“元アンチオスカー”ホアキン・フェニックスの初受賞はあるか?
2020年のアカデミー賞に11部門で最多ノミネートしている、ホアキン・フェニックス主演の映画『ジョーカー』。とくに、ゴールデン・グローブ賞、SAG、BAFTAなど大型授賞式の主演男優賞を総なめにしているホアキンが、オスカーでもトロフィーを手にしてアカデミー賞初受賞を決めるのかに注目したい。
一部では、ホアキンがそもそもオスカーに出席するのかどうかを疑う声も。というのもホアキンは、2012年にアカデミー賞について「くだらないと思ってるから関わりたくない」とエルヴィス・ミッチェルとのインタビューで語ったことがあるから。しかしその後、「オスカーなしに今の自分のキャリアはあり得ない」「嫌いとまではいかない」と訂正したうえ、今年は大型授賞式にはどれも出席しているので、欠席の心配はないと考えてよさそう。
オスカーでも「ヴィーガン食」が導入される
ゴールデン・グローブ賞につづき、アカデミー賞もヴィーガン化!アカデミー賞では授賞式中には食事の提供はないけれど、本番前のロビーでの軽食は100%食物性になる。また、授賞式の約2週間前に行なわれた受賞候補者たちのランチでも、100%ヴィーガンの食事が提供された。一方、アフターパーティーであるガバナーズ・ボールでは、メニューの70%がヴィーガン食になるという。
欧米で「地球温暖化」や「環境破壊」が注目トピックとして盛り上がるなか、ハリウッドのイベントでは、地球温暖化の原因を作っている食肉を減らすためのアプローチがとられており、今回、アカデミー協会も菜食主義を導入。公式声明では、「我々はこれからもサステイナブルなプランを拡大し、最大のゴールであるカーボン・ニュートラル(※)になることを目指します」とされた。
※自分の行動(例:電化製品を使用する、飛行機に乗る)によって排出されるCO2の量と、そのCO2を吸収する行動(例:植物を増やす)が中立になってプラスマイナスゼロになることを、カーボン・フットプリントがゼロになる、カーボン・ニュートラルになると言う。
なぜ今ビーガンが人気?
オックスフォード・マーチン・スクールの調査では、人間が肉の消費量を減らして植物とフルーツを中心とした食生活に切り替えた場合、2050年までに温室効果ガスの排出量を3分の1に減らし、気候変動による1.5兆ドルの損失を防げるという。また、現在は1日2億頭におよんでいる動物の命の消費を減らすことができる。
レッドカーペットのキーワードは「サステイナビリティ」?
2020年のレッドカーペット・ファッションで話題になっているのが、「サステイナビリティ(持続可能性)」。サステイナビリティは、国連が掲げたSDGs(持続可能な開発目標)をもとにした考えで、ファッションにおいては、大量生産と大量消費をやめることや、単発的な消費をしないことなどが求められている。
とくに、その日に着るためだけに特注でドレスが作られることが多いレッドカーペットのファッションはサステイナブルとは言えず、2020年はここの改革が起きている。
例えば、英国アカデミー賞(BAFTA)は、出席者に出来るだけサステイナブルなレッドカーペットルックを求めた。さらに、主演男優賞を総なめにしているホアキン・フェニックスは、2020年はすべての授賞式でステラ・マッカートニーの同じスーツを着ることを宣言。アワード以外でも、ゴールデン・グローブ賞のアフターパーティーに俳優のトローヤン・ベリサリオが結婚式で着たドレスを着用して出席。俳優のブレイク・ライブリーも、主演映画『ザ・リズム・セクション』の複数のイベントで同じブーツを着回しする姿が目撃されている。
アカデミー賞のレッドカーペットで、そんなハリウッドのサステイナブルな動きが見られるのかに期待したい。
2年連続でプレゼンターが進行役に
2020年の第92回アカデミー賞は、2年連続で司会者なしで進行する。
コメディアンのケヴィン・ハートが同性愛者に嫌悪的なツイートが原因で司会の座を退いたため、30年ぶりに司会者無しで進行された2019年の第91回アカデミー賞では、総勢50名以上のプレゼンターが進行役を務めたけれど、今年も同じスタイルがとられる。
プレゼンターとしては、2019年の主演・助演部門の受賞者であるオリヴィア・コールマン、ラミ・マレック、レジーナ・キング、マハーシャラ・アリが決まっており、そのほかには、ティモシー・シャラメやガル・ガドットといった人気俳優から、ウィル・ファレルやクリステン・ウィグといったコメディ系まで、各界のスターたちが名を連ねる。
#OscarSoWhiteへの言及はあるのか?
