映画『ジョーカー』は暴力を助長するか
10月4日に公開される映画『ジョーカー』は、2019年のベネチア国際映画祭でグランプリを受賞。
主演のホアキン・フェニックスには、これまでの功績を称えてトロント国際映画祭でTributeActor Awardが贈られ、『ジョーカー』公開に向けてファンの熱気は高まっている。
しかし一方で、“悪者”であるジョーカーの影響力を懸念する声も多い。とくに今作は、正体不明の悪役ジョーカーではなく、ゴッサムシティに住む1人の男性アーサーがジョーカーになっていく悲しき過程を描いて評価されている。
そこで、ジョーカー(アーサー)に共感してしまう人が増えてしまうのではという不安から、2012年にアメリカで発生した『ダークナイト ライジング』プレミア上映中に起こったオーロラ銃乱射事件の被害者家族は、今作『ジョーカー』の公開にあたって配給元のワーナー・ブラザースへの手紙を公開した。事件当初、犯人は自身を“ジョーカー”と呼んだという報道がされていた。
そんななか数日前には、ジョーカーを演じたホアキンに記者から、「この映画が、意図せずとも実在するアーサーのような人々をインスパイアしてしまい、最悪の事態を引き起こすことが心配にはなりませんか?」という質問が投げかけられた。
その際にホアキンはパニックになってしまい、部屋を出て行ったという。
しかしホアキンが、ついに『ジョーカー』に関する一連の疑問について口を開いた。米IGNのインタビューでホアキンは、事件を起こしてしまう“加害者”に関して意見を述べた。
「多くの人は、正しいことと間違ったことの違いが分かる。そしてそれが出来ない人は、どのようなものからでも自分たちの受け取りたいように解釈するだろう。音楽の歌詞を誤解したり、本の文章を誤解したり。だから私は、映画制作者たちにモラルや、正しいことや間違っていることの違いを観客に“教える”責任があるとは思わない。それは明白なことだと思う。
もし誰かが精神のバランスを崩していたら、彼らはどこからでもキッカケを見つけられると思う。そう考えるべきじゃない。ただ言えることは、なにが人のキッカケになるかは分からないということ」
この問題はすべての人が心配していることであり、議論しなくてはいけないことだとしながらも、俳優として言えることはそれだけだと語ったホアキン。
また、インタビューに同席していた監督のトッド・フィリップスは、今作が抱えるメッセージについてこう語った。
「この映画は、愛の欠如や子供の頃のトラウマ、そして思いやりのない世界について描いています。観客はそのメッセージを正しく受け取れると思います」
銃乱射事件の被害者遺族から手紙を送られたワーナー・ブラザースは、「このキャラクターをヒーローとして維持することは、映画、映画製作者、またはスタジオの意図ではありません」とのコメントを発表。2012年の事件の現場となった劇場は、映画『ジョーカー』の公開を見送ると発表している。(フロントロウ編集部)