マッツ・ミケルセンが強い拒否感を示すこと
映画『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』で、ジョニー・デップに代わりグリンデルバルドを演じ、すでにファンの頭のなかにはジョニーによるグリンデルバルドのイメージがあるという状況にもかかわらず、闇の魔法使いとしてぴったりすぎると話題のマッツ・ミケルセン。
彼はこれまでにも、ドラマ『ハンニバル』ではかの有名な猟奇殺人鬼ハンニバル・レクターを、映画『007 カジノ・ロワイヤル』では悪役ル・シッフルを演じてきており、カリスマ性のあるダークなキャラクターを演じることで非常に高い人気を獲得してきた。
そんな彼だが、演技における“あること”については非常に批判的な立場であることを明確にした。英GQのインタビューで彼が「くそくらえ」だと話したのは、メゾット演技法。
演技法と演技力は関係ない?
メソッド演技とは、アメリカの演出家であるリー・ストラスバーグが役者の訓練のために考案した演技法で、演じるキャラクターに深く入りこんで演じる方法。
米Voxによると、2018年までにアカデミー賞主演女優賞・主演男優賞を受賞した132人中、メゾット演技法の訓練を受けていたり、取り入れていたりした俳優は92人にのぼる。クリストファー・ノーラン監督による『ダークナイト』でジョーカーを演じたヒース・レジャーもそのうちの1人で、彼の死は役にのめり込みすぎたからではないのかとまで言われた(※これはヒースの姉が否定)。
この方法が合う俳優にとっては演技に深みを出すのに役立つ演技法であることは確かだと言えるが、マッツはかなり否定的にコメントした。
「役の準備では、狂気のなかに落ちることもできます。しかし、もしそれが最低な映画だったら?何を成し遂げたと思うのでしょう?キャラクターを捨てなかったことに私が感動すると思いますか?初めから捨てるべきだったのに!連続殺人鬼にはどう準備するのでしょう?2年かけて調べるのでしょうか?」
彼の発言は、メゾット演技法に取り組む俳優を否定するものではない。彼は、メゾット演技法を取り入れていることで有名であり、アカデミー賞主演男優賞を史上唯一の3回受賞しているダニエル・デイ=ルイスの名を出し、彼の演技力を称賛したうえで、こんな思いを話した。
「つねにキャラクターを分析しながら、日々の時間を過ごしたい。私はタバコを吸っている?これは2020年のもので、1870年のものではありません。それに耐えれます?ただ気取っているんですよ。ダニエル・デイ=ルイスは素晴らしい俳優ですが、それ(演技法)とはまったく関係はありません。メディアが、『オーマイゴッド。彼はそれに真剣だ。だからこそ彼は素晴らしいのだ。彼に賞を与えよう』と言う。そうすると、それが話題となり、みんなが知るところとなる。そしてそれはトピックになる」
このテーマは答えがあるものではないが、クセのあるキャラクターたちを見事に演じてきたマッツが、役に入り込む演技法に対して「くそくらえ」「気取っている」と言い、ここまで否定感をあらわにするのは意外かもしれない。彼の演技の哲学は別のところにあるのだろう。
(フロントロウ編集部)