『TAR/ター』衝撃のラスト「それを招いた本当の理由」
ケイト・ブランシェットによる映画史をとどろかす怪演が話題のトッド・フィールド監督映画『TAR/ター』が5月12日に公開される。
本年度アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演女優賞など主要6部門にノミネートし、第80回ゴールデン・グローブ賞主演女優賞(ドラマ部門)、第79回ヴェネチア国際映画祭女優賞ほか、世界の映画祭でも絶賛され、さらには、『シンドラーのリスト』『LAコンフィデンシャル』『ソーシャル・ネットワーク』に続く史上4作目の主要批評家協会賞(ニューヨーク映画批評家協会賞/ロサンゼルス映画批評家協会賞/ロンドン映画批評家協会賞/全米映画批評家協会)最優秀作品賞を制覇するなど、映画賞を席捲する勢いの『TAR/ター』。
この度、主演のケイト・ブランシェットが、パートナーを演じたニーナ・ホスとともに本作への想いや演じるにあたっての苦労や、作品の神髄に迫る深い考察を語った2ショットインタビュー映像が解禁となった。
劇中のピアノ演奏シーンも全て自身で演じきったケイト。実は、子ども時代に「あなたはピアニストではないと思うの。俳優だと思うわ」と、いまや世界に名だたる名優の1人でもあるケイトが、ピアノレッスンの先生から告げられていた“予言”があった事を明かす。
そしてその先生は「私にとってメンターのような存在でした」と言い、本撮影を通して「そういった子ども時代の思い出が蘇ってきたの、本作には全く関係ないけど」と笑顔を見せる。
ターが指揮するベルリン・フィルのバイオリニストであり、コンサート・マスターでもある“シャロン”を演じたニーナ。彼女は、オーケストラの仕組みについてほとんど知識がなかったため苦労したという。
「コンサートマスターの地位についてそれが何を意味するのか」「女性が実際にその地位に就くというのがいかに稀であるか」という事を、実際のコンサートマスターとともに「(オーケストラの)一同どう話すのか?望むものをどう引き出すのか?」ということまで綿密に対話して挑んだ事を振り返った。
続いて、圧倒的な権力者であり、天才的な芸術家ターを演じるにあたって「一番重要視したことは?」と問われたケイト。
「彼女は頂点を極めようとしているのです」そして「アーティストであり続ける唯一の方法は落ちる事だと悟るのでしょう。次の頂点に行くためには駆け下りるしかない」「だから自分が次にやるべき事への恐怖と不安があり、結局それが愛するものを破壊してしまったのかもしれない」と述懐。
権威や権力、そして愛情を失う事への恐れがターの破滅を生み出したかもしれないこと、そして「権力を持つ立場まで昇りつめると、そこは魅惑的で人の心を引きつける場所なのです」「だからこそ世界中のクリエイティブな人たちだけでなく、政治家も手放す事が出来ない」と述べた。.
最後に、これから映画を鑑賞する日本の観客へ向けて、ケイトは「どうか本作を映画館で心を開いて観ていただけますように、この映画は文化を超え時代を超えて語りかける作品だと思うのです」と述べ、ニーナは「大いにチャレンジングな体験をしていただきたいです」と、それぞれの想いを寄せた。
『TAR/ター』は監督が「ケイト・ブランシェットに向けて書いた」作品
長編映画『イン・ザ・ベッドルーム』と『リトル・チルドレン』で、2作ともにアカデミー賞脚色賞にノミネートされたフィールド監督は、その鋭敏な表現力によって、絶対的な権力を振りかざす天才指揮者リディア・ターの物語を「唯一無二のアーティスト、ケイト・ブランシェットに向けて書いた」と明かしている。フィールド監督にとって16年ぶりとなる、全世界熱望の最新作となった本作では、第95回アカデミー賞脚本賞を3作品連続でノミネートを果たしたほか、作品賞・監督賞でも初ノミネートされたことも話題に。
脇を固める共演者は『燃ゆる女の肖像』のノエミ・メルラン、『あの日のように抱きしめて』のニーナ・ホス、『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』 のジュリアン・グローヴァ―、『キングスマン』のマーク・ストロングら、いずれも実力派揃い。
音楽は『ジョーカー』でアカデミー賞作曲賞を受賞した気鋭のチェリストであり、作曲家のヒドゥル・グドナドッティルが担当、全編を美しいスコアで彩っている。
⾳楽界の頂点に上りつめたベルリンフィル初の⾸席⼥性指揮者ター。芸術と狂気がせめぎ合い、少しずつ⼼の闇が侵食していく─。衝撃を超える圧巻のラストに⽬を凝らせ。トッド・フィールド監督とケイト・ブランシェットが放つ、映画『TAR/ター』は5⽉12⽇より⽇本公開。(フロントロウ編集部)