アリシア・キーズ<司会>
2019年の第62回グラミー賞につづき2年連続で司会を務めたアリシアは、コービーを失ったことに対する痛みを語り、ボーイズ・II・メンと共に、彼らの曲「It's So Hard to Say Goodbye to Yesterday」をパフォーマンスした。
「音楽界で最も盛大なこの夜に、最も優れたアーティストを称えるために、私たちはここに集まっています。しかし正直なところ、私たちは今、クレイジーなほどの悲しみを感じている。なぜなら今日、ロサンゼルス、アメリカ、そして世界がヒーローを失ったのですから。今、コービー・ブライアントが建てたこの建物(※)に立っている私たちの心はボロボロです。コービーと娘のジアナ、そして一緒に失われた人々は、私たちのスピリット、心、祈りと共にあります。彼らは今この建物の中にいるのです。みなさんにお願いしたい。黙とうをささげて、彼らを心の中で抱きしめてあげてください。そして私たちの強さと支えを遺族に共有してあげましょう。このような形でこのショーを幕開けなくてはいけないなんて、思ってもいませんでした。私たちが今どのような気持ちでいるか少しだけでも表現するためにしたいことがあります」
※コービー・ブライアントは1999年にLAレイカーズの本拠地としてオープンしたステイプルズ・センターで何度もチームを優勝に導き大活躍。2006年1月22日には、自身のキャリア最高・NBA史上2番目に多い、1試合81得点という驚異のプレーをこの会場で魅せた。
ビリー・アイリッシュ<最優秀楽曲賞ほか5冠>
アルバム賞、レコード賞、楽曲賞、新人賞という主要4部門をすべて受賞したのに加え、最優秀ポップ・ボーカル・アルバム賞を含む5冠に輝いたビリー・アイリッシュ。1人のアーティストが主要4部門を制覇するのは1981年に「セイリング」が高評価されたクリストファー・クリス以来2人目で、18歳のビリーは、テイラー・スウィフトが保持していたグラミー賞最優秀アルバム賞の最年少受賞記録を塗り替えた。そんなビリーのスピーチからは、“他もみんな素晴らしい”という、他アーティストへの敬意がつねに込められていた。
ビリー:「なんで!ワオワオワオ、この賞を受賞すべき曲はほかにもたくさんあったのに、ごめんなさい。本当にありがとうございます。これは私にとって初のグラミーですが、(授賞式を)見て育った私にこんなことが起こるなんて思ってもいませんでした。これは私の兄のフィネアス。私の親友です。こういったイベントではふざけてばかりで真剣になることは少ないですが、本当に言わせてください、心から感謝していることを。今あるのは、感謝の気持ちと、みなさんと共に立てて光栄だということです。みなさんのことが心の底から大好きで、みなさんを見て育ってきました。チームのみんな、お母さん、お父さんにありがとう。今日まで私を生き長らえさせてくれた親友のドリューとゾーイに感謝します」
フィネアス:「僕たちにとってこれは本当に本当に驚異的なことで、何と言っていいかわかりません。(中略)僕らはベッドルームで一緒に音楽を作ってきました(※)。それは今でも変わりません。(レーベルなどが)やらせてくれる。これを、ベッドルームで音楽を作っているすべてのキッズに捧げます。君たちはいつかこれを受賞することになるよ!」
ビリーとフィネアスはレコーディングスタジオには頼らず、実家にある自分たちの部屋で音楽づくりをしている。
リゾ<最優秀ポップソロアーティスト賞ほか3冠>
計8部門にノミネートされ〇冠に輝いたリゾは、オープニングを飾ったパフォーマンスの冒頭で「今夜はコービーに捧げます」シャウト。初のグラミー賞を受け取ったポップソロアーティスト賞のスピーチでは、涙に声を震わせながらコービーの家族のことを思ったコメントをした。
「この1週間は悩みで頭がいっぱいになっていてストレスを抱えていました(※)。でも一瞬で、すべてがパッと消え去って優先順位が変わることがある。今日、世界には苦しんでいる人がいると知り、地球規模に大きく感じていた自分の悩みが消え去りました。(会場のアーティストに向かって)あなたたちは美しい音楽をつくる。あなたたちは繋がりをつくる。この部屋にいる全員に言います。これからもメッセージを訴えて手を差し伸べなくてはいけません。みんなを動かし、良い気分にさせて、自由にさせる音楽を作る時代のはじまりです!」
※2020年に入り、「荒らしが多すぎる」という理由でツイッターの使用を中止し、「なぜ彼女の体系を称えているの?(中略)彼女が糖尿病になったら全然かっこよくないのに」と言ったフィットネスインストラクターのジリアン・マイケルズの炎上騒動に巻き込まれ、「白人向けの音楽を作っている」という批判に米Rolling Stoneで反論しと、論争が多く起きていた。
フィネアス・オコネル<最優秀プロデューサー賞ほか5冠>
自身がプロデュースした妹のビリー・アイリッシュと共に、2020年のグラミー賞を独占したフィネアス・オコネル。受賞スピーチでは、スタッフのほか会場に来ていた両親や恋人、ビリーなどに感謝する場面がたびたび見られ、家族や恋人との絆の深さが見て取れた。
「次は完璧にさせたいからって、車に乗るたびに同じ曲を17回も再生させてくれる僕のガールフレンドに感謝します。このアワードは、ヴィジョンを持って信頼してくれた妹のものです。彼女ほど素晴らしいコラボ相手がいるなんて夢にも思っていませんでした。僕の両親は、真夜中にキックドラムをEQしようとして部屋で音楽を鳴らす僕にうるさいと言ったことは一度もありませんでした」
タイラー・ザ・クリエイター<最優秀ラップアルバム賞>
アルバム『Igor』でグラミー賞を初受賞したタイラー・ザ・クリエイターは、喜びのあまりステージで泣きながら息子に抱き着く母に対して、親しい友達を呼ぶときに使うスラング「Dog(ドッグ)」という呼び名を使いながら、「Dog、スピーチしなきゃいけないからさ」と諭して会場の笑いを誘った。
「母親に言いたい、あなたはこの男を立派に育てあげた」
ニプシー・ハッスル<最優秀ラップパフォーマンス賞ほか2冠>
2020年のグラミー賞では、2019年に33歳の若さで銃弾に倒れたラッパーのニプシー・ハッスルのトリビュートパフォーマンスが、DJキャレド、ジョン・レジェンド、ミーク・ミル、カーク・フランクリン、ロディ・リッチ、YGによって行なわれた。そんな授賞式で、初のグラミー賞を受賞したニプシー。それを受け取ることなくこの世を去ったニプシーの代わりに、彼の妻と祖母がステージにあがりスピーチを行なった。
ニプシーの妻:「(ニプシーが創設したレコード会社)オール・マニー・インク・ファミリーを代表するとともにニップという素晴らしい人を追悼するために話させていただきます。ニップはアワードのためだけでなく、人々のために活動しました。神は彼に、音楽を通して真実と、知恵と、私たちが生涯を通して持ち続けられることを伝えることを許してくださりました」
ニプシーの祖母:「私がずっと彼に対して感じてきたようなたくさんの愛を彼に示してくれた皆さんに感謝したいです。私の心の中にずっとあり続けるでしょう」
フロントロウ編集部による2020年度の第62回グラミー賞の特集は、フロントロウ編集部のグラミー賞特集からチェックして。(フロントロウ編集部)