異例尽くしの2022年ゴールデン・グローブ賞
アカデミー賞に並ぶ主要映画祭の一つとして知られるゴールデン・グローブ賞が現地時間2022年1月9日に開催された。
79年の歴史を持つ授賞式はその年の賞レースの幕開けとなる一大イベントとして毎年多くのセレブが集まり、華やかな式典になることで知られているが、2022年は、テレビ放送なし、無観客、有名セレブプレゼンターもレッドカーペットもなしという異例の事態となった。
その理由は、2021年に噴出した主催団体(HFPA)の人種差別や接待疑惑のため。HFPAでは、ノミネート作品から賄賂をもらい受けることが“公然の秘密”として横行しており、また90人いる会員にも一人も黒人がおらず、偏った選考が行なわれているのではと問題視されていた。
団体は事態の改善に対応したと主張したが、セレブや映画スタジオは冷ややかな反応。ワーナー・メディアやAmazonスタジオ、Netflixを含む100以上の業界団体は、HFPAが抜本的な改革を行わない限り「一緒に仕事はしない」とボイコットを表明し、本アワードを毎年放送している米NBCも、2022年度の授賞式は放送しないと発表し、その態度は授賞式の当日まで変わらなかった。
受賞者はツイッターで発表、しかし誤投の連続…
依頼されたセレブが全員断ったためプレゼンターは関係者が行ない、報道機関もライブストリームもゲストもいない完全プライベートでの開催となったゴールデン・グローブ2022。
受賞作品の発表はツイッターで行なわれたが、この方法がやっつけ仕事だったことは明白で、アカウントは失敗ツイートを連投。
例えば、死と悲劇に満ちたミュージカル映画『ウエスト・サイド・ストーリー』の受賞発表の時には「もし笑いが最高の薬なら、@WestSideMovieはあなたの悩みに対する治療法です」とツイート。結果的にこのツイートは削除され、新たに「音楽が最良の薬なら~」という文に書き換えて再投稿された。
また、映画『tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!』のアンドリュー・ガーフィールドが受賞したときには、「笑顔になるには43の筋肉が必要です。アンドリュー・ガーフィールド、お疲れ様です。そして#ゴールデングローブ賞の男優賞(ミュージカル/コメディ部門)受賞おめでとうございます」と、映画のタイトルを入れるのを忘れて投稿された。
受賞者たちの反応は?
そんな本アワードでは、スティーヴン・スピルバーグ監督の『ウエスト・サイド・ストーリー』とベネディクト・カンバーバッチ主演映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』がそれぞれ最多3冠を達成。さらに、日本から出品された濱口竜介監督による映画『ドライブ・マイ・カー』が非英語作品の作品賞を受賞した。
ゴールデン・グローブ賞の公式ツイッターアカウントは、受賞者や受賞作品のアカウントに@をつけて受賞を知らせたが、発表直後に反応したのは『ドライブ・マイ・カー』の公式アカウントのみ。
�Golden Globe® Awards�
— 映画『ドライブ・マイ・カー』 (@drivemycar_mv) January 10, 2022
非英語映画賞受賞!!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ゴールデン・グローブ賞にて、
『#ドライブ・マイ・カー』が
非英語映画賞(旧・外国語映画賞)を受賞しました�
日本映画としては市川崑監督の『鍵』以来62年ぶりの受賞!快挙です✨✨https://t.co/szVGMlGG4a pic.twitter.com/jO8nIHGweo
3冠となった『パワー・オブ・ザ・ドッグ』の公式や俳優をはじめ、『ドリームプラン』で主演男優賞のウィル・スミス、『Tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!』で主演男優賞のアンドリュー・ガーフィールドをはじめとする多くのセレブや映画会社は一切反応しなかった。
一方、受賞後少し時間をあけてから反応したのは、映画『ウエスト・サイド・ストーリー』や、ドラマ『POSE/ポーズ』の公式や俳優たち。
『ウエスト・サイド・ストーリー』で映画初出演にして初主演のレイチェル・ゼグラーは主演女優賞を獲得し、「私は2019年1月9日に『ウエスト・サイド・ストーリー』のマリア役で出演した。その演技で2022年1月9日にゴールデン・グローブを受賞した。人生はとても奇妙だ」とツイート。
i got cast as maría in west side story on 1/9/19.
— rachel zegler (she/her/hers) (@rachelzegler) January 10, 2022
and i just won a golden globe for that same performance, on 1/9/22.
life is very strange.
