2016年から別居していることを認めたウィル・スミスとジェイダ・ピンケット。しかしふたりに離婚の意思はなく、現在も密なコミュニケーションを続けているという。国内外の一部メディアでは、“仮面夫婦”や“不倫による裏切り”などスキャンダラスな内容が多く報じられているが、ふたりの言葉にしっかり耳を傾ければ、その真逆であることが分かる。

ビンタ事件の前、2016年から別居している

画像: ビンタ事件の前、2016年から別居している

 2023年10月、ジェイダ・ピンケット・スミスウィル・スミスが2016年から別居していることを認めた。

 ウィルとジェイダが「それぞれの幸せを探求することにした」ことは、ウィルが2021年に自伝『Will』のPR活動中に明かしていたため知られていたが、今回、ジェイダが自伝『Worthy』のなかで、「法的な離婚以外はすべて離別」しており別々の生活を送っていると具体的に認めた。

『ウィル列車』で距離が広がり続けた夫妻

 ジェイダは2016年に離別を決めた理由は「たくさんある」と2023年に『Today』で語ったが、ウィルは自伝のなかで、自身の夫としての落ち度についていくつか触れている。

画像: ウィルの前妻との息子トリッシュ(右)、ウィルとジェイダの子どもジェイデン(右から2番目)とウィロウ(中央左)

ウィルの前妻との息子トリッシュ(右)、ウィルとジェイダの子どもジェイデン(右から2番目)とウィロウ(中央左)

 ひとつ目は、ウィルが“理想の家族像”を家族に押しつけてしまったこと。ウィルはこれを、みんなを乗せて走り続ける「ウィル列車」と称している。

 ジェイダが広すぎて嫌だと反対した256エーカーの大豪邸を購入するなど、ハリウッドのトップスターである自分の家族にふさわしいライフスタイルを構築していたったウィル。しかしウィルの決断の多くは、彼の理想であって家族の理想ではなかった。子どものウィロウにまで、「可哀そうでたまらない。ダディは自分の中の理想の家族像を描いているの。でもそれって、私たちじゃない!」と言われたそう。

 もうひとつが、恋愛で「やりすぎる」こと。パートナーが求めているいないに関係なく相手を喜ばせようとしてしまい、さらに、そんな自分の行動にパートナーが拍手喝采を浴びせなければ落胆してしまっていたそうで、ウィルも「これは健全な関係を築くための方法ではありません」と自伝で認めた。

 一方のジェイダは、自身の落ち度のひとつとして、自分の不満や自分が求めるものを「彼はもうわかっているはずだ」と勝手に思い込み、互いの違いを掘り下げる会話を避けていたことを自伝の中で挙げた。夫婦としての関係をより良くするよりも敬意を優先したコミュニケーションを取ってしまっていたとした。

ジェイダの40歳の誕生日に起きた大事件

 そんなふたりの関係に転機が訪れたのが、ジェイダの40歳の誕生日。

 ジェイダの40歳の誕生日に向けて、3年前からチームを雇ってジェイダのファミリーのルーツを探求するドキュメンタリーを制作したウィル。誕生日当日、週末をかけた盛大なお祝いの目玉としてこの作品を上映し、来場者たちは涙を流していたという。

 そんななか、静かに楽しんでいる様子だったジェイダ。ただ夜にふたりきりになると、翌日以降のお祝いはすべてキャンセルするよう要求してきたという。困惑して、怒りさえ覚えるウィル。口論の末、ジェイダが明かした本音は、ドキュメンタリー作品は「ウィルのみっともないエゴのひけらかし」だったということ。

 ジェイダは、ドキュメンタリーを制作したウィルの頭には、“妻を祝福する最高な夫である俺像”があったことを見透かしたのだ。その夜は怒鳴り合いのケンカになったそうだが、ウィルはのちにジェイダのトーク番組『Red Table Talk』で、「今でもこの件について考えると打ちのめされる。なぜなら、それは本当だったから。あれは彼女のためのパーティーじゃなかった」と認めた。

 この件をきっかけに、結婚が暗礁に乗り上げていることを受け入れたウィル。「私たちの結婚はうまくいっていませんでした。うまくいっているフリさえすることができなくなっていた。双方が惨めで、明らかに何かを変えなければなりませんでした」と自伝で綴った。

「自由のなかで愛する」ことを決め、他の人との交際にも合意

 そんなふたりは、「100%結ばれているが、100%自由である」という「自由のなかで相手を愛する(Love In Freedom)」という“夫婦関係”に行きついたという。

画像: 1997年12月31日の結婚式より。©Will Smith/Instagram

1997年12月31日の結婚式より。©Will Smith/Instagram

 その自由のなかで2016年に別居をはじめ、さらに、もともと一夫一婦制を結婚の絶対条件だと考えていなかったふたりは、他者とも関係を持つように。ジェイダは、ミュージシャンであるオーガスト・アルシーナと交際。また、ウィルもほかの人との交際経験をGQで認めた。

