キャリア史上初の「政治的発言」
11月に行われるアメリカ中間選挙を前に、めずらしく「政治的発言」をして話題となったシンガーのテイラー・スウィフト。
10月8日に自身のインスタグラムを通じて発表した長文声明では、トランプ政権下で激化する差別や偏見の問題を憂い、LGBT+や男女の平等な権利を求めて闘う民主党の候補者をサポートする意思を表明した。
これまで、自身の原点であるカントリー音楽のファンには保守的(共和党)な支持者が多いことを考慮して、意図的に政治的思想についてはコメントを控え、時にはそのことが原因で批判の的ともなってきたテイラー。
トランプ大統領率いる共和党支持者のファンを失う覚悟で民主党候補への加勢を表明したテイラーだが、彼女の声明には、支持政党に関わらず「とにかく選挙に参加してほしい」と国民たち、とくに自身のファンである若い層の有権者たちに投票を呼び掛けるメッセージも含まれていた。
テイラーの「政治的発言」の威力
そんなテイラーが約12年間のキャリアにおいて初めて行った「政治的発言」の恐るべき影響力を証明するいくつかの数字が明らかになった。
アメリカ国内の選挙に関するガイドラインや、投票に際して必要となる有権者登録サービスなどをオンライン提供している非営利団体の「Vote.org(ボート・ドット・オーグ)」の広報担当者は、テイラーの政治的発言後、わずか24時間以内に6万5千件もの新規有権者登録があったことを米BuzzFeed Newsに証言。
この数字は、同サイトでの9月の月間新規登録者数が19万人余り、8月は5万6千人ほどだったことと比較すると、たった1日にして大きな飛躍であることは疑う余地もない。
テイラーが民主党候補者2人への支持を表明した故郷テネシー州の有権者登録数には、とくに大きな増加が見られた。Vote.orgは、同サイトの有権者登録サービスを利用して行われたテネシー州からの現在までの全登録者件数5,183件のうち2,144件が、テイラーの投稿から36時間以内に新規登録されたものだと明らかにした。
さらに、Vote.orgはテイラーの政治的発言はサイトへの訪問者数にも大きく表れていると説明。1日の平均訪問者数が1万5千件であるのに対し、テイラーの政治的発言後24時間の訪問者数は、その15倍以上にあたる15万6千人を記録した。広報担当者曰く、この数字は、9月25日に実施された「ナショナル・ボーター・レジストレイション・デイ(全米有権者登録デー)」に次ぐものだという。
これらの情報は断片的なものではあるが、テイラーの意思表示がアメリカ全土の有権者たちの中間選挙への関心を高め、投票への参加を大きく促したことは確か。
今回のテイラーの政治的発言に対して感想をたずねられたトランプ大統領は、「テイラー・スウィフトの曲を25%嫌いになったとでも言っておこう」と発言。さらに、一部の共和党支持者の間では、テイラーの「彼女のキャリアは終わった」と揶揄する声も出ているが、彼女の行動を高く評価する国民は多数。テイラーの投稿には180万件近い「いいね」が寄せられている。(フロントロウ編集部)