俳優のユマ・サーマンがアメリカのテキサス州で施行された中絶制限法を批判すると同時に、自身も10代の頃に中絶を経験したことを告白した。(フロントロウ編集部)

ユマ・サーマンが中絶制限法に声をあげる

 映画『パルプ・フィクション』や『キル・ビル』シリーズなどの出演作で知られる俳優のユマ・サーマンが、アメリカのテキサス州で施行された中絶制限法を米The Washington Postに寄稿したエッセイを通じて批判した。

 「テキサス州の中絶制限法は、最高裁で議論されることなく発効が認められました。最高裁はイデオロギーの多様性に欠けていることもあり、アメリカ女性の人権危機の舞台となっています。この法律は、経済的に不利な立場にある人たちに対する新たな差別手段であり、多くの場合、実際にはそのパートナーに対するものです。裕福な家庭の女性や子どもたちは、世界中のあらゆる選択肢を持ち、リスクもほとんどありません。この法律が市民と市民を対立させ、不利な立場にある女性を食い物にする自警団を新たに生み出し、養育能力がないから子供を産まないという選択肢を奪い、自分がいつか選ぶかもしれない将来の家族への希望を消してしまうことに、私は悲しみを覚えています」

画像: ユマ・サーマンが中絶制限法に声をあげる

 フロントロウで何度かお伝えしたが、今年9月にテキサス州で施行された中絶制限法は、妊娠6週目以降の人工妊娠中絶を禁止するもので、医療上の緊急事態にかぎり中絶を認めるが、強姦や近親相姦による妊娠を含めてその他の場合の中絶を認めないという州法となっている。また、このテキサス州法では妊娠6週以降の中絶を求める女性や、中絶を行なった医師、さらには当事者の家族や病院の関係者をまったく関係のない“一般市民”が訴える権利「私的訴権」が認められている。

ユマ自身、10代で中絶を経験した

 「私は、テキサス州の過激な中絶制限法の行方を、非常に悲しく、恐怖にも似た気持ちで見守ってきました。今、この法律がすぐに影響を与える弱い立場の女性たちから論争の火を遠ざけるために、私は自分の経験を話します。皆さんは女優の意見に興味がないかもしれませんが、この新たな怒りを受けて、私は彼女たちの立場になって声をあげる責任があると思っています」

 The Washington Postに掲載されたエッセイでこう切り出したユマは、15歳の若さで俳優としてのキャリアをスタートしたばかりの頃、周りは大人だけという厳しい環境に身を置いていた。そんなとき、年上の男性に誤って妊娠させられてしまった彼女は、“子供は産みたいが、安定した家庭環境で育てることができない”という理由から、家族と相談し、中絶することを選んだ。

 悩みに悩みぬいた末の決断だったが、そのことは彼女の心に深い傷を残した。それでも後悔はしていないと話す。

 「この話にはたくさんの痛みがあります。今日までそれは私にとって最も個人的な秘密でした。私は現在51歳で、自慢の3人の子供たちを育てた家からそのことを皆さんにお伝えしています。私の人生は、多くの女性の人生と同じように、傷心、挑戦、喪失、恐怖に満ちた並外れたものでしたが、同時に勇気と思いやりに満ちていました。私は、この世に子供を生む勇気を持てるほど愛し、信頼していた男性とのあいだに、美しい魔法のような子供を授かりました。私は自分が歩んできた道に後悔はありません。自分とは別の選択をした女性に拍手を送り、応援します。10代で行なった中絶は、私の人生で最も困難な決断であり、当時、私はとても苦悩しました。今でも悲しく思っています。しかし、それは私が経験してきた喜びと愛に満ちた人生への道でもありました。妊娠初期に妊娠を継続しないことを選択したことで、私は成長し、自分が望んでいた、そして必要としていた母親になることができました」

 ユマは、「私がこの情報を公開することで得るものは何もなく、むしろ失うもののほうが多いかもしれません」としたうえで、それでも自身の経験を話すことで、今まさに苦しい思いをしている女性たちに「少しでも光が差し込めば…」としている。(フロントロウ編集部)

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