MCU映画でもお馴染みのドン・チードル
黒人差別が深刻なアメリカで、これまでに数多くの黒人が白人警官に殺されていることを受けて、黒人の命にも価値があるという意味のBlack Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)ムーブメントが多くの人々から支持されている。警官による黒人の殺害を止めるよう呼びかけるだけでなく、社会のシステム全体で黒人が差別されるようになっていることにも抗議の声が世界中からあがっている。
そんななか、映画『ホテル・ルワンダ』の演技でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされ、『オーシャンズ』シリーズではバシャー・ターを、そしてMCU映画でウォーマシン/ジェームズ・“ローディ”・ローズ中佐を演じたドン・チードルが、米トーク番組『TheTonight Show(原題)』に出演。黒人としての“日常”を語った。
黒人であるだけで警察は恐怖の存在
黒人コミュニティでは、子供が幼い頃から両親は警察への対応の仕方を教えることが多く、ドンの家庭でもそうだったという。とはいえドンは、幼少期は隣人もほとんど黒人の地域で暮らしていたため、平和だったと明かす。しかしその後、郊外へ引っ越した時には学校でのいじめも経験し、警察も味方ではないと分かったという。そしてハリウッドのあるロサンゼルスへ移ってからも、それは同じだという。
「数えられないほど(警察に)止められたことがあるし、頭に拳銃を突きつけられたこともある。私はいつでも(犯人像に)当てはまるから。警官たちが言うことを先に言っていたこともありますね。彼らは『私達が君を止めたのは…』と言いますから、私は『私が当てはまるからですよね』と先に言っていました。私は当てはまるんですよ。知ってます。私は当てはまるんです。いつでも当てはまるんです」
ドンにとって警察が味方でないということは、あまりに当たり前の日常なのか、拳銃を頭に突きつけられた過去すらも淡々と話した。しかし、彼の話を聞いていた番組司会者で白人のジミー・ファロンは驚きを隠せない様子。警察は自分たちを守ってくれる存在だと感じている人も多いけれど、黒人にとっては警察こそが恐怖。その事実に関しては、俳優のナタリー・ポートマンも、警察が安全な存在と思えることこそが白人の特権だと気がついたと話している。
そして、ドンが語るように、何もしていないのに人種が原因で警官に止められることは、レイシャル・プロファイリング (Racial Profiling)といって各国で問題となっている。例えば、ただ歩いていただけにもかかわらず、黒人であるだけで止められるといったようなもの。
黒人差別はいつでも起きていた
またドンは、Black Lives Matterが起こったのはここ数年だけれど、警官による黒人の殺害はいつでも起こっていたと語る。
「これはいつでも何度も起こっていたことなんです。私の友人は警官に殺されそうになったことがあります。何もしていないのに。動画が拡散されるようになったけれど、私にとっては新しいことでも何でもない。私たちは、そういったことが起こっているのはよく知っていました。ただそれが撮影されていなかっただけですよ」
ドンの主張と同じく、黒人監督として、アメリカ社会の根深い黒人差別を描いてきたスパイク・リー監督は、今から31年前の1989年に公開した『ドゥ・ザ・ライト・シング』ですでに、警官に殺される黒人の姿を描いている。リー監督は、6月初めに出演した米『CNN Tonight(原題)』で、「私達はこれを何度も、何度も、何度も見ています。問題なんですよ。黒い身体を殺すこと、その上にこの国は建てられてるんだ」と怒りをあらわにした。(フロントロウ編集部)