賛否両論ある映画『ジョーカー』
DCコミックスの有名悪役ジョーカーの誕生を描いた映画『ジョーカー』が10月4日に日米で同時公開された。
公開前から高く評価される一方で、2008年に公開され、ジョーカー役の故ヒース・レジャーがアカデミー賞を受賞した映画『ダークナイト』の上映中に起きた銃乱射事件のような悲劇がふたたび起きるのではないかと不安に駆られる人も多い。
そんななか、公開日当日に米ニューヨークの映画館で『ジョーカー』を見ていた観客の3分の1が、劇場から逃げ出す出来事があった。
当時劇場にいたというネイトという人物がツイッターに投稿したところによると、ある1人の男性が、アーサー・フレック/ジョーカーや、ジョーカーの仲間たちが人を殺すたびに拍手をして歓声を上げたという。
男性の歓声はかなり大きくなっていったそうで、同じ劇場内にいた他の観客たちが注意したところ、男性はケンカ腰に。そして観客の3分の1が男性への恐怖で劇場から出て行ったところで、やっと警備員が到着し、男性を退席させたという。
ネイトは、映画が終わり外に出て行った時には男性はまだ取り調べを受けており、映画館付近には多くの警察がいたと米Business Insiderに明かした。
また、男性が初めに座っていた席の隣に座っていたという観客によると、男性はボトルいっぱいのテキーラを手に持っていたそう。彼は、「とくに害のない酔っ払った男性だったのでしょうけど、映画によって緊張感があった劇場内で起こったことで本当に不安が募りました」と語った。
『ジョーカー』の公開後には、インターネット上ですでに劇場に足を運んだ観客たちから「(ストーリーが)暗すぎて途中で席を立った」というコメントも多く投稿されているほど。
また、先述の銃乱射事件が起こった映画館では上映が見送られ、テネシー州のある映画館では、ジョーカーのコスプレやマスクをしての来場が禁止された。
しかし今作は、ジョーカーを主役においたことによって現代社会の闇を克明に描きだし、ベネチア国際映画祭では最高賞である金獅子賞を受賞。ジョーカーにフォーカスしたからこそ可能になったある1つの視点からの物語に、今年度アカデミー賞は確実との声も上がっている。
『ジョーカー』が犯罪を助長するのではないかとの質問に監督のトッド・フィリップスは「この映画は、愛の欠如や子供の頃のトラウマ、そして思いやりのない世界について描いています。観客はそのメッセージを正しく受け取れると思います」と語り、主演のホアキン・フェニックスは、犯罪者は「どこからでもキッカケを見つけられると思う」として、映画制作者たちに責任があるとは思わないという意見を述べた。(フロントロウ編集部)