2021年版「世界で最も影響力のある100人」が発表
米TIME誌による2021年版「世界で最も影響力のある100人」のリストが発表された。
パイオニア、アーティスト、リーダー、アイコン、タイタン(重要人物)、イノベーターの6部門に分けて選出され、ビリー・アイリッシュやリル・ナズ・X、スカーレット・ヨハンソン、ケイト・ウィンスレット、スティーヴン・ユァンといったフロントロウの読者におなじみの面々のほか、日本からはMLBのロサンゼルス・エンゼルスに所属する大谷翔平選手やテニスの大坂なおみ選手、建築家の隈研吾氏ら3名が選ばれた。
それぞれの部門のトップに選出された人々は以下の通り。
ヘンリー王子&メーガン妃【アイコン部門】
2020年3月末をもってイギリス王室を離脱したヘンリー王子とメーガン妃は、今年3月にアメリカのテレビ局で放送された“暴露インタビュー”で、王室脱退という一世一代の決断をするにいたった経緯とそれに伴う葛藤を詳細に話して大きな話題になった。
賛否両論あるが、2人の行動はイギリス社会とその中での君主制の位置づけを再評価させただけでなく、メンタルヘルスやメディアによって拡散された誤った情報など、本質的な会話のきっかけを作った。
「世界で最も影響力のある100人」に二度選出されたシェフであり人道主義者のホセ・アンドレス氏は、「若き公爵夫妻にとって行動を起こすことは容易なことではありません。恵まれた環境に身を置いたまま、沈黙を守るほうがはるかに安全です。でも、ヘンリー王子とメーガン妃はそうしませんでした。(黙っていることは)彼らの本意ではないからです。誰もが知らない人に対して意見を持っている世界で、公爵夫妻は知らない人を思いやる気持ちを持っています。彼らはただ意見を言うだけではありません。自ら険しい道を選んで進んでいるのです」と賛辞を綴っている。
日本からは大谷翔平と大坂なおみがアイコン部門に選出
今年5月、テニスの4大大会のひとつである全仏オープンで試合後の会見を行なわないことを発表し、その後、全仏オープンを棄権すると同時に、うつといったメンタルヘルスの問題を抱えていることを告白したテニスプレーヤーの大坂なおみが、2020年に続いて2021年も選出された。
NFLのシアトル・シーホークスに所属するラッセル・ウィルソンは、大坂なおみについて、「彼女は世界最高レベルの選手になっても、正義のために戦い、自身が直面する困難についてオープンにすることができることを示しています」と推薦文を通じてコメントしている。
また、2021年のMLBオールスターゲームで史上初の二刀流出場を果たし、日米のメディアを連日のようににぎわせているロサンゼルス・エンゼルス所属の大谷翔平も、その活躍ぶりが評価され初選出。
推薦人を務めたMLBの元スター選手アレックス・ロドリゲスは、「彼は現代のバンビーノ(※ベーブ・ルースの愛称)です。しかし、ベーブ・ルースでさえ、同じシーズンに20以上の盗塁、40以上の本塁打、時速160キロの投球はできませんでした。それができるのは翔平だけです」、「彼はフィールド上で素晴らしいだけでなく、フィールドの外でもジェントルマンなのです。彼のチームメイトは、翔平について良いことしか言いません」、「今年の翔平は見ていて本当に楽しいですね。私は彼の大ファンです。彼は入場料を払う価値があると思います。彼がどのようにシーズンを終えるのか、楽しみです」とベタ褒めだった。
ビリー・アイリッシュ 【パイオニア部門】
2020年、音楽界で最も権威ある賞と言われるグラミー賞で、弱冠18歳(当時)にして女性アーティストとして史上初めて主要4部門を制覇したことで知られるシンガーのビリー・アイリッシュ。
「自分のすべてを明かしたくない」「体形についてあれこれ言われたくない」という理由から、デビュー以来、ボディラインがわからないダボっとしたオーバーサイズの洋服を好んで身につけてきたビリーだが、今年5月、英Vogueであえて挑発的でセクシーなルックを披露し、ボディポジティブや女性たちを取り巻く社会からの容姿にまつわるプレッシャーなどに言及して称賛された。
昨年、パイオニア部門のトップに選手されたラッパーのメーガン・ジー・スタリオンは、「ビリー・アイリッシュは、声、スタイル、態度のすべてに自分らしさを持った、ユニークな魂の持ち主です。彼女は偽りのない心からの言葉を発する稀有な存在でもあります。彼女は強いだけでなく、色々なことを学びながら成長を続けてます。自分のために立ち上がり、あらゆる女性のために声をあげる女性です」とビリーのことを表している。
