ジョニー・デップとアンバー・ハードの裁判後のキャリアはどうなる? ハリウッドのスキャンダル専門家たちが見解。約1カ月半におよんだ裁判の最終弁論のハイライトも紹介。(フロントロウ編集部)

ジョニー・デップとアンバー・ハードの裁判の最終弁論へ

 映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』などで知られる俳優のジョニー・デップが元妻で俳優のアンバー・ハードを名誉棄損で訴えた裁判が、米現地時間の5月27日金曜日、ついに最終弁論を迎えた。

 4月11日の開廷以来、フロントロウでも連日お伝えしてきたが、ジョニーは、2018年にアンバーが米Washington Postに寄稿した論説のなかで、名前こそ出さなかったもののジョニーであることがわかるかたちで、彼からDVを受けたと告発したことが名誉毀損にあたるとして、5,000万ドル(約64億円)の損害賠償を求めてアンバーを提訴。一方のアンバーも、ジョニーが彼女のキャリアと評判を傷つけるために仕組んだ中傷キャンペーンによって甚大な影響を受けたとして、1億ドル(約130億円)を求めて逆提訴している。

 6週にもおよんだ裁判の最終日は、ジョニーとアンバーそれぞれの弁護士たちがこれまでの主張をあらためて整理した。

ジョニー側の最終弁論ハイライト

画像: ジョニー側の最終弁論ハイライト

 ジョニーを担当するカミーユ・ヴァスケス弁護士は、DVの被害を受けていたのはむしろ自分であり、これまでアンバーを含む女性たちに対して暴力を振るったことは一度たりとも無いというジョニーの主張を後押しし、「この法廷には加害者がいます。しかし、それはデップさんではありません。この法廷にはDVの被害者がいます。しかし、それはハードさんではありません。この裁判で提示された証拠は、ハードさんが加害者であり、デップさんが被害者であることを明らかにしています」とコメント。

 離婚を切り出されたアンバーがジョニーへの執着から逆上し、2016年に接近禁止令を申請し、ジョニーに殴られたとするアザの写真をメディアに提供したとし、その2年後に書かれた論説は、当時アンバーが出演する映画『アクアマン』の公開に合わせて、注目度を上げるため、ハリウッドで活性化していた「#MeToo」に便乗して寄稿されたものだと主張した。

 もう1人の弁護人であるベン・チュウ弁護士は、いわれのないDV疑惑のおかげでジョニーの名前に永遠に傷がついてしまったとし、「彼の名前と評判、キャリアを返してください」、「デップさんにとって、この裁判はお金の問題でも、ハードさんに罰を与えるためのものでもありません。この裁判はデップさんが名声を取り戻し、これまでの6年間ずっと閉じ込められてきた、(DV疑惑という)牢獄から解放されるためのものです」「この裁判は、デップさんの子どもたち、リリー・ローズとジャックに、真実とは戦う価値があるものだということを証明するためのものでもあります」と、感情が高ぶった様子で声を震わせながら弁論。弁論後には、ジョニーがチュウ弁護人の肩をギュッと抱き、お礼を述べる様子が中継を視聴していたSNSユーザーたちの間で話題となった。

アンバー側の最終弁論ハイライト

画像: アンバー側の最終弁論ハイライト

 一方、アンバーを担当するベン・ロッテンボーン弁護士は、DVや性的暴行の被害を主張しているアンバーを法廷で“ウソつき”扱いすることが、世間に与える影響の大きさを考えてみて欲しいと訴え、ジョニー側がジョニーがアンバーに暴力を振るった証拠は無いと主張していることに対し「写真を撮らなかったからといって、(DVが)起こらなかったということにはなりません。写真を撮ったとしてもフェイクだと言われるなんて。友人に被害について話さなかったからといって、ウソをついていることにはなりません。友人に話したとして、彼らもでっち上げのグルだと言われるなんて。治療を受けなかったから、ケガは負っていない? 治療を受けたら、今度はクレイジーだと言われる」などとコメントし、DVサバイバーだと主張するアンバーを信用しないことで、ほかのサバイバーたちが被害を告発しにくい土壌を築いてしまうと主張した。

