ハマスがイスラエルに奇襲攻撃、双方の死者は1500人超に
9月7日、パレスチナ暫定自治区のガザ地区を実効支配するハマスがイスラエルに大規模奇襲攻撃をしかけてイスラエル領内で少なくとも900人が死亡。民間人を含む100人超が人質として拉致された。そしてガザでは、その後のイスラエルによる反撃によって少なくとも680人が死亡したと報道されている。
今回の紛争は世界中で大ニュースになっているが、いつもならば真っ先にSNSで啓もう活動や支持表明を行なうハリウッドセレブの間では、静観する人が多い。
例えば、2022年2月にロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始したときには、アンジェリーナ・ジョリー、ブレイク・ライブリー&ライアン・レイノルズ夫妻、ジジ・ハディッド、マイリー・サイラス、スティーブン・キング、アニー・レノックスなど多くのセレブがウクライナへの支持や犠牲者支援についてコメントしたが、現時点で彼らからのコメントは確認されていない。
一方、現時点でコメントを発表しているセレブたちのもとには多様な意見が集まっており、なかには、後から釈明のコメントを発表したセレブや投稿を削除したセレブもいる。
政治参加を推奨するハリウッドでもガザ問題はタブー、一体なぜ?
政治的な発言をするべきであるという意識が強いハリウッドだが、Hollywood Reporterが過去に『ルール1、ハリウッドでは政治の話をどんどんしましょう。ガザ地区の問題以外は』と報じたように、パレスチナ・イスラエル問題は“触れない方が良い話題”として知られてきた。
イスラエル・パレスチナ紛争は複雑な問題だが、約2000年前に祖国が暮らしていた土地に国を建国したイスラエルと、イスラエルの建国によって領土を奪われたとするパレスチナを中心に争いが続いている。国際連合人道問題調整事務所(OCHA)によると、2008年1月~2023年8月の間で両者の紛争によってパレスチナ側で死者6,390人・負傷者約15万人、イスラエル側で死者308人・負傷者約6,300人が出ており、2023年は死者数が「2005年以来最高」に達していると国連が8月に発表していた。
ハリウッドでは、とくに若い世代を中心に、たび重なる戦争によってどんどん領土を奪われ、「天井のない監獄」と呼ばれるガザ地区に密集して暮らすパレスチナ人に同情する声が多い。しかしそれを公的に言うと、ユダヤ系であるイスラエルの人々に対する差別だと批判されたり、過激派であるハマス(※ガザ地区を実行支配する組織)への支持だと批判されたりする。
2014年に、4週間の間で多くの民間人を含むパレスチナ人約1800人の死亡と9,000人以上の負傷が伝えられたあとに、ペネロペ・クルスとハビエル・バルデム夫妻らスペインの著名人がイスラエル政府を批判するオープンレターに署名したときには、反ユダヤ主義だと強く批判され、夫妻は「あくまでも平和を願うもの」だと釈明する声明を発表した。
また、過去には多くのセレブリティが「Free Palestine(パレスチナに自由を)」とSNSで訴えては批判の強さを受けて投稿を削除している。あのリアーナでさえ、2014年に「Free Palestine」とツイッター(現X)に投稿したが、わずか8分ほどで投稿を削除した。
2023年のGallopの発表によるとアメリカ世論の過半数は親イスラエル派だが、若い世代の間ではパレスチナへの支持が高まっており、2023年の時点で42%が親パレスチナ・40%が親イスラエルという結果だった。そのため、若い世代が多いインスタグラムやX(旧ツイッター)でイスラエルへの支持を表明すると、“イスラエルによるパレスチナ人の迫害を支持している”という批判にさらされる。
今回も、実業家でありリアリティスターのカイリー・ジェンナーが親イスラエル派の投稿をインスタグラムのストーリーズに投稿したあと、批判を受けて削除。イスラエルを支持するインスタグラム投稿を行なっているオスカー俳優のジェイミー・リー・カーティスは関連投稿のコメント欄を停止し、テレビ映画『ハイスクール・ミュージカル』のアシュレイ・ティスデイルはイスラエルの人々への支持を表明した後、批判を受けて、「イスラエルを支持することが反パレスチナになるわけではありませんし、パレスチナを支持することが反ユダヤになるわけでもありません」と投稿した。
シンガーのマドンナ、コメディアンのエイミー・シューマーやサラ・シルヴァーマンはそれぞれイスラエルで被害を受けた民間人への支持や暴力反対を表明しているが、コメント欄には、「パレスチナで無実の人々が殺されていたときにはなぜ声を挙げなかった」などと、ダブルスタンダード(二重規範)を批判する書き込みが多い。
イスラエル出身の俳優であるナタリー・ポートマンは「イスラエルの人々を思い、心が打ち砕かれています。子どもや女性、高齢者が殺害され、自宅から拉致されました。このような野蛮な行為に恐怖を感じ、被害に遭われた方々のご家族への愛と祈りで胸が張り裂けそうです」と、ガル・ガドットは「私はイスラエルを支持します。そしてあなたもそうするべきです。このような恐ろしいテロ行為が起こっているときに、世界は傍観することはできません。」とコメント。ナタリーは投稿のコメントは非表示にしており、ガルのコメント欄には親パレスチナ派からのコメントが目立つ。
以前からパレスチナに同情的なコメントを続けているマーベル俳優のマーク・ラファロは、「イスラエルとガザで繰り広げられている悲劇的な出来事について、私は言いようのない苦しみと、命と愛する人の喪失に心を痛めています。この恐ろしい暴力は終わらせなければなりません。私には明らかに答えはありませんが、私たちが共有する、人間として存在することと現実に焦点を当てることが絶対的に必要だと感じています。私たちに共通する人間性の神聖さが、想像を絶する分断の傷を癒す役割を果たすことを願っています」と投稿。
一方、シンガーのザラ・ラーソンは「ロシアがウクライナに侵攻したときには(ウクライナを)支援したのに、パレスチナの時は...」と、今回の問題は静観するハリウッドを批判する投稿を行なった。
イスラエル軍は過去50年で最大規模の30万人の予備役を動員したと発表し、ハマス側も予告なしに民家が爆撃された場合は人質を殺すと宣言しており、暴力の応酬は続くと見られている。
※パレスチナ・イスラエル問題に対する米世論データ(Gallop調べ)を追加しました。