アカデミー賞2022授賞式がまもなく開催!
第94回を迎える2022年のアカデミー賞授賞式がいよいよ日本時間3月28日(月)に開催。2021年はパンデミックの影響により規模を縮小して別会場で行なわれたが、2022年は例年と同じくロサンゼルスにあるドルビーシアターにカムバックする。
日本初の主要3部門ノミネート作となった『ドライブ・マイ・カー』の受賞のゆくえや、ファンに投票により受賞作が決まる新設アワード、ステージでのスペシャルパフォーマンス、そしていろんな“史上初”まで、2022年のアカデミー賞(通称オスカー)の絶対にハズせない見どころをフロントロウが特集!
見どころ①:3年ぶりに司会者復活! ゼレンスキー大統領の出演は実現する?
2019年から3年連続で「ホスト」と呼ばれる司会者を置かず、ノミネート作品の出演者によるパフォーマンスや総勢30名を超えるセレブたちが代わる代わる壇上に上がる形式で授賞式が進行されたが、2022年は久々にホストを立てて番組が展開する。
ホストに抜擢されたのはエイミー・シューマー、ワンダ・サイクス、レジーナ・ホールというコミカルな演技や世相を斬る発言に定評のある“おもしろ姐さん”3人組。
さまざまな時事ネタを用意しているというエイミーは、ロシアによる軍事侵攻の渦中にあるウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領に何らかの形で授賞式に参加してもらいたいと、アカデミー賞のプロデューサーたちに掛け合ったそう。
「オスカーは注目を浴びるイベントです。衛星中継でも事前録画でもいいいので、どうにかしてゼレンスキー大統領に参加してもらう方法はないかとアイディアを出しました」とトーク番組『ザ・ドリュー・バリモア・ショー』内でコメント。決めるのは制作陣だが、授賞式で反戦の話題に触れたいという思いを明らかにしている。
日本を含む世界各国で演説を行なってきたゼレンスキー大統領がアカデミー賞でもメッセージを発信することとなるのか?
これまでにも政治や社会情勢にまつわるメッセージが織り込まれてきたアカデミー賞。受賞者たちのスピーチにも要注目。
見どころ②:『パワー・オブ・ザ・ドッグ』、映画界での女性の評価を更新できる?
2022年のオスカーの目玉作品の1つが、ベネディクト・カンバーバッチ主演で“男らしさ”の呪いを描いたNetflix映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』。ジェーン・カンピオン監督が手がけた同作は、作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞という主要5部門のほか、脚色賞、美術賞、撮影賞、編集賞、音響賞、作曲賞の最多11部門、12ノミネートを果たした。
1994年公開の『ピアノ・レッスン』で監督賞にノミネート歴があるカンピオン監督は、今回のノミネートにより、史上初めて2度監督賞候補となった女性監督に。
もしも受賞を果たせば、2010年『ハート・ロッカー』のキャサリン・ビグロー監督、2021年『ノマドランド』のクロエ・ジャオ監督に続いて、過去93年間のアカデミー賞の歴史上、男性が圧倒的に優位だった監督賞を受賞する3人目の女性になる。
さらに、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』からは、撮影監督のアリ・ウェグナーが撮影賞にノミネート。これまで唯一女性の受賞が一度もない賞として知られるだけに、こちらにも注目が集まる。
見どころ③:ろう者の男性俳優が初の栄冠を手に? 『コーダ あいのうた』
作品賞、脚色賞、助演男優賞など3部門にノミネートした映画『コーダ あいのうた』は耳の聞こえない両親と兄を持つ10代の少女が家族の介助と夢とのあいだで揺れ動く様子を繊細かつ明るく描いた物語。
同作には、実際に聴覚障害とともに生きるキャストたちが多く起用され、主人公の父親を演じたトロイ・コッツァーが、ろう者の男性俳優としては初めて助演男優賞にノミネートした。
ろう者の俳優がアカデミー賞にノミネートを果たすのは、1986年に公開された映画『愛は静けさの中に』で主演女優賞を受賞したマーリー・マトリン以来のこと。
主要部門のなかでも最も重要視される作品賞の受賞も期待される同作。もし実現すれば、ろう者のキャストたちのアンサンブルによる作品としては史上初の快挙となる。
見どころ④:日本史上初!4部門ノミネート『ドライブ・マイ・カー』のゆくえ
日本の映画ファンたちが固唾をのんで見守るのが、村上春樹原作・濱口竜介監督による『ドライブ・マイ・カー』の健闘ぶり。
西島秀俊、三浦透子、岡田将生、霧島れいかといった日本が誇る実力派俳優が共演した同作は、世界各国の映画アワードを総なめに。バラク・オバマ元大統領が毎年選出しているお気に入り映画にも選ばれたほか、海外の批評家たちからも絶賛の嵐となっている。
外国語作品に与えられる国際長編映画賞の最有力候補となっているのはもちろん、日本映画としては初となる作品賞にくわえ、監督賞、脚色賞という主要3部門にもノミネート。
日本アカデミー賞で主演男優賞を受賞し、米アカデミー賞の前哨戦となる全米批評家賞(SAGアワード)でもアジア人として初めて主演男優賞を受賞した西島秀俊は、濱口監督とともにアカデミー賞のレッドカーペットを歩くと伝えられている。舞台裏でのハリウッドセレブたちとの交流にも期待!
