謙虚すぎる感想
15歳未満は見られないR指定作品であり、そして、世界最大の映画市場である中国では公開されていないにも関わらず、世界興行収入が10億ドル(約1088億円)を突破するという、映画史に残る大ヒットを記録している『ジョーカー』。
この予想をはるかに超える快挙について、主演のホアキン・フェニックスが何とも謙虚で、ヒット作を生み出すことよりも、作品づくりそのものを愛している、彼らしい感想を述べた。
米Los Angels Timesとのインタビューの中で、『ジョーカー』がここまでヒットするとは、自分自身も監督を務めたトッド・フィリップスもまったく予想していなかったと明かしたホアキンは、ユーモアを交えながらこうコメント。
「この映画が成功するなんて、僕はまったく思ってなかったよ。本当に何も期待してなかったんだ。正直に言うと、トッドと僕が考えていたのは、自分たちのキャリアを終わらせない作品を撮ろうっていうことだけだったね」
『ジョーカー』は、とくにヒットを狙ったわけではなく、フィリップス監督と自由に映画づくりを楽しんだ結果、生まれた作品だと明かした。
暴力事件の代わりに「ダンス」が増える
暴力的な描写を含むことや、主人公の孤独な青年アーサーが“犯罪界の道化王子ジョーカー”として悪の才能を開花させていく様子から、ストーリーに刺激を受けた人物が現実世界で暴力的な事件を起こすことを誘発してしまうのではないかと公開以前から不安視されていた『ジョーカー』。
しかし、そんな心配をいい意味で裏切り、10月頭の米公開以来、同作に影響された大きな暴力事件は起こっていない。
この件に関して、米Los Angelsとのインタビューに同席していたフィリップス監督は、作品が高い評価を受けているという事実こそが、『ジョーカー』という物語を通じて彼らが伝えたかったメッセージがしっかりと伝わった証拠だと分析。
「興行成績が良かったからというわけではなく、人々がこの映画をどう受け取ったかが、この作品の正当性を証明してくれました。私のもとには、この映画を観て、統合失調症に苦しむ自分の妹に対して、これまでとは違った視線を向けてみようと思ったなどという鑑賞者からのメールが届くようになりました」
さらに、フィリップス監督は、映画に登場するジョーカーが階段をダンスしながら踊るシーンをマネする人が続出したことをネタにしながら、こんなコメントで“本当の意味での映画の成功”を祝福した。
「とどのつまり、この映画は、親切心が持つ力と社会における同情心の欠如がテーマです。観客の皆さんは、そのメッセージをしっかりと受け取ってくれたようです。暴力事件を誘引するかもしれないと言われていた映画が、代わりに、階段を踊りながら降りる人たちを増やすことになるなんて、素晴らしいじゃないですか。この事実こそが、今の時代というものを如実に表していると思います」
(フロントロウ編集部)