歴代ジョーカー史の頂点に立つ『ジョーカー』誕生
「ホアキン・フェニックス抜きでこの映画はありえませんでした」と語るのは、監督のトッド・フィリップス氏。
『バットマン』でおなじみの宿敵、ジョーカーの誕生を描いた作品『ジョーカー』で第76回ベネチア国際映画祭の最高賞「金獅子賞」を受賞した。
これまで数多くのアメコミ映画が製作されてきた中で、国際的な賞の受賞は史上初。祭典での上映後は、今年一番の拍手喝采と「ブラボー!」の声が8分間もやまなかった。
批評家や観客からは絶賛の声が続出。ベネチア国際映画祭ディレクターのアルバート・バルベーラは「今年最も驚くべき映画。アカデミー賞は確実だ」とコメントしている。
授賞式でフィリップス監督は、「金獅子賞」のモチーフになっているライオンを引き合いに出し、敬意とユーモアたっぷりにホアキンを絶賛。
「ホアキンは、僕が知っている中でもっと強暴で、最も勇敢で、最も心の広いライオンです。そして、美しい心の持ち主です。『狂気の才能』とともに私のことを信頼してくれてありがとう」
それに対しホアキンは、イタリア語で「Grazie. Grazie mille(ありがとう。本当にありがとう)」と返した。
審査員の1人であるカナダの映画監督メアリー・ハロンは「ホアキンのすばらしい演技に感銘を受けました。映画祭のルールがなければ、彼は男優賞に輝いたでしょう」とコメント。ベネチア国際映画祭には、「上位の賞はダブル受賞できない」というルールがあるため、金獅子賞に輝いたホアキンが男優賞を受賞することはなかった。しかし、その他の授賞式での男優賞受賞への期待が高まっている。
監督トッドと俳優ホアキンが『ジョーカー』にかける誇り
本作品は、フィリップス監督がホアキンをイメージして脚本を描くところから始まった。ジョーカーは今までに何人もの名優を生み出してきたキャラクターでもあるため、そのプレッシャーは計り知れないものだったはず。
撮影の6ヶ月前から2人で話し合いを重ね、撮影が開始されても最終日までジョーカーについての発見を重ねていったという試行錯誤の結果、世界に興奮と感動を与えることになった。
フィリップス監督はまた、「映画が完成したときはさまざまな感情があり、この映画で伝えたいことを観客は理解してくれるのかという不安もあった。ホアキンと僕はこの映画を誇りに思っています。私たちはこの映画で誠心誠意努力しました。驚くかもしれませんが、この映画を製作することに対して多くの反対に直面しました。本当に誇りに思います」と、完成までの困難な道のりを振り返った。
フィリップス監督は自身のインスタグラムにも喜びのコメントを掲載。
「夢のような映画祭を夢のような街で、夢のような夜に。ありがとう、ベニス!」
ベネチア国際映画祭とは?
ベネチア国際映画祭は、イタリアのベネチアで毎年8月末から9月初旬にかけて開催される映画の祭典。有名な「カンヌ国際映画祭」と「ベルリン国際映画祭」とあわせて、三大映画祭と呼ばれている。最高の賞は金獅子賞で、金色のライオンが乗っているトロフィーがプレゼントされる。2番目の賞は銀獅子賞。受賞作品の特徴は、芸術性やアート性が高いということである。
これまでに、『Roma/ローマ』(2018年、アルフォンソ・キュアロン監督)、『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017年、ギレルモ・デル・トロ監督)、『Somewhere』(2010年、ソフィア・コッポラ監督)が受賞している。
先日、カンヌ国際映画祭で女優賞を受賞した女優ルーニー・マーラとの婚約を発表したホアキン。主演作品のグランプリ受賞とともに流れに乗り、カンヌで夫婦そろっての受賞を果たせるのだろうか。また、これから待ち受けるその他の映画祭でも栄光を掴み取ることができるだろうか。(フロントロウ編集部)