見どころ⑤:「ファン・フェイバリット・アワード」の初代受賞作は?
アカデミー賞は、映画芸術科学アカデミーの会員である約1万人の投票によって決まり、まず、ノミネーションリストのためにノミネート投票が行なわれ、その後、ノミネートされた作品だけを対象とする本投票が行なわれるという仕組み。
しかし、2022年はツイッター上での一般投票によって選ばれる「ファン・フェイバリット・アワード」という賞が新たに設けられた。
「#OscarsFanFavorite」というハッシュタグを添えて対象期間内に公開された作品名をつぶやくだけという、世界中どこからでも誰でも参加できる方法で票を募るこの新設部門の有力候補とみられているのが、トム・ホランド&ゼンデイヤ共演のMCU『スパイダーマン』3部作の最終章『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』とシンガーのカミラ・カベロが主演を務めたAmazonプライムのミュージカル映画『シンデレラ』。
若い視聴者を取り込むためのSNSキャンペーンの一環ということもあり、ほかの部門とは毛色の違うポップな作品の受賞が見込まれる。記念すべき初受賞作はどの作品に?
見どころ⑥:ビリー・アイリッシュ、史上最年少での映画音楽3冠がかかる
シンガーのビリー・アイリッシュは、兄のフィネアスとともに手がけた映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の主題歌「No Time To Die(ノー・タイム・トゥ・ダイ)」が歌曲賞にノミネート。
同楽曲は、すでに音楽界最高峰のアワードであるグラミー賞でビジュアルメディア部門の最優秀楽曲賞を獲得。さらに、ゴールデン・グローブ賞の主題歌賞にも輝いており、アカデミー賞での受賞が叶えば、ビリーは映画音楽におけるトリプル・クラウン(3冠)を史上最年少で達成することとなる。
授賞式ではジェームス・ボンドを主人公とする『007』シリーズの50周年を祝う演出も用意されているといい、ビリーもフィネアスと一緒にステージでパフォーマンスを行なう。
見どころ⑦:スペシャルパフォーマンスに胸が高鳴る
ビリーのほかにも豪華アーティストによるスペシャルパフォーマンスが!
映画『キング・リチャード』の主題歌「Be Alive(ビー・アライブ)」で初のアカデミー賞ノミネートを果たしたビヨンセが世界初パフォーマンス。ビヨンセが生パフォーマンスを披露するのはじつに2年ぶり!
