カマラ・ハリス副大統領、歴史的瞬間を彩った「紫色」の衣装に注目
米現地時間1月20日に首都ワシントンで行なわれた大統領就任式でをもって、民主党のジョー・バイデン氏が第46代アメリカ大統領に就任。バイデン大統領と歩みを共にする副大統領には、アメリカ史上初の女性にして、黒人・南アジア系の血を引くカマラ・ハリス氏が就任した。
アメリカだけでなく、世界中の女性たちが、さまざまな思いを胸にハリス副大統領が就任宣誓を行う歴史的瞬間を見守ったが、やはり大きな注目を集めたのは、この日、ハリス副大統領が選んだ鮮やかな、青みがかったロイヤルパープルの衣装だった。
ブラックカルチャーに敬意を表して
ハリス副大統領が身につけたコートとワンピースから成るアンサンブルは、ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動する若手黒人デザイナーのクリストファー・ジョン・ロジャーズ(Christopher John Rogers)が手がけたもの。
2019年にCFDA(アメリカファッション協議会)アワードを受賞したクリストファーが手がける、モダンでパワフルかつ、黒人カルチャーの源泉であるアフリカへの敬意を感じるデザインは、俳優のゼンデイヤやシンガーのリアーナ、リゾ(Lizzo)、といった黒人の血を引くセレブたちに支持されていることで知られており、ハリス副大統領が同ブランドのアイテムを選んだのも、自身のアイデンティティの1つであるブラックカルチャーに敬意を払うためだと考えられている。
また、カレッジの卒業式以降、大事なイベント事では必ずパール(真珠)のアクセサリーを身につけていることで知られるハリス副大統領は、就任式でも例外なく、パールのネックレスとイヤリングを着用。
パールは、ハリス副大統領が出身校ハワード大学の在学中に所属していた、黒人女性初の社交クラブ「アルファ・カッパ・アルファ」へのオマージュ。つまり、黒人の血を引く女性としての誇りの証でもある。
「紫色」が象徴するもの
そして、紫(パープル)という色のチョイスにも、ある重要なメッセージが込められていると言われている。
紫色は、アメリカにおける婦人参政権運動の参加者たちがシンボルとして身に纏っていた、「紫」「白」「金」の3色のうちの1つ。
アメリカ婦人参政権協会が1913年に発行したニュースレターによると、白色は「純潔」、金色は「目的の達成へと導いてくれる光」といった意味を持つのに対し、紫色には「忠誠」、「目標達成への執念」、「揺るぎない理念」といった意味があると説明されている。
ハリス副大統領は、2020年の大統領選挙後に行なった勝利宣言で純白のパンツスーツを着用し、かつて女性の政治参加のために心血を注いだ「サフラジェット」と呼ばれる女性たちへの敬意を表したようだと話題に。
就任式で着た紫色の衣装も、また、サフラジェットたちへの感謝と、“女性は、ようやくここまで来た”という功績を称えるメッセージが込められていたものと、多くのアメリカ国民に解釈されている。
紫色を身につける女性が続々 もう1つの意味
就任式に紫色を選んだ女性はハリス副大統領以外にも。第44代大統領を務めたバラク・オバマ氏の妻のミシェル夫人は、セルジオ・ハドソン(Sergio Hudson)の全身赤紫の衣装を着用。
ドナルド・トランプ前大統領と第45代大統領の座をかけて争ったヒラリー・クリントン元国務長官は、ラルフ・ローレン(Ralph Lauren)のパープルのセットアップに同色のフリルのスカーフを合わせ、深いボルドーのウールコートを羽織ってセレモニーに参加した。
バイデン大統領夫人で、新ファーストレディーとなったジル・バイデン博士は、就任式当日は、ニューヨーク発の新鋭ブランド、マルカリアン(Markarian)のカスタムメイドのブルーのドレスとコートを着用。
ブルーという色のチョイスに関しては、マルカリアンのデザイナーが「信頼、自信、安定を表現するため」と米Peopleに説明しているが、バイデン博士は、前日に出席した、新型コロナウイルスで亡くなった人々を追悼するセレモニーなどのイベントでは、ジョナサン・コーエン(Jonathan Cohen)の紫色のコートとワンピースを着用した。
重要な女性たちが、まるで口裏を合わせたかのように、こぞって紫色の衣装を身につけて公の場に登場したのには、女性の政治参加を祝福する以外にも、もう1つ理由があると言われている。
それは、紫が民主党のシンボルカラーである「青」と共和党の色である「赤」をミックスした色だということ。
分断が広がり混沌とするアメリカという国を、新たな政権により1つにしたいという団結や調和への祈りを込めて、女性たちは確かな意図を持って、紫色をチョイスしたのではないかといわれている。(フロントロウ編集部)