『エターナル・サンシャイン』ジョエルの視線に示された愛
ミシェル・ゴンドリー監督が手がけ、ジム・キャリーとケイト・ウィンスレットが共演した映画『エターナル・サンシャイン』。お互いの記憶を科学技術で消すことにしたカップルの物語を通して、恋愛の苦しさや、人を愛しく思うことについて普遍的な感情を探求する本作はアカデミー賞脚本賞を受賞し、時を超えて愛される名作となっている。
本作は主人公のジョエルとクレメンタインの出会い、交際、別れ、そして再会を、時系列を崩して描いているため、クレメンタインのころころ変わる髪の毛の色がヒントになるとはいえ、どのシーンがどの時期の話なのかは全編を見終えてから理解できる。そのため、2度、3度見返すと新たに発見する繋がりもあるのが魅力の1つ。そして、あるファンが米コミュニティサイトRedditで示した考察がエモいと支持を得ている。
注目したいのは、映画の最初でジョエルとクレメンタインが出会ったシーン。電車の中でクレメンタインに話しかけられたジョエルの“視線”が、2人の関係を示唆していた。
「『エターナル・サンシャイン』で、ジョエルは知らない女性とアイコンタクトを取ることができないと主張する。しかし、クレメンタインの記憶を消した後に、ふたたび彼女と出会った時、彼はアイコンタクトを取る。それは彼の中の彼女の記憶が完全には無くなっていないことを示している」
ここは実際には2人が“再会”したシーンだが、観客と記憶を無くした2人は、初めて出会ったと思っている。しかしジョエルは、知らない女性であるはずのクレメンタインをしっかりと見て話し、2人は急速に親しくなる…。
記憶が完全になくなっていないというより、「彼の意識的な記憶は消されたが、彼の潜在意識はまだ彼女の幽霊的イメージを持ち続けている」ということだと解釈したファンも多かったが、いずれにせよ、ジョエルはクレメンタインのことを忘れきっておらず、だから目をみて話したということ。
失恋や上手くいかない恋愛が辛すぎて、記憶を消したいと思ったことがある人は、多いはず。しかしそこまで思った相手は、記憶を消されても忘れられないかもしれない。それぐらい思いあっていた相手なら、ふたたび惹かれあってしまうかもしれない。
監督やジムがどの程度意図して演技を行なったのかは不明だが、『エターナル・サンシャイン』らしい細かな感情の表現だった。
(フロントロウ編集部)