そのほかには、ディズニーのミュージカルアニメ『ミラベルと魔法だらけの家』のキャストたちが全米Billboard Hot 100と全英シングルチャートで首位を獲得し、世界中でバイラルヒット中の劇中歌「秘密のブルーノ」を世界初披露。このパフォーマンスにはラテン系人気アーティストのベッキー・Gとルイス・フォンシもコラボ参加する。さらに、ラテン・スターのセバスチャン・ヤトラが挿入歌「Dos Oruguitas (2匹のオルギータス)」を披露する。
映画『フォー・グッド・デイズ』からは主題歌「Somehow You Do(サム・ハウ・ユー・ドゥー)」をカントリー歌手のリーバ・マッキンタイアが披露する。
見どころ⑧:クィア女性初!クリステン・スチュワート&アリアナ・デボーズの受賞に注目
イギリス王室の故ダイアナ元妃を演じた映画『スペンサー』で念願の主演女優賞にノミネートされたクリステン・スチュワートと映画『ウエストサイド・ストーリー』でアニータを演じ、助演女優賞にノミネートされたアリアナ・デボーズは2人とも、クィア(※)であることを公表している女性俳優。
※クィアとは、時代や使う人によって定義が異なる場合があるが、現代において一般的には、”生まれた性と心の性が一致するシスジェンダーであり異性愛者である人”以外のことを指す。
クィアの女性俳優がアカデミー賞の各部門で受賞をしたことはこれまでにもあるが、受賞の時点ではそのことをオープンにしていなかった。そのため、クリステンとアリアナが受賞を果たすとLGBTQ+の歴史に新風を吹かせることになる。
見どころ⑨: ウィル・スミス vs デンゼル・ワシントン再び 黒人俳優の受賞に熱視線
テニス界のレジェンド姉妹セリーナ&ヴィーナス・ウィリアムズを育てた父リチャードに焦点を当てた映画『キング・リチャード』で3度目の主演男優賞ノミネートを果たしたウィル・スミスと、ウィリアム・シェイクスピアの戯曲『マクベス』を原作とした白黒映画『マクベス』で同部門に7度目のノミネートを果たし、2度目の受賞が期待されるデンゼル・ワシントンには不思議な因縁が。
映画ファンなら知っているかもしれないが、じつは、2人は2001年にも主演男優賞を争った経緯がある。ウィルは伝説のボクサー、モハメド・アリを演じた伝記映画『ALI アリ』で同部門にノミネートされたが、この時受賞を果たしたのは『トレーニングデイ』に主演したデンゼルだった。
ちなみにアカデミー賞で主演男優賞を授与された黒人男性俳優はデンゼル、シドニー・ポワチエ、フォレスト・ウィテカー、ジェイミー・フォックスの4人だけ。ウィルが受賞すれば史上5人目となる。
2022年の主演男優賞にはウィルとデンゼルのほかにも、ハビエル・バルデム、ベネディクト・カンバーバッチ、アンドリュー・ガーフィールドといった強豪がずらり。栄冠は誰の手に?
見どころ⑩:『ウエスト・サイド・ストーリー』、“2度目”の主要部門受賞の可能性
作品賞&監督賞を含む7部門にノミネートしたスティーブン・スピルバーグ監督による映画『ウエスト・サイド・ストーリー』は、1957年に初上演されたブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド物語』を題材にした2作目の長編映画。
1961年に公開された第1作目の映画『ウエスト・サイド物語』はアカデミー賞で作品賞・監督賞・助演女優賞・助演男優賞含む10部門で受賞しており、もしも2021年版が大賞である作品賞か監督賞、もしくは両方を受賞すれば、同タイトルでは2度目の快挙ということに。映画史に残るレアケースとなる。
ちなみに、『ウエスト・サイド・ストーリー』の衣装を手がけたポール・タゼウェルは黒人男性として初めて衣装デザイン賞にノミネートを果たした。
見どころ⑪:リン・マニュエル=ミランダ、EGOT達成に王手!
ミュージカル『ハミルトン』、映画『イン・ザ・ハイツ』、ディズニーアニメ『モアナと伝説の海』で、これまでにエミー賞を2回、トニー賞を3回、グラミー賞を3回受賞しているヒットメーカーのリン・マニュエル=ミランダは、『ミラベルと魔法だらけの家』のために書き下ろした劇中歌「Dos Oruguitas」がアカデミー賞の歌曲賞にノミネートされたことによりEGOTに王手!
