7月16日にニューアルバム『Pacifico(パシフィコ)』をリリースしたポップデュオ、サーフェシズにインタビュー。メンバーのコリン・パダレッキが、アルバムに込めた思いや、新型コロナウイルスの影響でおよそ2年のツアーとなった最新ツアーなどについて語ってくれた。(フロントロウ編集部)

サーフェシズがニューアルバム『パシフィコ』をリリース

 新型コロナウイルスによるパンデミックに見舞われた2020年は、多くの人々にとって難しい期間となったが、コロナ禍の真っ只中でブレイクを果たした新人アーティストたちにとっても、苦労を余儀なくされる期間となった。2019年にシングルとしてリリースした「Sunday Best」が1年の時を経て2020年にTikTokで大ヒットし、あのジャスティン・ビーバーまでもが楽曲に言及するなど、この曲をきっかけにブレイクを果たすこととなった、米・テキサス州を出身に活動するデュオであるサーフェシズも、そんな新鋭アーティストの1組。

画像: フォレスト・フランク(左)とコリン・パダレッキ(右)からなるサーフェシズ。

フォレスト・フランク(左)とコリン・パダレッキ(右)からなるサーフェシズ。

 通常であれば、ライブやツアーを重ねながらオーディエンスと交流していくのが、新人アーティストたちが着実にファンベースを築き上げていく方法の1つであるわけだが、新型コロナ禍では、感染防止のためにライブ活動は制限され、ファンの前で直接楽曲を披露できる機会がなくなってしまった。

 それでも、あのエルトン・ジョンを迎えたシングル「Learn To Fly」をリリースしたり、11月には日本のファンのために日本独自企画アルバムとなる『Sunday Best(サンデイ・ベスト)』をリリースしたりと、精力的に活動してファンに次々に新曲を届けてくれたサーフェシズ。そして今回、およそ1年ぶりとなるニューアルバム『Pacifico(パシフィコ)』がついに7月16日にリリースされた。

画像: サーフェシズがニューアルバム『パシフィコ』をリリース

 フロントロウ編集部では、ニューアルバムのリリースに先立ってサーフェシズのコリン・パダレッキにインタビューを実施。「Mad at Disney」でブレイクしたセイレム・イリースも参加していることで話題の最新作『パシフィコ』についてはもちろん、6月25日からスタートした、『GOOD TO BE BACK』と銘打った久しぶりのツアーへの思いなどを訊いた。

サーフェシズにインタビュー

2020年は新型コロナウイルスにより、ライブ活動ができないなど音楽業界は変化を余儀なくされましたが、サーフェシズにとっては、「Sunday Best」の世界的なヒットを筆頭に、ポジティブなニュースも多くあったのではと思います。この曲がヒットするきっかけとなったチャレンジ「#2019Rewind」にちなみ、2020年を簡単に振り返ってみると、どんな1年だったでしょうか?

「『Sunday Best』のヒットは自分たちにとってはすごく不思議に感じた。あれをリリースしたのは2019年の初めだったのに、パンデミックになって皆が外に出れなくなった状態で1年前にリリースされた曲がポンと出てきて、驚くほどに広がっていったというのは変な感じがしたよ。まるで治療薬みたいな感じで広がっていった気がした。あの曲が、あの状況の中でポジティブさと喜びを皆にもたらしてくれたのだとしたら、それはすごく嬉しい。ソーシャルメディアを通して、その喜びが、人から人、国から国へと広がって知られていったということは、やっぱり、世界が心からその時に得られなかったものを求めていたんだと思う。あの曲で、僕らが少しでも世界の人々に貢献することができたことを祈るよ」

以前、インタビューさせていただいた時に、2019年の夏が初めてのツアーだったとおっしゃっていました。今月よりツアーに乗り出すとのことで、お2人にとっても久しぶりのツアーだと思うのですが、やはり感慨深いものがありますか?