 ただ、ジェイダはこの関係を「好きな相手と好きに寝ていいよ」という関係だとは勘違いされたくないと自伝で綴る。ふたりが目指したのは“透明性のある関係”であり、「相手がこのパートナーシップのなかで完全に正直であると信頼し合い、きちんと話し合い、パートナーとしてひとつひとつ一緒に進んでいこう」という関係であるとジェイダは書いた。

 世間で“不倫による裏切り”とされていることは、実際には、ふたりがパートナーシップをより高みへと持っていくために行なっていたことだったのだ。

 また、ウィルは『Red Table Talk』に出演した際に、ジェイダとオーガストの関係についても語り合った。番組配信後、世間では「夫をバカにしている」「ウィルがかわいそう」といった声が多かったが、当然、番組で話した内容はずいぶん前にふたりで深く話し合って合意したこと。ウィルは世間での反応について、GQで「違う違う、僕は悲しくない」と訂正している。

絶対に離婚しない、その理由は?

 ウィルとジェイダは、絶対に離婚はしないと明言している。ジェイダも自伝のPR中に、「あのおふざけ者と離婚できない」と笑っていた。では、それはなぜか? ふたりの言葉からは、理由は大きく2つあるように見受けられる。

 ひとつめは、離婚はふたりにとって解決策ではないこと。ジェイダはウィルと結婚したときに、「私たちには離婚する理由がない。なぜなら、私たちはどんなことでも話し合って一緒に生き抜いていくから」とウィルに誓ったことを、2023年に『Today』で明かした。またウィルも、2008年に『エレンの部屋』で「離婚は選択肢にない」と語り、「ジェイダと私の成功の秘訣の大部分は、その選択肢を取り除いたことにあるのです」と明かした。一般的な結婚生活を求めていないふたりにとって、夫婦の不和の一般的な解決方法である離婚は解決方法にあたらないのだ。

 そしてふたつめは、双方が“これ以上の相手はいない”と思っていること。

 ウィルは2021年にオプラ・ウィンフリーのトーク番組『The Oprah Conversation』にて、ジェイダとの関係についてこう語った。「僕らは今でも、ひと言でも交わすと4時間の深い会話になる。この関係こそ、我々が続いてきた理由の中心です。あそこまで至福で生産的な会話ができる相手はジェイダ以外に誰一人としていないのです」。

 またジェイダも、2023年に『Today』のなかで、「もう一度、素晴らしい愛を見つけることはできない」と認めた。そして自伝のなかで、2022年に起きたオスカービンタ事件に触れたくだりでは、「別れてから6年目にして初めてわかったのは、何があろうとも、私は彼の妻として彼と共に嵐に立ち向かうということだった」と書いている。

 そして今、ふたりはカップルとしての回復期のなかにいるという。「私たちは今、深い癒しの空間にいるのです。私たちの関係を癒すことに本当に集中しています」と『Today』で明かしたジェイダは、今後一緒に暮らす可能性を問われると、それもあり得ると答えた。

ウィルの自伝『Will』とジェイダの自伝『Worthy』への反応の違い

 今回の件で気になるのは、ウィルとジェイダに対する世間やメディアの反応の違い。

 ジェイダの“不倫”は“裏切り”として大きく取りざたされているが、ウィルの“不倫”を問う声は少ない。女性の“不倫”の方が罪は大きいのだろうか?

 また、今回ジェイダは自伝の宣伝のために多数のメディアに出演して正直なコメントを続けているが、アメリカでは「出たがり」や「やりすぎ」と批判する声が強い。ただ、セレブが自伝を発売するときは『Today』などの番組で宣伝ツアーするのは一般的で、珍しい行為ではない。ウィルが自伝を発売したときはここまで多くのインタビューはしなかったが、ウィルはスターとしての格が他のセレブとは違う。宣伝しなくても売れるから通常の宣伝ツアーを行わないのだ。

 さらに、ジェイダは話す内容がプライベートすぎるという声もある。しかし、ウィルは自伝を発売した時に『The Oprah Conversation』でプライベートな話にも踏み込んでコメントしていた。また、自伝のなかでは、夫婦関係のトラブルや、タントラ・セックスの専門家に会いにいった経験、過去の交際で「乱暴な性行為」に走った経験、幻覚剤であるアヤワスカを摂取したことなど、プライベートな事柄について赤裸々に綴っている。

 このダブルスタンダードの理由は、男女差なのか? それともセレブとしてのイメージの違いか? どちらにしろ、ジェイダばかりを悪者にした論調には違和感を覚える。

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