先輩ナタリー・ポートマンの意思受け継ぐ発言
映画『ラ・ラ・ランド』で前年の主演女優賞を受賞したエマ。主要部門の1つである監督賞の今年のプレゼンターとしてステージに登場した彼女が、同賞の候補者発表の際に、1月のゴールデン・グローブ賞で女優のナタリー・ポートマンが放った究極のディス発言を彷彿とさせる軽快ジャブを繰り出し、会場に居た観客たちから拍手喝采を浴びる一幕があった。
エマは、アワードの決まり文句である「候補者はこちらの方々です」というフレーズに加えて、「These four men and Greta Gerwig created their own masterpieces this year.(こちらの4人の男性とグレタ・ガーヴィグは今年それぞれ素晴らしい傑作を生み出しました)」と発言。
同部門にノミネートした唯一の女性監督である映画『レディ・バード』のグレタ・ガーヴィグに脚光を浴びせながら、映画界に根強く残る男性至上主義体質をさりげなく、かつ痛烈に批判した。
世間では賛否両論
同アワードの過去90年の歴史の中で、監督賞に女性がノミネートされたのは今回のグレタを含むわずか5人だけ。この事実を無視してはならないと、ステージ上で堂々と注意喚起したエマの勇姿には、視聴者たちからも「よく言った!」、「素晴らしい」と絶賛する声が多数上がった。
しかし、その一方で「エマは大切なことを忘れている」との意見も。
それは、監督賞にノミネートされた男性たちのなかに、アフリカ系アメリカ人監督としては史上5人目の候補者となった映画『ゲット・アウト』のジョーダン・ピールも含まれていたから。
海外のSNSユーザーたちの間では、同作でアフリカ系アメリカ人としては史上初となる脚本賞を受賞したジョーダンに関しては、エマの発言の中で、グレタとともにスポットライトを当てられても良かったのではないかというコメントも相次いでいる。
さらに、映画『シェイプ・オブ・ウォーター』で監督賞と作品賞をダブル受賞し自身初となるオスカー像を手にしたギレルモ・デル・トロ監督に関しても、彼がこれまで同アワードの受賞者の大半を占めて来たアメリカ出身の白人男性監督ではなく、少数派であるメキシコ出身であることから、名前を伏せられるという仕打ちを受ける必要は無いはずだとの意見も。
長きに渡って黙殺されてきたハリウッドの核心に迫るエマの今回の発言は、もちろん評価されるべきものであり、彼女に名前を伏せられた男性監督たちが不快の念を示すということもない。
しかし、「ひとつの問題(女性の権利向上や性差別問題)に焦点を当てれば、どこかに影が生まれてしまう(人種問題など)」という問題提起することの難しさや複雑さが垣間見えた一件となった。