「本当に久しぶり。アルバムのリリースと同じ6月25日に、セイレム(・イリース/シンガーソングライター)も招いてアルバムのリリースショーをやったんだけど、あれは1年以上ぶりのショーだったから、かなりドキドキしたよ(笑)。オーディエンスの数もすごかったし、最高だったね。これまでの中でもベストと言えるショーだったと言えるくらい。だから、もうすぐ始まるツアーが本当に楽しみなんだ。数週間後(※)にはロラパルーザでの初めてのパフォーマンスも控えてるんだけど、すごくいいショーになると思うし、とにかく興奮してる。ツアーも、めちゃくちゃ楽しい経験になるだろうな」

※アメリカ最大規模のフェスティバルの1つである今年ロラパルーザは、2021年7月29日から8月1日にかけてシカゴで開催され、サーフェシズは最終日の8月1日に出演する。

セイレム・イリースは最新アルバム『パシフィコ』に収録されている「Come With Me」に参加している。

お2人にとって、ライブはどんな意味を持っていますか?

「ライブは、僕たちが大好きなことの1つ。歌詞を叫び、歌ってくれるファンの前でパフォーマンスをするという経験に代わるものなんて2つとないし、そうすることで皆が前向きな気持ちになってくれることがすごく嬉しいんだ。皆が一緒に歌ってくれる歌詞を聴いていると、全員でキャンプファイヤーをしているような気分になる。皆で一緒に1つのことを楽しむというあのフィーリングは、世界一最高なフィーリングの1つだね。ミュージシャンであれば、みんなが同意してくれるんじゃないかな。パンデミックの間は、それが全く出来なかった。自分たちの目の前にいるファンを前に、ライブ会場で生演奏をすると、本当に特別なエナジーが生まれるんだ」

今回のツアーは、最新アルバム『パシフィコ』を引っ下げたものになっています。サーフェシズのアルバムにはいつも海にちなんだタイトルがつけられていますが、お2人にとって“海”はどんな意味を持っているのでしょうか? また、今回の『パシフィコ』というタイトルに込めた想いについても訊かせてください。

「アルバムのレコーディングのために、半月マリブに滞在したんだけど、その時、見晴らしがすごくいいレンタルハウスを借りて、そこに滞在していたんだ。山や夕陽、海岸線が見える素敵な家で、インスピレーションをたくさんもらった。その家が建っている通りの名前が、ランブラ・パシフィコ・ドライブだったから、そのタイトルにしたんだよ。アルバムにその通りの名前を使いたくて、『パシフィコ』にしたんだ。僕たちにとってその言葉は、あの家、アルバム制作の雰囲気、マリブでの時間を意味しているからね」

サーフェシズが作り出すサウンドもまた、砂浜で聴きたくなるような、海辺が似合うサウンドのように感じています。このようなプロダクションは、意識されてのものなのでしょうか?

「面白いのは、僕らがどこの出身かわからない人たちの多くが、僕たちが(荒野などのイメージがある)テキサス出身ということを信じないということ(笑)。サウンドがビーチっぽいし、僕たちは曲の中で海や太陽についてよく触れているからね。僕たちが住んでいるのは、海岸沿いでもないテキサスの本土。でも僕たちはずっとビーチや湖が大好きだし、それが常に心の中にあった。水はいつだって僕たちを興奮させるんだ。友達や家族と水辺で過ごしている時のエナジーを思い出すと懐かしい気持ちになるし、ハッピーな気持ちになる。僕たちは、その水から感じるエナジーを、自分たちの音楽で描きたいと思っている。それがサウンドに表れているんだと思うよ。毎年友達や家族みんなで湖に行って、水辺でジャック・ジョンソンを聴いて育ってきた。アコースティックギターを片手に良い気分になる歌詞を歌うっていうのが、子供の頃の僕にとってはインパクトが大きかったんだよね。だから、ビーチや湖でくつろいでいる人たちが聴いて楽しめるような音楽を作ることが頭の中にずっとあったんだ。若い時にそういう音楽を聴いて、自分自身が良い気持ちにさせてもらっていたから。いつか自分も人々に同じことをしたいとずっと思っていたんだ」

『パシフィコ』の収録曲で、特にお気に入りの1曲を教えてください。

「僕のお気に入りは『Come With Me』。この曲は、とにかく聴きやすい。人の注目を引くような曲ではないけど、すごく滑らかなんだ。まるで水を飲んでいる時みたいな感じ。味はしないけど、とにかく気持ちがいいし、身体がそれを必要としているっていうね。車の旅に出て、海岸沿いを車で走ってる時に聴きたくなるような曲だと思う。プロダクションもこれまでで一番気に入っているプロダクションの1つだし、セイレムがフォレストと一緒に歌ってくれたことでダイナミックさが生まれた。お互いのフィーリングを引き出すことができたと思う。あれは特別だったな。アルバムをリリースする前から何度も聴いている曲の1つなんだけど、未だに新しい感じがするんだよね」

ところで、昨年『Learn To Fly』でエルトン・ジョンとコラボされましたが、反響はありましたか?

