大統領就任式で喝采を浴びた22歳の詩人
アメリカ時間2021年1月20日に、ジョー・バイデン氏が第46代アメリカ合衆国大統領に、カマラ・ハリス氏が第49代アメリカ合衆国副大統領に就任した。大統領就任式では、バーニー・サンダース氏の防寒を優先したファッションや、ハリス氏の姪っ子の夫が革靴でなく人気スニーカーを履いてきたことなど、その参加者にも注目を集めた人がちらほら。
そして最も話題沸騰となったと言っても良いのは、史上最年少となる22歳で就任式での詩の朗読を行なったアマンダ・ゴーマン。
ジル・バイデン氏に推薦されたアマンダ・ゴーマン
社会学を専攻していたハーバード大学を卒業したばかりの22歳であるアマンダは、10代の頃からポエムの才能を発揮しており、様々な賞を受賞。大学在学中には、アメリカ・ユース・ポエム賞の初代受賞者に選ばれている。
アマンダが過去に行なった朗読の映像を見たバイデン大統領の妻であるジル・バイデン氏の推薦によって、今回の大役を担うことになった彼女は、つまり、人を動かすほど訴えかける力があるということ。
米Vogueのインタビューで、自身のポエムの目的について、「赤い手押し車や木々についてのポエムを書くだけでは、私にとって充分ではないんです。とはいえ、そういったポエムもできるし、たまに書きますけどね。私はポエムに目的を混ぜないといけない。私にとってそれは、人を助けることや、長すぎる間暗がりに追いやられていた問題に光を当てるといった目的です」と語っていた。
彼女はポエムを武器としているため、社会問題をテーマにしていても、作品やインタビューでの発言の内容が非常に分かりやすい。そこで今回は、アマンダの過去の発言をご紹介。
黒人の少女として
就任式のために彼女が用意したオリジナルのポエム『The Hill We Climb』では、次世代の視点から、アメリカで長い歴史のある黒人差別についての思いも読まれた。
「この国と時を受け継いでいく私たち。奴隷の血を引き、シングルマザーに育てられた細い黒人の少女が、大統領になることを夢見ることができ、大統領のために朗読している。イエス。私たちはまだまだ仕上がっていない。洗練されたというには程遠い。しかしそれは、私たちが完璧な団結をしようとしているという意味ではない。私たちは目的のある団結をしようとしている」
女性にも自分の身体について決める権利がある
アメリカにはレイプによる妊娠でも中絶が禁止されている州がある。女性の権利を著しく制限するその法について、アマンダは米Now Thisのインタビューで、反対する理由を8つあげた。その中より、3つを厳選。
「はっきりさせましょう。レイプへの罰則が、レイプの後の中絶に対する罰則よりも軽いなら、それは女性や少女たちを気にかけているものではないと分かりますよね。それは女性たちをコントロールするものです」
「妊娠とはプライベートなものであり、そして私的な判断です。政治家の許可が必要であるべきではありません」
「女性たちが中絶を望む時、その時点ですでに不当で偏った負担に直面しています。もしすべての性別、すべての人が平等であるのならば、中絶は法的に合法であるだけでなく、アクセスしやすいものでなければいけません」
次世代の女性として
アマンダの過去のポエムには、自分自身を大切にすることや、これからを生きるうえで歴史から学ぶ重要性を考えさせられるものなど、力強いメッセージが光る。
「あなたが必要とするただ1つの承認は、自分自身からのもの」
「私たちが未来を見ている間、歴史が私たちを見ている」
副大統領となったハリス氏も、2018年に最高裁判所判事となったブレット・カバノー氏のレイプ疑惑を追及する際に、非常に冷静で端的に質問を行ない、称賛された経歴を持つ。アマンダの言葉は、そんなハリス氏を彷彿とさせながら、芸術的視点を持ち、人々に訴えかけている。
ハリス氏が数年後に大統領となることを望む声も多いけれど、アマンダはさらに先の2036年の大統領選に出たいと語ったことも。若者が社会問題に関心を持ってポジティブなアクションを起こすことは、どの時代にも非常に大事なこと。大統領就任式での彼女の存在は、多くの人に未来への希望を感じさせた。(フロントロウ編集部)