シモーネ・バイルズ【タイタン部門】
リオデジャネイロ五輪で4つの金メダルを手にしたほか、世界選手権で史上最多となる通算19個の金メダルを獲得している体操選手のシモーネ・バイルズは、今年7月に開催された東京五輪でも活躍が期待されていたが、体操女子団体の決勝で跳馬の演技後に途中棄権。のちにメンタルヘルスの不調が理由であったことを明かし、その後、出場する予定だった個人総合、跳馬、段違い平行棒、床運動の決勝戦もそれぞれ同様の理由で棄権した。
アメリカ女子体操界で“史上最高”と言われるシモーネが、メンタルヘルスの問題を理由に決勝を棄権したことは世間に大きな衝撃を与えたが、彼女ほどの実力者がオリンピックという大舞台で心の健康を優先したことで、改めてアスリートのメンタルヘルスケアが重要視されることに。
テニス界のレジェンドで推薦人のセリーナ・ウィリアムズは、「彼女が体現しているものは、黒人女性の無限の可能性を真に反映しています。私が若い頃、夢を実現しようとしていた時に、彼女のような存在がいたらどんなによかったでしょう」と彼女に対する尊敬の言葉を口にしている。
ケイト・ウィンスレット【アーティスト部門】
全世界で空前の大ヒットを記録した映画『タイタニック』を筆頭に、映画界で最も栄誉ある賞といわれるアカデミー賞に7度ノミネートされ、『愛を読むひと』で初のアカデミー主演女優賞を受賞した、ハリウッドを代表する演技派俳優のケイト・ウィンスレット。
今年、最新ドラマ『メア・オブ・イーストタウン / ある殺人事件の真実』で約10年ぶりにTVシリーズの主演に臨んだケイトは、その圧巻の演技力で、刑事として母として葛藤と後悔を抱えながらも毎日を懸命に生きる女性メアを等身大で演じきり、第73回エミー賞にて主演女優賞(リミテッド・シリーズ/テレビ映画部門)にノミネートされ、「ケイト・ウィンスレット史上最高の演技」と喝采を浴びた。
本作で製作総指揮も務めたケイトは、今回の選出を受けて、「映画やテレビで女性がどのように描かれるか、その流れを変えることに大きな意味があります。非常にやりがいのある仕事です」とコメントを寄せている。
ヌゴジ・オコンジョイウェアラ【リーダー部門】
ヌゴジ・オコンジョイウェアラ氏はナイジェリアの財務相を経て、今年3月、世界貿易機関(WTO)の事務局長に正式に任命された。WTOの事務局長に女性が就任するのは初で、アフリカ出身者が選出されるのも初めて。
オコンジョイウェアラ氏の功績について、アイコン部門のトップに選出されたヘンリー王子とメーガン妃は「物事を成し遂げる方法を知っている」と述べ、WTOでの舵取り役としての彼女の働きを称賛。
さらに夫妻は、オコンジョイウェアラ氏が、新型コロナウイルスワクチンの分配を巡る富裕国と貧困国の間の供給格差の問題解決に力を入れていることに触れ、「世界にワクチンを打つためには何が必要か?団結、協力、そしてヌコジ・オコンジョイウェアラのようなリーダーです」、「世界人口約80億人のうち、ワクチンを完全に接種しているのは4分の1強です。ワクチンの平等性を達成することは、お互いを思いやる世界的な義務です。彼女のような強力なリーダーに導かれて、すぐにでも達成できることを願っています」とコメントしている。
ジェンスン・フアン【イノベーター部門】
世界有数の半導体メーカー、Nvidia(エヌビディア)の共同設立者で社長兼CEOのジェンスン・フアン氏は、Nvidiaをアメリカで最も価値のある一流企業に育て上げ、グラフィックスと人工知能技術の両方でパイオニア的存在となっている。半導体業界への貢献を評価され、今年11月に行われる授賞式で、半導体業界最高名誉であるロバート・N・ノイス賞を受賞することが決まっている。
人工知能(AI)の権威として知られるAI研究者で計算機科学者のアンドリュー・ン氏は、「まだまだ発展途上のAI技術は、より多くの計算能力に対する飽くなき欲求を生み出しており、フアンのチームは、今後、数十年にわたって技術の進歩を牽引していく立場にあります」と、フアン氏の“イノベーター(革新者)”としてのさらなる活躍に期待を寄せている。
米TIME誌が選出した2020年版「世界で最も影響力のある100人」のリストはこちら。(フロントロウ編集部)