「エルトンは携帯を持っていないんだ。テキサスにあるフォレストの家で『Learn To Fly』のデモをレコーディングして、その出来が良かったから、マネージャーがデモを配って様子を見てみようと言ってきた。それで、僕らは『いいよ』と返事をして、誰か見つかって、そのコラボが自分たちにとって自然だと感じられるものだったらいいな、くらいに考えていたんだ。で、その数日後にマネージャーとFaceTimeをしていたら、エルトン・ジョンからメールがきたって言われたんだよ。本当に驚いたね(笑)。どうやって彼の元に辿り着いたのか、検討もつかなかったよ。エルトンが僕たちの曲を気に入って、コラボしたいと言ってくれるなんて、驚いた。もう興奮しちゃって、家の中を走り回って、叫んでジャンプしまくったくらいさ(笑)。彼と作業ができたのは、本当に素晴らしい経験だったね。コロナがあったから実際に会って作業することはできなかったけど、Zoomでセッションをいくつかやって、その前にも会話をして、お互いのことを知り合ったんだ。彼との作業は、全くビジネスという感じがしなかった。それくらい本当に楽しかったんだ。国内外からの曲への反響もすごくよかった。でも、もしスポティファイで2人しかあの曲を聴いてくれなかったとしても、僕は全く気にしない。だって、あのエルトン・ジョンとコラボが出来ただけで十分に素晴らしいことだから(笑)」

今後、コラボしてみたいアーティストがいたら教えてください。

「エルトンみたいに、自分たちにとって先輩となるアーティストたちともっとコラボしてみたい。若いアーティストだけでなく、新人からベテランのアーティストまで、幅広いアーティストたちとコラボするのはクールで楽しいと思うし、二世代の音楽をリスナーに聴いてもらうことができるっていうのは良いことだよね。自分たちが若い時に聴いていたレジェンドたちの音楽を、自分たちももっと聴きたいと思うし、それを皆に聴かせたいとも思う。自分にとってロールモデルだったような人たちかな。例えばジャック・ジョンソン、ジョン・メイヤー、スティービー・ワンダー、ジェイムズ・テイラーなんかとコラボが実現できたら最高だろうね」

昨年は、日本デビューアルバム『サンデイ・ベスト』をリリースして、それに伴うオンラインリリースイベントでは日本のファンとも交流されましたね。遠くにいながらもファンの顔を見ながらコミュニケーションを取ることができるという、コロナ禍ならではの交流になったのではと思います。イベントはいかがでしたか?

画像: 2020年11月に行なわれたオンラインリリースイベントにて。

2020年11月に行なわれたオンラインリリースイベントにて。

「最高だった。初期のグレーテスト・ヒッツ的なものを作ったんだ。それに改めて『サンデイ・ベスト』というタイトルをつけた。あの作品に入っている曲は、僕たちが自分たちのサウンドにとって必要不可欠だと思うもの、自分たちの代表曲だと思えるものを基準に選ばれている。ああいったちょっとした楽しいセレクションをリリースできたのはクールだったし、それを日本の皆に特別に提供できたのは、すごくうれしかったね」

日本でサーフェシズのライブが観られる日を楽しみにしています!

「僕たちもすごく楽しみ! 日本の美しい文化を経験して、皆に会うのが待ちきれないよ。僕たちは日本のファンのみんなが大好きだし、早く会えることを願ってる。そして、皆がアルバムを楽しんでくれたら嬉しいな」

サーフェシズ
『Pacifico(パシフィコ)』
配信中/日本独自企画盤 発売中

画像: 日本でサーフェシズのライブが観られる日を楽しみにしています!

(フロントロウ編集部)

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