オスカー像を“逆さに持つ” アカデミー賞で抗議運動が計画
日本時間3月28日(月)に開催される第94回アカデミー賞授賞式で、受賞を果たしたセレブや監督、スタッフらが栄誉の象徴であるオスカー像を逆さに持つ場面が見られるかもしれない。
これは、2021年の授賞式中継が史上最低の視聴率となったことを受け、同アワードを主催する映画芸術科学アカデミーと放送権を持つ米テレビ局ABCが、全部で23部門あるカテゴリーのうち、一般視聴者の関心が低いとされる8部門の受賞発表を割愛すると発表したことに対する無言の抗議。
作曲賞、編集賞、美術賞、音響賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞、短編映画賞、短編ドキュメンタリー賞、短編アニメ賞の受賞発表は事前収録され、本番では短く編集された映像が放送される。
視聴率を優先して、セレブたちが登場する華やかな場面をより多くフィーチャーする代わりに、映画において、いわゆる“縁の下の力持ち”的な役割を果たしているスタッフたちや短編作品をないがしろにするかのような主催側の決定には業界内で反発が起きている。
『ウエスト・サイド・ストーリー』のスティーヴン・スピルバーグ監督、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のジェーン・カンピオン監督、『ナイトメア・アリ―』のギレルモ・デル・トロ監督といったノミネート作品の監督たちも反対しているほか、米Hollywood Reporterによると、この一件が原因でアカデミー会員2名が退任したという。
特殊メイクで実在するテレビ伝道師タミー・フェイに扮した映画『タミー・フェイの瞳』の演技で主演女優賞にノミネートされたジェシカ・チャステインも反対派の1人。
同作の成功は、メイクアップ&ヘアスタイリングチームの協力なくしてはあり得なかったとし、「メイクアップ&ヘアスタイリング部門の受賞発表には何があっても出席したいです。それがレッドカーペットでのPRやABCの放送に参加しないということになるなら、そうするしかないですね」と、授賞式の一部をボイコットする可能性を匂わせた。
映画音響協会のカロル・アーバン会長は、これまでのように大々的に表彰されないことで、事前収録となる8部門の仕事に携わる映画人たちの士気が下がったり、発言力が弱まったりすることを不安視。
「観客や業界の仲間たちの前での生発表ではなくなることにショックを受けています。平等であるはずの映画人コミュニティのみなさんによるサポートの拍手が聞けなくなるなんて、とても悲痛です」と米Deadlineに語り、縁の下の力持ち的な仕事だからこそ、年に1度のアカデミー賞授賞式で日頃の努力が称えられることは重要だと示唆した。
トロフィーの代わりにアカデミーの会員バッジを逆さまに着用しようというアイディアもあるそうで、別の関係者は無言の抗議運動について「組織的に計画されているわけではありませんが、口コミで広がっています。会員バッジを逆さに着けたり、もし受賞したら、オスカー像を逆さに持ったり。実行に移す人もいれば、移さない人もいるでしょう。ただ、そういう話は広がっています」とDeadlineに証言している。
授賞式のレッドカーペットやスピーチでは参加者たちの胸元や手元にも注目してみて。(フロントロウ編集部)