女性にだけ許されない上半身裸
“女性の胸の自由”について、ある女性たちが最高裁で争おうとしている。
ことの発端は、海辺で1人の女性がトップレスでヨガをしていたところ、公共の場所で女性が胸を見せるのは条例違反だと逮捕されたこと。男性はトップレスになっても問題ないのに、女性だと逮捕されるという状況に怒った別の女性2人が、同じ海辺でトップレスになって、逮捕は性差別だとプロテストを行なったところ、こちらの2人も逮捕されてしまった。
3人はその後ニューハンプシャー州の裁判所で裁判を起こして敗訴したのだけれど、この3人が現在、アメリカ連邦最高裁判所に控訴する準備を進めていると発表し、アメリカの裁判所のトップで公共の場所での“女性の胸の自由”が議論されることが明らかになった。
広がる「フリー・ザ・ニップル」ムーブメント
今回のように、女性だけが胸を隠さなければいけないことにNOを突きつけるムーブメントは、欧米で「フリー・ザ・ニップル(乳首を解放しよう)」という名前で広がりを見せている。
モデルのジジ・ハディッド、テレビ映画『ディセンダント』のダヴ・キャメロンや、モデルのエミリー・ラタコウスキーなど多くのセレブがSNSでノーブラ姿を披露したり、ノーブラで外に出かけたりして、フリー・ザ・ニップル運動に参加している。
またアメリカに住む女子高生は、ノーブラで学校に出席したところ、教師から乳首に絆創膏を貼れと言われてしまい、それに反発した高校生によってボイコットならぬ“ブラコット”が行なわれたことも。
乳首を出したいのではなく、平等にしてほしい
では、女性の人権運動においてなぜ“乳首”が表立っているのか?
それは、乳首は女性にも男性にもあるものなのに女性と男性で扱いが違うから。
それが教育から職場まで社会のあらゆる場面で起こる男女差をわかりやすく象徴しているとして、フリー・ザ・ニップル(乳首の自由)=性差からの自由、という意味で活動が行なわれている。
さらに、女性が胸を隠さなくてはいけないのは「女性の胸は性的なもの」という考えがあるから。フリー・ザ・ニップルの背景には、そのように女性が一方的に「性的対象物」と扱われてきたことに対する抗議もある。
ちなみにフリー・ザ・ニップル運動は、じつは1960年代に起きた女性のための人権運動であるウーマン・リブからの流れを汲むもの。世界中の女性が一致団結し、歴史的ムーブメントとなったこの活動では、各地で、女性を抑圧するものの象徴としてブラジャーを燃やすというパフォーマンスが起きた。
女性たちが男性と同じ自由と権利を、と願うようになってすでに半世紀。50年にわたる闘いはアップデートされながら続いており、ついに最高裁で議論されるかもしれない。(フロントロウ編集部)