 さらに、アンバーによる論説が罪に問われることは、アメリカ合衆国憲法修正第1条によって保証された表現の自由を脅かすものだとも指摘した。

 アンバー側のエレイン・ブレデホフト弁護士は今回の裁判自体がDV被害者であると主張するアンバーにとっては「精神的虐待である」とコメントし、アンバーは金銭目的でジョニーに倍額を求めて逆提訴したわけではなく、これまで耐えてきた苦痛に対する慰謝料の意味も込めて訴え返したと主張した。


ハリウッドのスキャンダル専門家は裁判をどう見る?

 どちらも身の潔白を主張しているジョニーとアンバーだが、かつては世界中の人々にとって憧れのハリウッドスターカップルだったはずの2人のイメージに、2016年から続く泥沼離婚劇が重く暗い影を落としたことは明らか。

 2020年に行なわれたイギリスでの裁判では、ジョニー側が敗訴し、それによりジョニーは映画『ファンタスティック・ビースト』シリーズからの降板を余儀なくされた。アンバーに関しても、彼女にとっては出世作となるはずだったMCU映画『アクアマン』の続編での出番が大幅に削られたと主張。これに関しては、ジョニーとの裁判とは無関係であり、主演のジェイソン・モモアとのケミストリーが感じられなかったことや、もともと同作のストーリーにはアンバーが演じるキャラクターのスクリーンタイムが多かったわけではないとワーナー・ブラザースの重役が証言しているが、『アクアマン』以降、アンバーは出演作が決まっていない。

画像1: ハリウッドのスキャンダル専門家は裁判をどう見る?

 裁判の勝敗は7人の陪審員たちの手に委ねられ、現地時間の5月31日以降に判決が出るものとみられているが、ハリウッドにおけるスキャンダル専門家たちはジョニーとアンバーの世間での受け入れられ方は明暗がはっきりと分かれているように見えると見解を語る。

 匿名のあるクライシスPRエキスパートは、裁判中のSNSなどにおける世間の反応を分析したうえで、裁判がどういった結果になっても、世論を味方につけたのはジョニーのほうであると米Entertainment Weeklyにコメントしている。

 「私たちのビジネスにおいて重要なのは、世論という法廷の意見だけなのです」。

 この専門家は、ジョニー側の証人として、たくさんの人々が証言台に立ったこと、とくにジョニーとの交際中に階段から突き落とされたことがあるという疑惑の張本人である元恋人でモデルのケイト・モスが、“そんな事実は無い”ときっぱりと否定したことも大きかったと話す。

画像2: ハリウッドのスキャンダル専門家は裁判をどう見る?

 ジョニーは今回の裁判を通して、少なくとも自分側の真実を語る機会を得ることができたこと、さらに、アンバーが”信用ならない人物かもしれない”という疑念を世間に抱かせることができたことは有意義だったはずだと分析し、彼が抱えるさまざまな問題は露呈したものの、裁判所の外で連日行なわれたジョニーのファンたちによる抗議運動などに着目した「誰かしらは何かしらの方法で彼とビジネスをするでしょう」と、これまで通りとは行かずとも、ジョニーが俳優としての仕事を続けていける可能性は充分にあると私見を語った。

画像3: ハリウッドのスキャンダル専門家は裁判をどう見る?

 アンバーに関しては、実際の裁判の勝敗により、今後のキャリアが大きく左右されるだろうと、もう1人の専門家は分析する。「もし裁判に勝てば、彼女の主張が正しかったことが立証されるわけで、そうなると彼女を起用しない手はないでしょう」。

 陪審員たちは、果たしてどんな判決を下すのか?(フロントロウ編集部)

※こちらの記事は、公開後に一部表現を訂正しました。

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