23歳の女性看護師がウクライナで両脚を失う
ウクライナのリシチャンシクに住んでいた23歳の小児科の看護師であるオクサナさんは、当時の恋人であるヴィクトルさんや友人とともに、地域の高齢者のために支援物資を集めに出かけ、その帰り道で地雷を踏んだ。
英The Guardianにオクサナさんとヴィクトルさんが話したところによると、彼女は当時、そう遠くないところにミサイルを見つけ、ヴィクトルさんのほうを振り向き、「ハニー。見て」と叫んだという。そしてその時、地雷を踏んだ彼女は空中へ吹っ飛ばされた。
米ロイターの取材でオクサナさんは、「顔から地面に倒れ込みました。頭の中には尋常でない音が響いていた。仰向けになり、服を破き脱ぎ始めました。空気が足りなかったので、そのほうが息がしやすいと思ったんです」と、戦地での当時の状況を振り返る。そしてその時点で、彼女の脚はもうなかったという。
しかし、その状況であっても、周囲に指示をして現場を回したのは、他でもないオクサナさん本人だった。ヴィクトルさんは、「もしあれがオクサナでなければ、どうなっていたか分かりません。彼女はとても強いのです。彼女は意識を失いませんでした。僕たちに行動の指示を出したのはオクサナでした」と明かす。
しかし、戦地では救急車も来ない。オクサナさんに言われ、救急に電話をしたヴィクトルさんだったが、地雷を踏む懸念がなくなるまで救急車はそのエリアに行けないと伝えられたという。そこでオクサナさんの義父に連絡をし、救急車の元まで彼女を運ぶことになったそう。さらに、救急車に乗っていた救急隊員は経験の浅い若い隊員だったそうで、看護師であるオクサナさんはその隊員にも指示を出して助けたそう。
その後彼女は、リシチャンシクから西に約320キロ離れたドニプロにある病院に転院した。
絶望に襲われる日々
オクサナさんは地雷を踏んだことにより、両脚と、左手の4本の指を失った。ケガを負ってなお周囲に指示を出すリーダーシップを見せた彼女だが、その後は絶望し、死にたいと叫ぶこともあったとヴィクトルさんは明かす。
5歳と7歳の子を持つオクサナさん。子供たちは祖父母のもとに避難しているそうだが、「生きたくなかった…。そんな人生は生きたくなかった。私には2人の子供がいます。こんな自分を子供たちに見てほしくなかった。家族の重荷になりたくなかった」と考えていたという。
そんななかでも彼女が精神的にも回復できたのは、医療従事者たちのサポートや、オンライン上での励ましの言葉があったそう。ヴィクトルさんは英The Guardianに、「彼女は非常に塞ぎこんでいました。生きたくないと叫んでいました。しかしドニプロでは素晴らしいリハビリの医師たちがいて、オクサナを励ましてくれました。また、TikTokもありました。彼女はいくつかの動画を投稿し始めて、多くのポジティブなコメントが寄せられたので、彼女のやる気に繋がったんです」と話した。
2人の結婚を病院のスタッフも祝福
そして、そこでオクサナさんとヴィクトルさんが、病院で踊ったウェディングダンスの動画が注目を集めた。オクサナさんは3月27日に両脚と4本の指を失った。ヴィクトルさんは4月27日に彼女にプロポーズし、その翌日に結婚した。
「ダンスは本当にサプライズでした」と、オクサナさんは明かす。2人が登記所から戻ってくると、病院のボランティアである2人がドレスとノートパソコンを用意してくれていたという。
オクサナさんは「純粋な喜びと幸福でした」と振り返るが、「しかし、ふと気づくのです。これは私が望んでいたファーストダンスではないと」と話し、2人のダンスの動画は決して単に感動的なものではないという事実を明確にした。
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オクサナさんは現在、義足を得てリハビリに励むためにドイツやEU加盟国へ行くことを望んでいるという。また、医療の現場でキャリアを続けていくつもりだという。
(フロントロウ編集部)