不当な判決されたミークの「犯罪歴」
ラッパーのミーク・ミルがアメリカの刑事裁判のシステムを変えるために大きな一歩を踏み出した。
2017年、過去に前科があったミークは保護観察期間中にオートバイでウィリー走行といった違法行為をして逮捕。人に危害を加えていない危険運転だったが、ミークは執行猶予違反の罪として最も重い罪にあたる2~4年の実刑判決が下された。
しかし、この判決には裁判官の個人的な恨み(※)があったという声もあり、ジェイ・Zやクリス・ブラウン、さらには、ペンシルベニア州知事であるトム・ウォルフも判決は不当だと反発しミークを擁護。そして2018年4月、約5ヵ月間の服役を経てミークは保釈された。
※ミークの弁護士の証言によると、ミークの事件を担当していた裁判官は、ミークに親戚の音楽レーベルに移籍するよう要求するほか、ボーイズⅡメンの楽曲「On Bended Knee」のリメイクを勧めるといった私的なリクエストをくり返していた。ミークがそれを断ったことで判決に反映したと言われている。
不当な判決を受けたミークは保釈後すぐに、ずさんな刑事裁判システムや警察官によるマイノリティへの暴行を指す「ポリス・ブルータリティ(Police Brutality)」(※)を訴えるシングル「ステイ・ウォーク(StayWoke)」をリリース。
※ミークは当時18歳でけん銃の違法所持で逮捕された時に警察から暴行を受けたと訴えている。
ツイッターでは、「時給80セント?そんなの奴隷だ」と憤慨しながら刑務所の受刑者への待遇の悪さを訴え、当事者でもあったミークは不当な判決を受けた受刑者の状況を少しでも良くする責任があると熱弁した。
ミークが「最強チーム」で弱者を助ける
釈放されてからは継続して刑事裁判のシステムを改善しようと努力するミーク。
そんなミークが、今回、逮捕された時から親交のあるメジャーリーグのフィラデルフィア・セブンティシクサーズの共同オーナーである実業家のマイケル・ルビンや、NFLニューイングランド・ペイトリオッツのオーナーで億万長者のロバート・クラフト、ミークを擁護し続けるジェイ・Zらと同盟を組み、さらにはスポーツブランドのプーマ(Puma)の協力のもと、「REFORM」という団体を設立。
「REFORM」は、ミークが経験したような仮釈放や執行猶予、保護観察期間の違法行為で不当な判決を受けた受刑者を減少させるための組織。
5,000万ドル(約55億円)を資金に、「システムに騙された」受刑者たちを救済するため、刑事裁判のシステムを改革し、まずは今後5年間で全米にいる100万人の受刑者を釈放できることを目標に改革を進めていくという。
資金面において十分な支援があり、様々な業界とのコネクションがある人物を集めて設立した「REFORM」には、ミークやジェイ・Zのほか、世界的に有名な投資家のマイケル・ノボグラッツやダニエル・ローブ、活動家のクララ・ウー・ツァイらも携わっており、米CNNのコメンテーターで活動家のヴァン・ジョーンズは「REFORM」のCEOとして指揮をとる。
ヴァンは、団体の設立発表会見で、「最初はバディ映画から始まった。そして今、(強力なサポーターが増えて)『アベンジャーズ』になった」と、「REFORM」が“最強チーム”に成長したことをヒーロー映画に例えて表現した。(フロントロウ編集部)