ノミネーションや受賞の過半数を白人が占めるため、以前から「オスカーは真っ白」という意味にあたる「OscarSoWhite(オスカー・ソ・ホワイト)」というフレーズで批判されてきたアカデミー賞。2年連続で演技賞の全20ノミネートを白人が独占した2016年には、「#OscarsSoWhite」というハッシュタグがツイッターでトレンド入りした。
そして今回、2020年のノミネーションが発表されたときにも、「#OscarsSoWhite」がツイッターでトレンド入り。
作品賞と監督賞は、韓国のポン・ジュノ監督による映画『パラサイト 半地下の家族』以外はすべて白人監督による白人が主人公の作品がノミネート。さらに、合計20の演技賞のうち18を白人が占めている。
さらに、監督賞での女性監督のノミネートはゼロ。2020年度はアカデミー史上最多となる60名以上の女性がノミネートされたけれど、監督賞のような主要部門では女性監督が無視されたこと、史上最多とはいえ女性のノミネート数は依然全体の30%ほどという低い数字であることから、評価はされていない。
このような結果を受けて、「#OscarsSoWhite」がツイッターで再びトレンド入りしただけでなく、ノミネーションの発表日には、監督賞のノミネーションを発表した女優兼クリエイターのイッサ・レイが「Congratulations to those men(おめでとうございます、男性のみなさん)」と、あえて候補者たちの性別を強調した言い方をしてアカデミー協会を皮肉って話題になった。
オスカー当日には、この件に対して受賞者やプレゼンターから皮肉や批判はあがるのか?
『パラサイト 半地下の家族』がオスカーの歴史を変えるか?
2020年のアカデミー賞では、ポン・ジュノ監督の映画『パラサイト 半地下の家族』が作品賞や監督賞を含む6部門にノミネートされ、韓国映画として初めてアカデミー賞にノミネート。
『パラサイト 半地下の家族』が作品賞を受賞した場合、外国語映画としては史上初の快挙となる。
作品賞での“カップル対決”を見逃さないで
作品賞の発表シーンで注目してほしいのが、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』のグレタ・ガーウィグ監督と、『マリッジ・ストーリー』のノア・バームバック監督の様子。じつはこの2人、プライベートでは夫婦!
作品賞で現在カップルの監督2人が一騎打ちするのはこれが初めて。厳密にいうと作品賞はプロデューサーに授与されるもので、グレタは同作をプロデュースしていないため正式には夫婦の一騎打ちにはならないのだけれど、映画業界では“カップル対決”として盛り上がっている。
スカヨハ、史上初のW受賞はあり得る?
主人公のひとりを演じた映画『マリッジ・ストーリー』と、主人公の母を演じた映画『ジョジョ・ラビット』で、SAGや放送映画批評家協会賞をはじめ本年度の賞レースでは主演女優賞と助演女優賞でのダブルノミネートが続いているスカーレット・ヨハンソン。
そしてアカデミー賞でも同じく両部門にノミネート。同じ年に主演と助演部門にダブルノミネートした俳優は過去にも複数いるけれど、ダブル受賞を果たした俳優は今のところなし。もしも両方の部門で受賞した場合は、スカーレットは、キャリア初のアカデミー賞受賞にしてオスカー史上初のダブル受賞という快挙を達成する。
急逝したコービー・ブライアントの追悼
米時間1月26日、元NBA選手でありアカデミー賞受賞者でもあるコービー・ブライアントがヘリコプター事故のため他界。アカデミー賞の授賞式前に催された昼食会では、主催者の映画芸術アカデミー会長デヴィッド・ルービンがコービーへの黙祷を呼びかけ、授賞式での追悼も決定した。
コービーは、自身の半生をベースにした約5分の短編映画『Dear Basketball(ディア・バスケットボール)』で、脚本家、プロデューサー、声優を務め、2018年の第90回アカデミー賞で短編アニメ賞を受賞した。
オバマ元米大統領の作品にオスカーの栄冠は?
アメリカ大統領夫妻としての職を退いてから、多くのプロジェクトを手がけているバラク・オバマ元米大統領とミシェル・オバマ元米大統領夫人。そのうちのひとつが、夫婦で立ち上げた制作会社Higher Ground Productionsを通した映像制作。2018年には複数のドキュメンタリー作品を制作する契約をNetflixと結んだ。
そんな夫妻の制作会社の記念すべき1作目であるドキュメンタリー映画『アメリカン・ファクトリー』は、2020年のアカデミー賞で長編ドキュメンタリー映画賞にノミネート中。オバマ夫妻の制作会社は、初ノミネートにして初受賞を果たせるか?
2020年度の第92回アカデミー賞は、米時間2月9日にロサンゼルスのドルビー・シアターで幕開け。日本では2月10日(月)午前8:30からWOWOWで独占生中継される。(フロントロウ編集部)