『AGT』差別問題や職場環境に批判
2019年に、アメリカの人気オーディション番組『アメリカズ・ゴット・タレント』のシーズン14で審査員に加わったガブリエル・ユニオンが、1シーズンだけで解雇されたことを受けて問題となった、番組の労働環境。
黒人女性であるガブリエルは、オーディションのなかで発生していた黒人やアジア系に対する人種差別をたびたび指摘してきていた。さらに、番組の名物審査員であるサイモン・コーウェルはカリフォルニア州で禁止されている室内の職場での喫煙を習慣にしており、タバコアレルギーであるガブリエルは彼に室内での喫煙をやめるよう掛け合ったけれど、そうはならず、結果的にガブリエルが解雇されることになってしまった。
サイモンは、ガブリエルについて「彼女は難しい」と発言していたという証言もある。
ガブリエルが解雇されたことをうけて、『アメリカズ・ゴット・タレント』およびその放送局のNBCが抱える人種・女性差別問題や職場環境の問題が明らかになり、大御所ラジオパーソナリティのハワード・スターンからシンガーのアリアナ・グランデ、さらにはNBAの多くの番組に出演するデブラ・メッシングまで、他の多くの著名人からも批判が相次ぐこととなった。
平行線をたどった双方の意見
その後、NBCや番組の制作会社2社に関して調査が行なわれた。その結果、企業側は番組の制作現場で一部に改善できることがあるのは認めたけれど、ガブリエルの主張は事実ではないとした。その数ヵ月後に、ガブリエルがカリフォルニア州の行政機関である公正労働及び住居部門に、『アメリカズ・ゴット・タレント』から受けたハラスメントの苦情を提出。しかしふたたび、NBC側は番組の制作現場では多様性が守られているとした。
完全に平行線をたどっていたガブリエルと、NBCおよび『アメリカズ・ゴット・タレント』の制作会社だけれど、ここにきて和解をしたという共同声明を発表。しかし、その詳細については、双方ともにコメントを差し控えている。
「私達は友好的な解決に至りました。NBCエンターテイメントは、ガブリエル・ユニオンが重要な懸念を指摘してくださったことに感謝し、すべての人が敬意を持って扱われる包括的で支援的な労働環境の確保に努力していきます」
「友好的な解決」の内容について、今後その詳細が明かされる可能性は低い様子。どのような取り決めであったとしても、『アメリカズ・ゴット・タレント』が老若男女問わずすべての観客が楽しめる番組であることを願う声は多い。(フロントロウ編集部)