50年以上前、同じテレビ番組に出演した男性セレブが性差別的な発言を聞いた時、フェミニストのリリー・トムリンは何をしたか?(フロントロウ編集部)

妻を「所有」して「飼っている」と言ったチャド・エヴェレットに...

 EGOT(エミー賞・グラミー賞・アカデミー賞・トニー賞)のうちアカデミー賞以外を受賞し、アカデミー賞もノミネート経験がある大御所俳優、リリー・トムリン。今年干支がちょうど7周し84歳を迎えた彼女がまだ30代だったころ、人気TV番組で見せたある”伝説的な対応”についてご存じだろうか。

 1972年、リリーは『The Dick Cavett Show』というTV番組に出演。そこで共演したのが、ドラマ『外科医ギャノン』への出演などで知られる俳優のチャド・エヴェレットだった。

画像: ドラマ『外科医ギャノン』のチャド・エヴェレット。©The Dick Cavett Show/YouTube

ドラマ『外科医ギャノン』のチャド・エヴェレット。©The Dick Cavett Show/YouTube

 生放送が進んでいく中、チャドは「私は馬を3頭と犬を3匹、そして妻を飼っている」と発言。うまいジョークを言ったような表情のチャドはさらに、「妻は私が所有する動物の中で最も美しい」と言い放った。すると隣に座っていたリリーは、即座に「あなたが“所有する!?」と反応。そして「もうここにはいられない」と言うと、椅子から立ち上がり、司会者の前を横切りスタジオから出て行ってしまった。

画像: チャド・エヴェレットが性差別ジョークを放った直後、すくっと立ち上がるリリー・トムリン。©The Dick Cavett Show/YouTube

チャド・エヴェレットが性差別ジョークを放った直後、すくっと立ち上がるリリー・トムリン。©The Dick Cavett Show/YouTube

画像: 司会者のディック・キャヴェットが驚くなか、リリー・トムリンは振り返ることなくスタジオを後に。©The Dick Cavett Show/YouTube

司会者のディック・キャヴェットが驚くなか、リリー・トムリンは振り返ることなくスタジオを後に。©The Dick Cavett Show/YouTube

 退出するリリーの背後で笑いと拍手が起こったが、リリーにとってこれはパフォーマンスではない。リリーがスタジオに戻ってくることはなかった。

 日本のテレビでは今でもよくあるが、アメリカではこの時代、テレビ番組で差別や偏見を含んだ発言が飛ぶことは日常茶飯事だった。そしてそういった時、笑いが起こるか、笑ってごまかされていた。しかしリリーにとって、差別は1ミリも許容できることではないため、“あの役者は使いずらい”とその後番組に呼ばれないことなど恐れずに、それを行動で示したのだ。

画像: チャド・エヴェレットはその後も威勢の良い発言をしていたが、動揺している様子だった。©The Dick Cavett Show/YouTube

チャド・エヴェレットはその後も威勢の良い発言をしていたが、動揺している様子だった。©The Dick Cavett Show/YouTube

 チャドはリリーの行動に不満を抱いた様子で、「私の妻は男性に面倒を見てもらえることに幸せを感じてる。女性に世話されたいとは思っていない。まあ、リリーはそういう女性がタイプなんだろうが」と、レズビアンであるリリーを揶揄するような発言。

 さらに、「まったく、今のは嫌な行動だったな。彼女の代わりに私が謝りますよ」「彼女はふざけてたんでしょう? 本気じゃないですよね」「彼女はかわいいやつだからな」などと、リリーを小バカにするような発言を繰り返し、動揺していることは明らかだった。

 『The Dick Cavett Show』はこの放送回を2020年に番組の公式YouTubeチャンネルにアップ。

 動画は現時点で290万回以上再生されており、「リリーは品位を保ち、一流の女性であることを示した」「この種のことが一般的で受け入れられ、最悪とは思われていなかった時代に、抗議のために退場する度胸を持つ女性を見られるのは素晴らしい」「リリーが冷静に立ち去ってくれてよかった。女性はあんなたわごとを聞く必要はない。チャドは自分を恥じるべき」「1972年のスタジオの観客ですら面白いと思わなかったジョークはダメだとわかる」など、1.7万件以上のコメントが寄せられている。

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