グッチ会長暗殺に関与した重要人物が映画に難色
イタリアの老舗ブランドグッチ(Gucci)の創設者グッチオ・グッチの孫であり、グッチの会長を務めていたマウリツィオ・グッチの殺害をヒットマンに依頼した罪で有罪判決を受けたパトリツィア・レジアニが、一族の闇を描くリドリー・スコット監督の犯罪映画『House of Gucci(原題)』でシンガーのレディー・ガガが自身の役を演じることに難色を示した。
2月末からイタリアで撮影が進められている『House of Gucci』は、グッチ一族の骨肉の争いを描いたサラ・ゲイ・フォーデンの著書『The House of Gucci: A Sensational Story of Murder, Madness, Glamour,and Greed』を下敷きに制作される作品。
劇中では、1995年に起きたマウリツィオ殺害事件をめぐる物語が展開されることが伝えられており、イタリア国内でロケを行う模様を収めたパパラッチ写真が続々と世に出ているほか、先日、黒髪ショートにイメチェンし、パトリツィアそっくりに変身したガガが、夫のマウリツィオを演じる映画『マリッジ・ストーリー』のアダム・ドライバーと寄り添うファーストルックが公開されたばかり。
ガガが自身を演じることに憤慨している
ガガやアダムのほかにも、『ゴッド・ファーザー』のアル・パチーノや『レイジング・ブル』のロバート・デニーロ、『ダラス・バイヤーズクラブ』のジャレッド・レトなど、そうそうたるキャストたちが出演することでも話題の『House of Gucci』には、早くも大きな注目が集まっているけれど、マウリツィオ暗殺事件の黒幕である“悪女”として知られるパトリツィアは、ガガが自分を演じることを良く思っていないという。
伊ANSA通信(Agenzia Nazionale Stampa Associata)の取材に応じた、現在72歳のパトリツィアは、「レディー・ガガがリドリー・スコット監督の新作映画で私を演じることについては、むしろ腹立たしいと思っている。私に会いに来くるという配慮や気遣いもなしにね」と『House of Gucci』の撮影に臨むにあたり、ガガや制作陣から自身のもとには何の挨拶もなかったと示唆。
「私には映画からは一銭も入らないけど、別に経済的なことを言っているわけじゃないの。ただ、良識とリスペクトがあってもいいんじゃないかしら、ってこと」と、映画が制作・公開されても、自身には何の利益ももたらされないことを明かしたうえで、自分の実体験をもとにした物語が描かれるのに、何の断りもないことは無礼だと考えていると明かした。
「ブラック・ウィドウ」と呼ばれた女性
パトリツィアは、マウリツィオと1973年に結婚し、アレグラとアレッサンドラという2人の娘をもうけたものの、1985年にマウリツィオが若い女性と浮気。マウリツィオは出張に行くと言って出かけたまま、家族のもとには戻ってこなかった。
マウリツィオとパトリツィアの離婚は1991年に成立。パトリツィアはその翌年に脳腫瘍の診断を受けた。腫瘍の摘出手術は無事成功したものの、パトリツィアはこの手術により思考のプロセスが改変されてしまったと主張。1995年に元夫となったマウリツィオの殺害をヒットマンに依頼したのは、このことに影響されていると裁判で供述した。
パトリツィアは、事件から2年後の1998年に有罪判決を受け逮捕。18年の刑期を経て2016年に釈放された。世間から大きな注目を浴びた裁判の最中、パトリツィアはメディアから「ブラック・ウィドウ(黒い未亡人)」と呼ばれた。
パトリツィアとしては、ガガが自分を演じるのが嫌というよりも、役者が誰であったとしても、キャストや制作スタッフから自分に対して“ひと言”も無いことに腹を立てているよう。ガガは、パトリツィアからのクレームに関して現時点では公には反応していない。
(フロントロウ編集部)