同作で助演女優賞を受賞したアリアナ・デボーズは「まだやるべきことはありますが、血と汗と涙と愛情を注いで一生懸命作ったものを見てもらい、認めてもらうというのは、いつでも特別なことです。ありがとうございました」と感謝の意を示した。
There is still work to be done, but when you’ve worked so hard on a project- infused with blood, sweat, tears and love- having the work seen and acknowledged is always going to be special. Thank you�� https://t.co/EjhqyFkuF4
— Ariana DeBose (@ArianaDeBose) January 10, 2022
そして『ウエスト・サイド・ストーリー』の公式アカウントは3冠を祝うツイート。
Congratulations to the cast and crew of Steven Spielberg's #WestSideStory for their 3 #GoldenGlobe Wins including:
— West Side Story (@WestSideMovie) January 10, 2022
•Best Motion Picture, Musical or Comedy
•Best Actress, Musical or Comedy for Rachel Zegler
•Best Supporting Actress for Ariana DeBose pic.twitter.com/IH8gRx4u8z
また、米FXのドラマ『POSE/ポーズ』でドラマ部門の女優賞を受賞したMJ・ロドリゲスは、トランスジェンダー女性として初めてゴールデン・グローブ賞に輝き、歴史を築いたことに大喜び。自身のTikTokで受賞を祝う動画を公開した。そして『POSE/ポーズ』の公式アカウントやリン=マニュエル・ミランダなどの関係者、そしてH&MなどのアパレルブランドもMJの受賞を祝った。
MJ Rodriguez discussing her Golden Globes win. pic.twitter.com/TiFruvbgHV
— Jarohn Johnson (@JarohnJ) January 10, 2022
さらに、アニメ部門を受賞した『ミラベルと魔法だらけの家』の公式アカウントも受賞をお祝い。
¡A celebrar! � A big congratulations to the cast and crew of Disney's #Encanto for their #GoldenGlobe win for Best Picture - Animated! pic.twitter.com/vToJ6qjWdp
— Disney's Encanto (@EncantoMovie) January 10, 2022
その他、受賞作品は下記の通り。(※★がついている作品が受賞)
映画部門
作品賞(ドラマ部門)
『ベルファスト(Belfast)』
『Coda コーダ あいのうた』
『DUNE/デューン 砂の惑星』
『ドリームプラン』
★『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
作品賞(ミュージカル/コメディ部門)
『シラノ』
『ドント・ルック・アップ』
『リコリス・ピザ(LicoricePizza)』
『Tick,tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!』
★『ウエスト・サイド・ストーリー』
監督賞
ケネス・ブラナー『ベルファスト(Belfast)』
★ジェーン・カンピオン『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
マギー・ギレンホール『ロスト・ドーター』
スティーヴン・スピルバーグ『ウエスト・サイド・ストーリー』
ドゥニ・ヴィルヌーヴ『DUNE/デューン 砂の惑星』
主演女優賞(ドラマ部門)
ジェシカ・チャステイン(『タミー・フェイの瞳』)
オリヴィア・コールマン(『ロスト・ドーター』)
★ニコール・キッドマン(『愛すべき夫妻の秘密』)
レディー・ガガ(『ハウス・オブ・グッチ』)
クリステン・スチュワート(『スペンサー(Spencer)』)
主演女優賞(ミュージカル/コメディ部門)
マリオン・コティヤール(『アネット』)
アラナ・ハイム(『リコリス・ピザ(Licorice Pizza)』)
ジェニファー・ローレンス(『ドント・ルック・アップ』)
エマ・ストーン(『クルエラ』)
★レイチェル・ゼグラー(『ウエスト・サイド・ストーリー』)
助演女優賞
カトリーナ・バルフ(『ベルファスト(Belfast)』)
★アリアナ・デボーズ(『ウエスト・サイド・ストーリー』)
キルスティン・ダンスト(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)
アーンジャニュー・エリス(『ドリームプラン』)
ルース・ネッガ(『PASSING-白い黒人-』)
主演男優賞(ドラマ部門)
マハーシャラ・アリ(『SwanSong』)
ハビエル・バルデム(『Beingthe Ricardos』)
ベネディクト・カンバーバッチ(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)