「EGOT」とは、テレビ界最高峰のアワードであるエミー賞、音楽界最高峰のグラミー賞、映画界最高峰のアカデミー賞、演劇&ミュージカル作品の最高峰のトニー賞という米ショービズ界において最も栄誉ある4大アワードを制覇することをいう。それぞれのアワードの頭文字(※)をとって「EGOT」と呼ばれるこの偉業を達成した人物は、現時点で16人しかいない。
※Eはエミー賞、Gはグラミー賞、Oはオスカー(アカデミー賞)、Tがトニー賞
見どころ⑫:『スパイダーマン』俳優たちがこぞってノミネート
第94回のアカデミー賞には、偶然にも、『スパイダーマン』関連作品に出演した俳優たちが続々ノミネート。
サム・ライミ監督による『スパイダーマン』3部作でメリー・ジェーンを演じたキルスティン・ダンストは、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』での演技が評価され助演女優賞に、『アメイジング・スパイダーマン』シリーズでスパイダーマンを演じたアンドリュー・ガーフィールドは『tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!』で主演男優賞に、『スパイダーマン』3部作およびMCU『スパイダーマン』3部作でJ・ジョナ・ジェイムソンを演じたJ・K・シモンズは、『愛すべき夫妻の秘密』で助演男優賞に、そして、シリーズ最新作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でドクター・ストレンジを演じたベネディクト・カンバーバッチは、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』の演技により主演男優賞にノミネートされている。
この件に関して、アンドリューは「すごく面白いですよね? キルスティンのことが嬉しいです。『パワー・オブ・ザ・ドッグ』における彼女の演技は誰にも劣らないと思います。そしてベネディクトも。そしてもちろん、J・K。大ファンなんです。(スパイダーマン俳優たちのノミネートは)とても、とても面白い」と米EWにコメントしている。授賞式の会場では『スパイダーマン』俳優4人が一緒にいる姿を見られる可能性も?
見どころ⑬:「カップルそろって受賞」が2組実現するかも!
キルステンと婚約者のジェシー・プレモンスは『パワー・オブ・ザ・ドッグ』で夫婦役を演じており、ジェシーも同作で助演男優賞にノミネートされている。挙式こそしていないものの、2児をもうけており、実生活ではおたがいを夫妻だと認識しているというキルステンとジェシーが、そろって助演賞を獲る可能性は充分アリ。
そして、今回のアカデミー賞にそろってノミネートされているカップルはもう1組。それは、『愛すべき夫妻の秘密』で主演男優賞にノミネートされたハビエル・バルデムと『パラレル・マザーズ(英題)』で主演女優賞にノミネートされたペネロペ・クルス。こちらも夫婦で主演賞をさらっていく可能性はゼロではない。
見どころ⑭:プレゼンターがめちゃくちゃ豪華!
ノミニーやパフォーマーを紹介するプレゼンターには、レディー・ガガやラミ・マレック、ゾーイ・クラヴィッツ、ミラ・クニス、ケヴィン・コスナー、ジェイミー・リー・カーティス、サミュエル・L・ジャクソン、ウディ・ハレルソン、シム・リウ、ウマ・サーマン、ジョン・トラボルタ、ルピータ・ニョンゴ、ショーン・メンデス、ダニエル・カルーヤ、エリオット・ペイジ、H.E.R.といった多彩な役者やアーティストがずらり。
昨年は授賞式をパスしたアンソニー・ホプキンスにくわえ、スポーツ界からは北京オリンピックをもって現役引退を表明したスノーボード選手のショーン・ホワイト、3月上旬に大腿骨を骨折したことが報じられたスケートボード界のレジェンド、トニー・ホーク、さらに、サーフィン界の偉人ケリー・スレーターという横乗り系スポーツの御三家もプレゼンターとして招かれている。
アメリカ国内で新型コロナウイルスのワクチンが普及し、感染者数がピークアウトするなか、アカデミー賞授賞式の出席条件も前年から変化。ノミニーとゲストはワクチン接種証明または未接種の正当な理由を証明する物の提示およびPCR検査で2回陰性となることが必須だが、プレゼンターとパフォーマーは検査による陰性証明だけでワクチン接種証明などは不要。ステージ付近の観客はソーシャルディスタンスを保ったうえでマスク非着用OKと、無観客・参加者は全員マスク着用の義務があった前年と比べるとだいぶ緩和されている。
レッドカーペットおよび授賞式の模様は、日本ではWOWOWが午前7:30より独占生中継。フロントロウでも会場の模様やファッションチェックやヘアメイク、受賞スピーチの和訳、舞台裏でのセレブたちの交流の様子などをお届けするので、お見逃しなく! (フロントロウ編集部)
※記事公開後、パフォーマーの追加発表があったため情報を更新しました。