『マトリックス』3部作を手掛けたリリー・ウォシャウスキーが、映画の有名フレーズを利用したイヴァンカ・トランプ氏とイーロン・マスク氏にブチ切れる出来事があった。(フロントロウ編集部)

約20年ぶりに新作制作中の『マトリックス』

 『マトリックス』3部作が完結してから約20年。主演ネオ役のキアヌ・リーブスとトリニティー役のキャリー・アン・モスの配役に変わりないまま、新作の『マトリックス4』の制作が2019年8月に発表され、多くの映画ファンを歓喜の渦に包んだ。

 そんな、何十年にもわたって人気を博す『マトリックス』の3部作で監督と脚本を務めた人物といえば、ラナ・ウォシャウスキーとリリー・ウォシャウスキーのウォシャウスキー姉妹。『マトリックス4』ではラナだけが監督・脚本として戻ってくるけれど、3部作では2人で監督・脚本・製作を務めた。そんな姉妹のうちリリーが、ある人物にブチ切れる出来事が発生した。

画像: 約20年ぶりに新作制作中の『マトリックス』

イヴァンカ氏とマスク氏が『マトリックス』ネタ

 彼女がキレたのは、アメリカのドナルド・トランプ大統領の娘で大統領補佐官のイヴァンカ・トランプ氏と、テスラ社CEOのイーロン・マスク氏!

 ことの発端は、イーロン氏が突然「赤い錠剤を飲もう」とツイートしたこと。赤い錠剤を飲むという表現には「厳しい現実を直視する」といった意味があり、じつはこれは『マトリックス』から生まれた言葉。ネオが反乱組織のリーダーであるモーフィアスに、幻想の世界にいられる青い錠剤か、目が覚め辛い現実を見ることになる赤い錠剤のどちらを飲むかの選択を迫られ、赤い薬を飲んだことに由来している。 

 しかしこの「赤い錠剤」という言葉、最近では、政治的右派やアンチフェミニズムの人々が、人種差別や女性差別、マイノリティー差別は幻想であり、赤い錠剤を飲んで現実を見ようとメッセージを送るプロパガンダとして利用されるようにもなっている。

画像: イヴァンカ氏とマスク氏が『マトリックス』ネタ

 マスク氏がどういった意図で突然そのようなツイートをしたのかは明らかになっていないけれど、これに反応したのが、イヴァンカ大統領補佐官。「飲んだよ!」と返信していた。

リリーがブチ切れた理由とは?

 そんなイーロン氏とイヴァンカ氏のやり取りを見て、黙っていられなかったのが、『マトリックス』シリーズの生みの親であるリリー。2人に向けてリリーが送った言葉は、かなり過激なものとなった。

「2人ともくたばれ」

 政界とビジネス界の大物に、ここまでブチ切れるのはある程度勇気のいること。しかしこれには、深い理由がある。リリーはブチ切れツイートに続けて、ある団体のウェブサイトのURLを貼り、「もし可能ならこの団体をサポートして」とコメント。その団体というのが、LGBTQ+当事者のサポートを行なっている、アメリカのシカゴに位置するセンターBrave Space Alliance。ウォシャウスキー姉妹といえば、出生時には兄弟で、姉のラナは2008年頃に、そして妹のリリーは2016年に性別適合手術を受けたトランスジェンダーであることは有名。

 そしてトランプ大統領政権といえば、かなりの保守派で、LGBT排除の動きも多い。また、マスク氏はこれまでにリベラルの運動を多く支持してきたけれど、トランプ大統領とも交流があったり、最近では新型コロナウイルスの外出禁止に反対して裁判を起こしたりと、どの要素がリリーにとって不服だったのかは分からないけれど、彼女が支持している人物ではないよう。

画像: リリーがブチ切れた理由とは?

 被差別グループのLGBT当事者として、差別が存在するということを信じないという人々に、自分が情熱を込めて作り出した作品を利用されていることに、リリーがすでに憤りを感じているのは痛いほどうかがい知れる。そんななか、保守層の政治家と大物ビジネスマンにまで利用されることは、アーティストとして我慢ならなかったようで、リリーはしっかりと声をあげた。

 ちなみに、日本ではその内容にかかわらず、アーティストが政治的発言をすること自体に批判が集まることが多いけれど、アーティストがその作品を通して表現していることは、例えSFであっても、ラブソングであっても、それは社会や、社会を形作る個人についてに他ならない。そのため、海外ではその信念にプライドを持つ多くのアーティストが、その責任から逃げずに政治的発言を行なっている。(フロントロウ編集部)

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