ストライキの原因は?
アメリカの俳優・アナウンサー・俳優・声優・ネットインフルエンサーなど16万人が加入するSAG-AFTRAと、ネットフリックス、パラマウント、ディズニー、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーなどが加入するAMPTPは2023年6月に契約更新期限を迎えた。
6月から新契約の交渉が続けられていたが、度重なる期限延長をしても条件合意にいたらず、“交渉決裂”でストライキ突入となった。
SAG-AFTRAの要求は?
SAG-AFTRAは新契約にあたり、最低賃金率の引き上げや、福利厚生制度への拠出増、インフレなどによる収入減からの保護など複数のことを求めているが、最も焦点が当たっているのは、再放送料の増額とAIの規制。
パフォーマーたちはテレビやラジオ等で作品が再び使用されるたびに収益を得てきたが、ストリーミングサービスの台頭でその部分の収入が減少。そこで今回、作品の視聴回数に応じたストリーミング報酬の増額や、視聴回数がとくに高い作品に対するボーナスの支払いを求めている。
AIについては、制作現場にどのように導入していくのか明言するようスタジオ側に要求。声や肖像や演技の無断使用からパフォーマーたちを守るための規制強化と保護を求めている。
ストライキ中は何が禁止される?
ストライキの開始は太平洋時間7月14日0:01(日本時間7月14日16:00)から。まずはネットフリックス社前でデモが行なわれ、その後、パラマウント、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー、ディズニー社の前へと巡回していくよう。
ストライキ期間中は、オンカメラの仕事(演技、歌、ダンス、スタント、人間劇、モーション・キャプチャー等)のほか、オフカメラの仕事(ナレーション、声優、予告編の撮影等)と、プロモーション活動(作品PRを目的としたインタビュー、エキスポ、プレミア、ジャンケット、ポッドキャスト出演、SNS投稿等)が禁止されている。また、ボディダブル、フィッティング、メイクテスト、リハーサル、オーディションなど、とにかく、映画・テレビ・ラジオ製作に関わる作業が禁止となる。
つまりストライキが終わるまでは、組合に加入しているパフォーマーたちの来日やインタビューの中止の発表が続くとみられる。また、7月20日から始まるサンディエゴ・コミコンも出演者がのきなみ不在になるとみられる。AMPTPとは関係ない製作者の作品への参加は禁じられていないため、そういった作品の製作・PR活動は続く。また、監督などSAG-AFTRAに参加していない人には禁止措置は関係ないため、PR活動は監督中心になる可能性が高い。
歴史的なストライキとされている理由は?
ハリウッドでは5月から全米脚本家組合(WGA)が再放送料の増額やAI規制を求めて約15年ぶりの大規模ストライキに入った。一方、SAGが最後に大規模ストライキを起こしたのは1980年。俳優組合と脚本家組合が同時にストライキに入るのは1960年以来初のため、歴史的な大規模ストライキとされている。
ストライキはどのくらい続く予定? 経済的なダメージは?
ストライキがいつまで続くという明確な日程は誰にも分からないが、1980年にSAGがストライキを起こしたときには、7月21日~10月23日の約3ヵ月間続いた。WGAが約15年前に大規模ストライキを起こした時も約3ヵ月だった。
ストライキ後すぐに再交渉して合意できたため14時間で終わった1986年の俳優ストライキのような事例もあるが、今回は、AMPTP側が「労働組合は遺憾ながら、この業界に依存する数え切れないほど多くの人々の経済的苦難につながる道を選んだ」と、SAG-AFTRA側が「私たちには選択肢がありませんでした。被害者は私たちです。私たちは非常に貪欲な存在の犠牲になっているのです」と、相手側を批判する声明を出しているため、すぐに解決されそうな雰囲気にない。
先にストライキに入っていたWGAが5月に米Deadlineに明かした推定額によると、ストライキがカリフォルニア州の経済にもたらす損失は1日約41億円(3,000万ドル)。そのストライキに俳優を含めたパフォーマーたちが加わることになるわけだが、米CNNはその経済損失が全体で40億ドル以上(約5,500億円)に達する可能性を報じている。