英国規格協会(BSI)が生理や更年期障害を抱える女性をサポートする新たな指針を発表した。あらゆる年齢の人材を適切に雇用できるよう推奨事項を定めており、「素晴らしい前進」だと評価されている。(フロントロウ編集部)

生理や閉経と共に生きる人たちが働き続けるために企業ができることは?

 英国規格協会(BSI)は5月31日、企業が更年期障害または生理に悩む従業員をサポートするための新しい職場指針を発表した。

 職場における月経に関する理解の必要性は近年強く訴えられているが、それでも、生理や更年期に関する方針を導入している職場は「英国では少数派」だとBSIは指摘。一部の女性、トランスジェンダー男性、ノンバイナリーの人がより良く仕事に取り組むためには調整が必要だと強調した。

 BSIでは、生理や更年期障害に関する誤解を解くことを目的に、企業や専門家、一般からの意見をもとに指針を作成。企業に推奨された指針は以下のとおり。

  1. 職場文化を見直し、生理と閉経について一般的な認識があるか、従業員がオープンな会話をすることができるか、サポートが必要かを判断する。
  2. 管理職が生理と閉経による影響を理解するための研修などが実施されているかを確認する。
  3. 職場環境が適切か、トイレや個別の更衣室があるか、静かな休憩スペースを誰もが使用できるかを確認する。
  4. 福利厚生や働き方などの方針が生理と更年期を考慮しているかをチェックする。
  5. 仕事に柔軟性があるかを確認する。例えば、スケジュール、休憩のタイミング、冷暖房の調整、ストレッチの機会などが含まれる。

 この指針は警察官のような立ち仕事や建設作業員のような肉体労働など、様々な職種の労働者を対象としている。一方、人によって生理と閉経の悩みには差があり、誰もがサポートを望んでいる訳ではないことから、柔軟な対応が求められるともされた。

 BSIのディレクターであるアン・ヘイズ氏は「(更年期の時期に)何千人もの女性が退職していることがデータから分かっています。それが、生産性を著しく低下させ、組織から優秀な人材を奪い、新入社員をサポートするために自分の経験を生かせるメンターを排除しています」とコメント。「多くの雇用主は生理や閉経に悩む人々をサポートしたいと考えているが、その方法についての知識が不足している可能性がある」と指摘し、指針が示す推奨事項を実践することにより、「すべての労働者がやる気を感じ、長く職場にとどまることができるようにするためのサポートを提供できる」と述べた。

更年期はキャリアに影響大、背景に深刻な機会損失

 今回の指針は、キャリアのピークにある熟練の従業員が更年期障害によって早期退職することを防ぐ目的で作成された。その背景には、更年期障害に伴う深刻な機会の損失がある。

画像: 更年期はキャリアに影響大、背景に深刻な機会損失

 2022年に4,000人を対象に実施したChannel 4の番組の調査では、更年期を迎えた時に働いていた女性の10人1人が症状を理由に仕事を辞めたことがあることが発覚。イギリスで更年期の女性を対象に実施されたものとしては最大規模とされている同調査では、14%の女性が仕事の時間を短縮し、14%がパートタイム勤務に切り替え、8%が昇進を諦めたことも分かった。

 また、英国の慈善団体であるフォーセット協会の調査によると、更年期障害中に働いていた女性の1割が、めまいや筋肉のこわばりなどの更年期症状が原因で退職していることがわかった。さらに、より重篤な症状のある女性の場合は25%が職場を辞めている。

 米フォーブスの報道では、2025年までに世界で閉経を経験する女性は10億人を超えると予想されている。これは世界人口の約12%に相当する。そして米ブルームバーグは、世界中で更年期障害に起因する生産性の損失は年間8100億ドルに達すると推計している。(フロントロウ編集部)

This article is a sponsored article by
''.