※この記事には映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』のネタバレが含まれます。映画をご覧になってからお読みください。
全世界の興行収入26億1,690万ドル(約2,879億円)を突破し、これまで歴代1位に君臨してきた『アバター』の27億8,800万ドル(約3,070億円)という記録を追い越すのも時間の問題と言われているメガヒットを記録しているマーベル映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』。
サノスの“指パッチン”により全宇宙の生命の半分が消滅した地球でヒーローたちが集結し、サノスに絶望的な戦いを挑むという壮大なストーリーが描かれた同作では、大切な人を失ったヒーローたちの悲しみや苦悩がさまざまな形で表現された。
そのなかでもマーベルファンたちを最も驚かせたのが、家族や故郷アスガルドを失った『マイティ―・ソー』のソーがすっかり意気消沈し、ドカ食いや酒に溺れ、以前とは見る影もないほど激太りしているという設定。
海外では「Fat Thor(ファット・ソー)」と呼ばれて物議を醸している激変したソーの姿について、同役を演じた俳優のクリス・ヘムズワースが、じつは、あの姿の裏には並々ならぬスタッフたちの労力と時間そして工夫が潜んでいたと明かした。
これまでのシリーズでは、ソーといえば、完璧に鍛え上げられたクリスの“地ボディ”を活かした、まるで彫刻のようなムキムキボディが印象的だった。
しかし、シリーズ最終章である『アベンジャーズ/エンドゲーム』では、ソーは、1カ月のうちに1度だけ、ビールを取りにくるためにしか部屋から出てこないという自堕落な生活を5年間続けていたという設定のため、たっぷりとしたビール腹をたくわえ、身のこなしも重いずっしりとした体形に。
このソーの姿は、ご存知の人も多いかもしれないが、クリスが実際に増量したわけではなく、ファット・スーツと呼ばれる体をふくよかに見せる特殊なスーツを使って実現されたもの。
クリスは、この「ファット・ソー」を創り上げるのにかかった時間やシリコン製の特殊なファット・スーツの重さについて米Varietyにこう明かした。
「まず、ヘアメイクだけで3時間はかかったね。それからシャツを脱いだ姿のシーンでは、シリコン製の人工装具を着けていたんだ。重さはだいたい90ポンド(約40キロ)くらいだった。あれはかなり大変だったよ」
さらに、太った人特有のスローな動きをリアルに再現するため、クリスの両手足には重りがつけられていたという驚きの事実も。
「両手と両足首に重りを着けてたんだ。セットの中を動きまわるときに手足が普段とは違う動きをするようにね」
ソーが“家族や故郷を失った深い悲しみで鬱状態になり、激太りしてしまった”という描写については、一部で、「太っている人をバカにしている」、「ファット・シェイミング(肥満批判/体形批判)を助長する」といった否定的な意見も上がった。
しかし、『アベンジャーズ/エンドゲーム』の脚本家であるクリストファー・マルクスとスティーヴン・マクフィーリーは、そろって米Vultureに「『ソーがひどいアルコール依存症のようになったら? 』と考えたんです。そして体重の増加はその精神状態の一部の現れ。ただ単に『面白そうだから太らせてみよう』などという安易な考えでそうしたわけではありません」とコメント。人々が悲しみに立ち向かう方法は千差万別だということを描きたかったとしている。
ちなみにクリス演じるソーは、『アベンジャーズ/エンドゲーム』の最後のシーンまで太った体形のまま。あえて、簡単には元の体形に戻さないというところもリアルを追求した結果なのかもしれない。(フロントロウ編集部)