スウェーデンで拘留中の人気ラッパーの開放を求める
アメリカ人ラッパーのエイサップ・ロッキー(ASAP Rocky)が、音楽フェスティバルに出演するために訪れたスウェーデン・ストックホルムの路上で、執拗につきまとってきた男性に対して取り巻きたちとともに暴行をはたらいた罪で逮捕されてから、早2週間以上が経過した。
エイサップの行動の正当性を信じ、現在も劣悪な環境で身柄を拘束されているという彼の釈放を求めて数多くのセレブたちが「#JUSTICEFORROCKY(#ロッキーに正義を)」というハッシュタグとともに声明を発表。
オンライン署名サイトChange.orgでは、エイサップの釈放を求める署名ページも立ち上げられ、現在までに60万件を超える署名が集まるなど、多くの米国民がエイサップの早期解放を望んでいる。
彼と親交が深いアーティストたちがスウェーデンでの音楽イベントへの出演をキャンセルしたり、スウェーデンへの渡航を“永久ボイコット”したりと強固な姿勢を見せるなか、リアリティスターのキム・カーダシアンが、エイサップと親交のある夫でラッパーのカニエ・ウェストの要請で、米ホワイトハウスに今回の一件への介入を促す動きを見せたと米TMZほかが伝えている。
【エイサップ・ロッキーの暴行事件】
音楽イベントへの参加の合間にスタッフやボディーガードらとストックホルム市内を観光していたエイサップは、2人組の男性「ヘッドフォンを壊された」として執拗につきまとわれた。被害者とされる男性はエイサップ本人やボディガードによる再三の警告を無視して、威嚇するような態度を取り続けたのだが、通りかかった女性が、その男性とその同伴者からお尻を叩かれるというセクハラまがいの行為を受けたことをエイサップらに告げるとエイサップの態度は一変。激怒したエイサップは男性を投げ飛ばし、ボディーガードらも加勢して、男性たちに殴る蹴るの暴行をくわえた。
この暴行の一部始終が米TMZによってネットに流出。それを受け、7月3日に事情聴取のため現地警察に出向いたエイサップはその場で逮捕された。
エイサップは、自らの行動の正当性を主張するため、インスタグラムで自身の視点から撮影した騒動の模様を収めた動画を公開。その動画にはエイサップが、つきまとってきた男性たちを「薬物中毒者」と呼び、「問題を起こしたくない。ずっとついてくるんだ」などと語る様子も収められている。
逮捕以来、留置所で身柄を拘留されているエイサップだが、その施設の環境は最悪で、エイサップのマネージャーは「人間がいるような場所ではない」、「食事を含めた衛生面に問題あり」などとSNSで証言。さらに、エイサップは、条例で認められているにもかかわらず、米国領事館の担当者と面会できない状態にあるとも伝えられている。
コネを使ってトランプ大統領に働きかけ
2018年に不当な量刑を言い渡されて服役していた元服役囚の女性2人の恩赦(おんしゃ)を求めて、個人的にドナルド・トランプ米大統領に働きかけ、釈放にこぎつけることに成功したキム。
その時のやり取りを通じて、トランプ大統領の長女イヴァンカ・トランプとその夫で大統領上級顧問のジャレッド・クシュナーと親しくなったキムは、エイサップの逮捕騒動の一部始終をクシュナー氏に報告。
クシュナー氏が、すでに事件について少し問題視していたトランプ大統領にキムから得た情報を伝えたところ、トランプ大統領は「エイサップはスウェーデン警察に不当に拘留されている。何とか手助けしたい」と介入の意志を表したと関係者がTMZに証言している。
その後、ホワイト・ハウスのほかの要人たちの手助けもあり、エイサップのマネージャーとクシュナー氏が電話会談が実現。
エイサップの釈放に関しては、すでにマイク・ポンぺオ国務長官がトランプ大統領の指示により、スウェーデン警察側から何らかのアクションを得るために複数の代理人たちを現地に派遣したと報じられているが、これはキムの働きかけが功を奏したものとみられている。
米国務省の広報官はエイサップの件について「我々はスウェーデンを含むすべての国の政府がアメリカ国民を公正に敬意を持って扱うことを望んでいます。エイサップ・ロッキーと彼の同僚たちがただちにツアーに戻り、友人や家族たちと再会できることを願っています」とコメントしているが、現時点では、スウェーデン警察側の反応は無い。
もしエイサップが有罪になった場合、米Vultureによると最大懲役6年の判決が言い渡される可能性もあるという。判決が下される裁判は8月中旬に行なわれる予定だと米Complexが伝えているが、TMZはそれまでの処分の決定に遅れが出る可能性もあるという証言も報じている。
更新:スウェーデン警察は米現地時間の7月19日、エイサップの拘留期間をもう1週間延長すると発表した。
(フロントロウ編集部)