『生きる』や『ラブ・アクチュアリー』などに出演してきたビル・ナイ
イギリスを代表する俳優の1人であるビル・ナイは、1949年12月12日生まれ。70年代に舞台俳優としてキャリアをスタートした彼は、その後、映画『ラブ・アクチュアリー』の落ちぶれロック歌手のビリーや『パイレーツ・オブ・カリビアン』のデイヴィ・ジョーンズ、『アバウト・タイム』の父ジェームズなどの役どころで世界に知られるようになった。
彼の高い演技力は、映画に関する知識が基礎にあり、カズオ・イシグロやプロデューサーのローナ・マクドゥーガルなどが集まった時には、映画に関するトリビアクイズで盛り上がるという。そんな会話のなかからプロジェクトが始まることもあり、黒澤明監督による『生きる』のイギリス版リメイク『生きる LIVING』は、ビルが主演、イシグロが脚本を務めた。
また、彼の表現に深みがある根底には、これまでに描かれてきた男性像や女性像への疑問がある。英The Guardianで彼は2020年に71歳で、このような思いを語っている。
「正直、どのバージョンの男性像も好きではない。そういった男性らしさの表現が、魅力的だと感じたことは1度もない。若い頃は、男性グループの中では静かにしていたものです。自分は他の男性とは違うと感じていたから。男性は感受性が少ないと言われるけど、どうなんでしょうね。私は女性になったことはない。どうやってそんなことを測れるのでしょう?私は、自分には感情があると知っている。そして、女性は(男性より)弱いというのは、男性によるプロパガンダであることも知っている。さらなるでたらめです」
そして彼は、社会全体の在り方についても、「男性は何世紀にもわたって、すべての物事で責任から免れてきた。完全に頭がおかしい。私達が性の政治に取り組まないかぎり、世界はきちんとは動かないだろう。いまだ文明の発展を止めようとする勢力がある。そしてその勢力は今、非常にその活動に力を入れている。みんなが2020年の時代にまで残ると思っていなかった中世の産物です」と語った。
ビル・ナイの指が曲がっている理由
そんな彼は、カメラにユニークなポーズや表情を向けてくれる俳優。何歳でもチャーミングさが消えないのも彼の魅力の1つ。
ピースサインは彼の定番ポーズだが、それによって、彼の指が少し曲がっていることに気がつくファンは多いだろう。彼に指が曲がるデュピュイトラン拘縮の症状が出始めたのは20代の頃だったそうで、手術を受けるべきだったとは思っているという。英The Guardianのインタビューで彼は、痛みはまったくないと明かしたうえで、人との握手はマナー違反とされる左手で行なうので「私の握手は気味が悪いということです」とシニカルに語った。
ファンと交流するのは好きなビル。
ビル・ナイの交友関係、イアン・マッケランからアナ・ウィンターまで
50年近いキャリアを持つ彼は、交友関係も広い。ジュディ・デンチからイアン・マッケラン、スーザン・サランドン、マーク・ストロングといった実力派俳優たちだけでなく、米Vogueの名物編集長アナ・ウィンターやファッションデザイナーのポール・スミスとも親しいのは、スタイリッシュなスタイルを持つ彼らしい。
父親的立ち位置で人気のビル・ナイ
ビルみたいなお父さんがいたら、パパっ子になりそうと思うファンも多いはず。実際、彼は多くの若手俳優にとって良い父親的な面があるよう。『生きる』で彼と共演したアレックス・シャープは、英The Guardianからビルについて聞かれた際に1,000文字を超える返答をしたという。そのなかで彼は、「ビルが良い人だと言うのは、あまりに控えめな表現です」「彼は僕の私生活も大きく助けてくれました」と述べた。
『アバウト・タイム』でドーナル・グリーソンが演じたティムと、ビルによるティムの父ジェームズの親子関係は、多くの観客の心を打った。
『ラブ・アクチュアリー』で共演シーンはなかったが、仲が良いアンドリュー・リンカーンとビル。
アニメーション映画『ATOM』でアトムの声を演じたフレディ・ハイモアと、お茶の水博士の声を演じたビル。
やんちゃな2人の息子といるように見えてくる『アレックス・ライダー』のビルとアレックス・ペティファー、ユアン・マクレガー。
ビルといえばスリー・フレーバー・コルネット3部作にも出演しているため、サイモン・ペッグやニック・フロストとも仲良し。
孫からシルバニアファミリーのウサギを託されるおじいちゃん
そんなビルは、最高のおじいちゃんでもある。2023年アカデミー賞授賞式では、血まみれのシルバニアファミリーのウサギを同伴したことが話題になったが、ウサギは孫から託されたものだったことが明らかに。「孫娘に予定が増えたため、私はウサギのシッターを任されるようになりました。ホテルの部屋に彼女を放置しておく覚悟はなかった。危険はあまりにも大きい。私が行くところには彼女も連れて行くんです」とのこと。
俳優としても人としても魅力が多いビル。これから彼が演じていく様々な性格のキャラクターが早くみたい。
(フロントロウ編集部)