「参考」にできる存在がいなかった女の子たちの参考になれた
サッカー界のレジェンドであるブラジル代表のマルタが、自身のキャリア最後となるFIFA女子ワールドカップから敗退した日の記者会見で、「ご存じですか。最高なことがあるんです」と言ってこう続けた。
「私がプレーを始めた当初、私にはお手本にできる女子選手がいなかった。あなたたち(メディア)は女子の試合を取り上げなかったですからね。私には他の選手を見る機会がありませんでした。自分が国の代表チームに入って誰かの参考になれるなんて考えることができませんでした。
今、私たちが街を歩くと、人に止められます。親御さんは『娘はあなたが大好きです。あなたのようになりたがっています』と言うのです。私だけではありません。ほかのアスリートもそうです。私たちには参考にするものがあります。
もしも私たちが最初に障害にぶち当たった時にやめていたら、こうはならなかった。これは継続的な粘り強さの結果です。そしてこれに貢献したのは私が初めてではありません。過去のたくさんの女性たちの存在があります。
私たちは誇りに思っています。そして今の世代には、より多くの女の子や男の子をインスパイアする活動を続けるよう強く求めます。20年を経て、私たちは世界中の女性たちが参考にする存在になれたのです。サッカーだけではありません。(※記者席の女性を指さして)ジャーナリストもそうです」
自分が若い頃はサッカー界で活躍する女性というレプリゼンテーション(表象)がなかったが、20年で状況は大きく変わった、これからも変われると涙目で訴えたマルタは、「私はいつも泣いていると有名ですから!」とジョーク。会場からは笑いが起こった。
今回で6度目となる出場となったマルタのワールドカップの旅はこれで終了。本人は今回が最後であることを明言している。キャリア中にブラジル女子の優勝を経験することはできなかったが、男女合わせて歴代最高得点者となり、ブラジルをはじめ世界中のサッカー少女・少年のインスピレーションとなるという偉業を残した。