★ウィル・スミス(『ドリームプラン』)
デンゼル・ワシントン(『The Tragedy of Macbeth』)
主演男優賞(ミュージカル/コメディ部門)
レオナルド・ディカプリオ(『ドント・ルック・アップ』)
ピーター・ディンクレイジ(『シラノ』)
★アンドリュー・ガーフィールド(『Tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!』)
クーパー・ホフマン、(『リコリス・ピザ(Licorice Pizza)』)
アンソニー・ラモス(『イン・ザ・ハイツ』)
助演男優賞
ベン・アフレック (『TheTender Bar』)
ジェイミー・ドーナン(『ベルファスト(Belfast)』)
キアラン・ハインズ(『ベルファスト(Belfast)』)
トロイ・コッツァー(『Codaコーダ あいのうた』)
★コディ・スミット=マクフィー(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)
外国語映画賞
『CompartmentNo.6』(フィンランド、ロシア、ドイツ、エストニア)
★『ドライブ・マイ・カー』(日本)
『Hand ofGod -神の手が触れた日-』(イタリア)
『A Hero』(イラン、フランス)
『ParallelMothers』(スペイン)
ドラマ部門
作品賞
『Lupin/ルパン』
『ザ・モーニングショー』
『POSE/ポーズ』
『イカゲーム』
★『サクセッション』シーズン3
作品賞(ミュージカル/コメディ部門)
『THE GREAT 〜エカチェリーナの時々真実の物語〜』
★『Hacks』
『マーダーズ・イン・ビルディング』
『レザベーション・ドックス(Reservation Dogs)』
『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』
作品賞(リミテッドシリーズ/テレビ映画部門)
『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』
『Impeachment:American Crime Story』
『メイドの手帖』
『メア・オブ・イーストタウン / ある殺人事件の真実』
★『地下鉄道 〜自由への旅路』
女優賞
ウゾ・アドゥバ(『イン・トリートメント / セラピスト ブルック・テイラー』)
ジェニファー・アニストン(『ザ・モーニングショー』)
クリスティーン・バランスキー(『グッド・ファイト 華麗なる逆転』)
エリザベス・モス、(『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』)
★MJ・ロドリゲス(『POSE/ポーズ』)
男優賞
ブライアン・コックス(『サクセッション』)
イ・ジョンジェ(『イカゲーム』)
ビリー・ポーター(『POSE/ポーズ』)
★ジェレミー・ストロング(『サクセッション』)
オマール・シー(『Lupin/ルパン』)
女優賞(ミュージカル/コメディ部門)
ハンナ・エインビンダー(『Hacks』)
エル・ファニング(『THEGREAT 〜エカチェリーナの時々真実の物語〜』)
イッサ・レイ(『インセキュア』)
トレイシー・エリス・ロス(『ブラッキッシュ』)
★ジーン・スマート(『Hacks』)
女優賞(リミテッドシリーズ/テレビ映画部門)
ジェシカ・チャステイン(『ある結婚の風景』)
シンシア・エリヴォ(『ジーニアス:アレサ』)
エリザベス・オルセン、(『ワンダヴィジョン』)
マーガレット・クアリー(『メイドの手帖』)
★ケイト・ウィンスレット(『メア・オブ・イーストタウン / ある殺人事件の真実』)
助演女優賞
ジェニファー・クーリッジ(『ホワイト・ロータス / 諸事情だらけのリゾートホテル』)
ケイトリン・デヴァー(『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』)
アンディ・マクダウェル(『メイドの手帖』)
★サラ・スヌーク(『サクセッション』)
ハンナ・ワディンガム(『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』)
男優賞(ミュージカル/コメディ部門)
アンソニー・アンダーソン(『ブラッキッシュ』)
ニコラス・ホルト(『『THEGREAT 〜エカチェリーナの時々真実の物語〜』』)
スティーブ・マーティン(『マーダーズ・イン・ビルディング』)
マーティン・ショート(『マーダーズ・イン・ビルディング』)
★ジェイソン・サダイキス(『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』)
男優賞(リミテッドシリーズ/テレビ映画部門)
ポール・ベタニー(『ワンダヴィジョン』)
オスカー・アイザック(『ある結婚の風景』)
★マイケル・キートン(『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』)
ユアン・マクレガー(『HALSTON/ホルストン』)
タハール・ラヒム(『ザ・サーペント』)
助演男優賞
ビリー・クラダップ(『ザ・モーニングショー』)
キーラン・カルキン(『サクセッション』)
マーク・デュプラス(『ザ・モーニングショー』)
ブレット・ゴールドスタイン(『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』)
★オ・ヨンス(『イカゲーム』)
(フロントロウ編集部)