフォームに経血が漏れてしまったら一瞬にしてわかってしまう。多くの女性選手は大会期間中に生理が来ないことを願い、もし生理が来てしまったら、その不安と戦いながら試合に臨むことになる。また、なかには薬を飲んで生理をずらす選手もいる。

 ウィンブルドン選手権に出場する選手にとって、このドレスコードはそれくらい大きな問題であり、実際、リオ五輪で金メダルを獲得したモニカ・プイグや、グランドスラム大会で39回の優勝を誇るビリー・ジーン・キングも、白い服に大きな不安を感じていたことを明かしている。

 そういった不満・不安の声があることを受けて、ウィンブルドン選手権を主催するオールイングランド・ローンテニスクラブは、昨年11月、「選手および複数の代表者と協議した結果、運営委員会がウィンブルドンにおける白い服のルールを更新する決定を下したことを、ここにお知らせします」と声明を発表。同団体は、2023年からウィンブルドン選手権に出場する女性は、「希望により色の付いたアンダーショーツを着用することができるようになる」としている。 

 ちなみに、同様の理由で、国際サッカー連盟とイングランドサッカー協会も、イングランド代表女子サッカーチームのユニフォームのショーツの色を、従来の白から生理中でも支障のない濃い色に変えるために協議を行なっている。

 なお、同じテニス界では、2018年に出産後初の全仏オープンに出場したセリーナ・ウィリアムズが、血栓症を何度も発症した経験から、従来のテニスウェアではなく血液の循環を促す機能があるキャットスーツを着用して話題になった。その後もセリーナは全米オープンでバレエの衣装として知られるチュチュを着て試合に臨むなど、女子テニス選手のウェア問題に一石を投じた。

 海外だけでなく、日本でも学校で女子生徒の制服にスラックスが導入されたり、金融機関で女性社員の制服が廃止されたり、ドレスコードをめぐる状況は変わりつつある。今はまだ小さな変化かもしれないが、積み重ねていくことで、もっと選択肢の多い世の中になることを願う。(フロントロウ編集部)

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