ゲイでありムスリムのハーズ・スレイマンが意見を表明
MCU初の同性カップルが描かれた映画『エターナルズ』が、サウジアラビア、クウェート、カタールで上映禁止になった。これらの国では同性愛が禁止されている。
米THRによると、上映禁止になる前に多数の映像編集の要請がディズニー側に送られたが、ディズニーはこれを拒否したという。
『エターナルズ』の同性カップルは、エターナルズの1人であり発明家のファストスと、ファストスの夫であり建築家のベン。2人の間にはジャックという子供もいる。ファストスを演じたのはブライアン・タイリー・ヘンリーであり、ベンを演じたのはハーズ・スレイマン。ハーズはイスラム教徒の家族を持ち、自身もムスリム。そしてレバノンで生まれ育った。21歳でアメリカへ移住し、2017年にゲイであることを明かした。
そのようなバッググラウンドを持ち、LGBTQ+コミュニティの当事者であるハーズは、『エターナルズ』がいくつかの国で上映禁止になると知った時のディズニーの対応に泣きそうになったと、米Varietyに明かす。
「ディズニーは姿勢を変えず、『ノー。私たちの映画の品位を妥協しない』と言ってくれた。それは、アラブの国々を非常に無知で哀れに見せた」
さらに彼は、同性愛を禁止し、『エターナルズ』を禁止する国々に対して、強く反対の意を表した。
「私はこれらの政府に対する敬意を一切持っていない。これらの政府は、人類だけでなく神にとっても恥ずべき存在であることを世界に示した。願わくば、これがサウジアラビアの人々、クウェートの人々、カタールの人々の反撃のきっかけになればと思う」
アンジェリーナ・ジョリーも苦言
また、『エターナルズ』でセナを演じたアンジェリーナ・ジョリーも、豪News.comのインタビューで、同性カップルが描かれたことに反発する人々に苦言を呈した。
「(そういった反応をする人々のことを)残念に思ってる。そしてマーベルが、それらのシーンをカットすることを拒否したことを誇りに思う。ファストスの家族や、その関係、その愛の美しさを目にすることがない人々がいる世界に、いまだに私たちが生きていることが理解できない。人々がそれに怒り、恐怖を感じ、認めなかったり、敬意を示さなかったりするのは、無知なこと」
アメコミのキャラクターたちは“ヒーロー像”の最頂点にいる存在だが、白人男性に偏ってきた歴史がある。MCUでも、女性やアジア系をはじめとした非白人などが主演に起用され始めたのは近年のこと。LGBTQ+のレプリゼンテーションも少なく、これまで、ファストスとベンのようなゲイの人々や、同性カップルのファミリーが、自分と同じような存在をアメコミヒーローとして見る機会はなかった。だからこそ、アメコミ映画の頂点にいるMCUにてファストスとベンが描かれたことは大きな一歩だった。
米NewNowNextによると、ファストスとベンのキスシーンの撮影では、感動から泣いていたスタッフもいたという。そしてそのインタビューでハーズは、制作陣は「大きな思いやりを持って」制作に臨んでいたと感謝の気持ちを語っていた。さらなる一歩を進めたディズニーは、その信念を曲げることはしなかった。
(フロントロウ編集部)