ビリー・アイリッシュが音楽の世界において「見た目や服装」でジャンル分けされてしまう現状に苦言。白人女性ならポップ、黒人女性ならR&Bかラップにくくられてしまうと批判した。(フロントロウ編集部)

音楽におけるダブルスタンダードに苦言

 ビリー・アイリッシュが音楽の世界におけるダブルスタンダード(二重規範)<※>に言及。自身が「ポップ」とされているのは白人女性だからだと語った。

※類似した状況において、対象とするものによって不公平に価値判断の基準を変えること。

画像: 音楽におけるダブルスタンダードに苦言

 英GQによるインタビューに応じたビリーは、「カテゴリーというものがずっと嫌いだった」とした上で、「『“白”っぽい見た目だね』って言われるのがすごく嫌い。“白”っぽいサウンドだね、とか。タイラーが言ったことはすごくクールだと思う。その言葉については彼に同意する」と説明。

 ビリーが言及したタイラーの発言とは、アーティストのタイラー・ザ・クリエイターが今年の第62回グラミー賞授賞式でした発言のこと。最新アルバム『IGOR』で最優秀ラップ・アルバム賞を受賞したタイラーは受賞後、グラミー賞におけるカテゴリー分けについて、「ウンザリするのは、俺みたいなルックスの奴がジャンルをまたがるようなことをやったとしても、常にラップかアーバンのカテゴリーにくくられるということ。『アーバン』という言葉は好きじゃないんだ。俺には単に、Nワード(※1)をポリコレ的(※2)に言っただけに聞こえる」と批判していた。

※1 黒人の蔑称のこと。
※2 政治的/社会的に中立な言葉や表現を心がけること。

 アーバン・ミュージックは都会的なイメージのある音楽を指す言葉である一方で、R&Bやヒップホップを示す文脈で使われることも多く、今年開催された第62回グラミー賞において、最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバム賞にノミネートされた作品はすべて有色人種のアーティストの作品となっている。

 ビリーは英GQに対し、自身と同じく今年のグラミー賞で最優秀新人賞などにノミネートされていた黒人シンガーのリゾに言及しながら次のように語った。

「見た目や服装でアーティストを判断しないでほしい。グラミー賞でリゾが最優秀R&B部門(※)にカテゴリーされていたよね?何が言いたいかって、彼女は私よりもポップだと思うの」
※リゾは今年のグラミー賞で、最優秀R&Bパフォーマンス賞を含む8部門にノミネートされ、最優秀トラディッショナルR&Bパフォーマンス賞、最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバム、最優秀ポップ・ソロ・パフォーマンス賞の3部門を受賞。

「私がただ、白人の10代の女性というだけでポップになる」

 「つまり、もし私が白人じゃなければ、きっと『ラップ』にくくられていたと思う。なぜかって?人々は見た目と、自分が知っていることから判断するから。おかしなことだと思うけどね」と続けて語ったビリー。

 「世間というのは、人を箱の中に入れたがるの。私はキャリアを通してそれを経験してきた。私がただ、白人の10代の女性というだけでポップになる。私のどこがポップなの?私の音楽のどこがポップなの?」と、自身の音楽が「ポップ」とされているのは自分が白人だからだとした上で、自身が今年のグラミー賞でリゾらを抑えて最優秀レコード賞、最優秀アルバム賞、最優秀楽曲賞、最優秀新人賞の主要4部門を含む5部門を受賞したことに言及しながら、次のように続けた。

画像: 「私がただ、白人の10代の女性というだけでポップになる」

 「もちろん、それについては対極のことも言える。白人という理由で、世間から批判されるっていうね。『ああ、彼女は白人だからね。だから受賞したんだ』って」とビリー。「実際、そういう感情は理解できる。世間がそう言う理由も分かる。結局、みんな好きなことを言っていいんだけど、ここまでの私の懸命な努力を傷つけるのはやめてほしい」と、人種や見た目のために作品そのものの質やアーティストたちの努力がないがしろにされてしまう風潮に苦言を呈した。(フロントロウ編集部)

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