LGBTQ+コミュニティの人を描いたビジュアルは 1%未満
1億7,000万点以上のコンテンツを中小企業や小規模事業者に提供する世界最大級のストックフォトサイト「iStock」によると、過去 10 年間、iStockで人気があった企業やブランドの広告ビジュアルの中で、LGBTQ+コミュニティを描いたビジュアルは、全世界で1%未満だったことが分かった。
実際に使用されているビジュアルも偏っている。年齢で言うと、若者が主流で、その他の世代は表現が少ない。人種で言うと、白人・黒人・多民族に寄っていて、アジア系の表現が少ない。ジェンダーアイデンティティで言うと、トランスジェンダー、ジェンダーフルイド、ノンバイナリーの人々が十分に表現されていないという。
「世界人口の 5%が LGBTQIA+であるとされ、さらに日本においては 9%近くの人が LGBTQ+を自認していることも考えると、さらに多様なビジュアル表現が必要であると言えます」と、iStockはしている。
日本では依然として、「虹」シンボルの描写が 6 割以上
LGBTQ+のビジュアル表現において、日本は世界と異なる特徴を見せているという。
直近1年間のiStock におけるビジュアルトレンドの分析結果によると、世界的には、 LGBTQ+コミュニティの人々が「日常生活」の中で描かれているビジュアルが人気を集めているそう。それに対して日本は、LGBTQ+コミュニティを実際に捉えた写真やビデオではなくてイラストが人気。
さらに、世界的には「虹」が用いられているビジュアルは全体の 30%であるのに対し、日本では 60%以上という高い割合。
iStockは、「日本の企業やブランドは、LGBTQ+コミュニティをビジュアルに反映させたいと思いながらも、どのように表現していいのか分からなかったり、『炎上』することを恐れたりといった、日本特有の理由も背景にあるのかもしれません」と分析する。
「レインボーウォッシュ」とは?「見せかけ」ではないビジュアルコミュニケーションを
環境保護を装っているように見せかけておいて、実際は会社のイメージ向上を目的とした宣伝手法としてエコを謳うことは「グリーンウォッシュ」と呼ばれるが、企業がロゴや商品などに虹色を使ったりして、自らの利益のためにLGBTQ+のコミュニティに対する支援を装うことは「レインボーウォッシュ」と呼ばれる。
レインボーウォッシュにならないためには、まずは企業の内部にLGBTQ+コミュニティへの支援や理解を推進する必要がある。そして、社内にLGBTQ+のスタッフのレプリゼンテーション(表象)やコミュニティへの理解があって初めて、それがサービスやマーケティングに適切に反映される。
そして、ここでビジュアル表現がどのように関与してくるのか? iStockでは、「企業が LGBTQ+の消費者や従業員に対し、どのような違いを生み出しているかを示す、リアルで共感を呼び起こすビジュアルを取り入れることが重要です。例えば、さまざまな家族の形や日常生活を描写することが挙げられます。「虹」シンボルで、単に LGBTQ+フレンドリーであることを支持するだけのビジュアル表現よりも、こうした表現の方が、大きな可能性を秘めていると言えます」としている。
そのうえで、iStockが提案する、LGBTQ+コミュニティを描くビジュアル表現について考えるときに考慮すべき3点がコチラ。
- 仕事や日常生活の中で、多様なシナリオや役割で活躍する LGBTQ+の人々を映し出していますか?
- LGBTQ+の人々が、コミュニティ内外で共有する経験を映し出していますか?
- トランスジェンダーやノンバイナリーなど、さまざまなアイデンティティを持つ人々を表象していますか?
LGBTQ+の人々は私たちの社会に存在する大事な仲間。そしてその人権が支持されるべきなのは、プライドイベント中だけではなく365日。企業として、メディアとして、普段からコミュニティの一員を正しく描くためにも、ビジュアル表現には責任を持たないといけない。(フロントロウ編集部)