ウェス・アンダーソン監督『アステロイド・シティ』とは
アメリカでは先週末の興行成績トップ10作品の中でも最高値となる館アベレージを記録し、脚本も担当したウェス・アンダーソン監督作品の中で最高の週末数字を達成して話題の映画『アステロイド・シティ』。
本作の舞台は、アメリカ南西部にある砂漠の街“アステロイド・シティ”。そこで開かれる、ジュニア宇宙科学大会にあるまった5人の天才的な子どもたちとその家族。母を亡くしたことを子どもたちに言えない父親、バツイチの女優、それぞれが複雑な想いを抱えつつ、大会は幕を開ける。そして…まさかの宇宙人到来!?この予想を超える一大事件により、人々は大混乱に。街は封鎖され、軍は宇宙人の事実を隠蔽しようとし、子供たちは外部へ情報を伝えようと試みる。果たしてアステロイド・シティと、そこに閉じ込められた人々はどうなる!?
キャストには、ウェス監督作品ではおなじみの、ジェイソン・シュワルツマン、エドワード・ノートン、ティルダ・スウィントン、エイドリアン・ブロディ、ウィレム・デフォーらに加え、スカーレット・ヨハンソン、トム・ハンクス、マーゴット・ロビー、マヤ・ホーク、スティーヴ・カレルなど豪華キャストたちが共演する。
『アステロイド・シティ』は「ジェイソンのためにつくられた」
『アステロイド・シティ』誕生のキーパーソンとなっているのが、主人公となるオーギー・スティーンベックを演じるジェイソン・シュワルツマン。ウェス・アンダーソン監督は、「この映画はジェイソンのためにつくられた」と言う。「私たちが知っているジェイソンの性格や能力を活かしながら、彼が演じたことのない役をつくり、その役を中心に映画全体を構築していったんだ」と語った。ジェイソンは、『天才マックスの世界』(98)以降、数々のウェス・アンダーソン監督作品に出演し、ウェス作品にとって欠かせない俳優のひとり。『ダージリン急行』(07)では、ウェス監督、ロマン・コッポラとともに脚本にも携わった。ジェイソンを軸にした映画を。ジェイソンのすべてを知り尽くしたウェス監督らしい世界観の出発点だった。
ジェイソン・シュワルツマンが演じるオーギー・スティーンベックは戦争カメラマンで、ジュニア宇宙科学大会に招待されるほど優秀な息子と、三つ子のかわいらしい娘を持つ父親。しかし、数週間前に妻を亡くし、子どもたちにそれを伝えられずにいる。オーギーを演じるにあたって、ジェイソンは口を一文字にした状態でのしゃべり口調をつかむために、カメラマンとしての経歴を持ち、『2001年宇宙の旅』(68)、『シャイニング』(80)などの作品を手がけた映画監督、スタンリー・キューブリックの音声を聞き、自宅に暗室を購入し、徹底的な役作りを経て撮影に臨んだという。
ウェス監督はジェイソンへのオファーの際、「アイデアがあるのだけれど、ロマンと一緒に取り組みたい。というのは、君に出演してもらいたいからなんだ。ロマンとふたりで脚本を書いて仕上げ、それをひとつの作品として君に読んでもらうのが最善だと思っているんだ」と語ったという。それに対してジェイソンは是が非でも参加したかったと強い気持ちを明かした。「新型コロナウイルスのパンデミックが始まり、いつにも増して不安と混乱が渦巻く混沌とした時期だった。だから、ウェスと一緒につくることになりそうな話がきたことは、混沌とした霧のなかで灯台を見つけたようなものだった。その当時、どんな作品なのかもまだ知らなかったけれど、それでも灯台のような存在だったよ。それだけは分かっていた。オファーをもらって本当に助かったんだ。心から感謝しているよ」。
さらに、ウェス監督はジェイソンと出会った当初に思いを馳せながら、「ジェイソンは私の初期の作品で主役を演じてくれていて、ほぼ全シーンに登場しているのですが、ジェイソンの素の部分をおおいにキャラクターに活かしました。準備期間も長く、お互いを頼りにしながら進めていったのを覚えています。あれから26年経ったわけだけれど、それでもジェイソンとの緊密な連携は変わりません。今回も、出番でなくても、衣装を着たまま現場に張り付いてくれたりしていたから」と、ふたりの信頼関係について語った。
そんなウェス監督とジェイソン・シュワルツマンの現場での様子をキャッチしたメイキング写真が到着。オーギーの義父であるスタンリー・ザックを演じるトム・ハンクスも交え、真剣な表情で向き合う姿が捉えられている。ウェス・アンダーソン監督最新作『アステロイド・シティ』は9月1日(金)より日本公開。