映画『バービー』では痛烈な“マテル社いじり”が繰り返されるが、製作陣のバービーに対する深い愛が感じられるからトゲトゲしさがない笑いになっている。この絶妙なギャップの調和の起点は、ガーウィグ監督の幼少期にあることを、グレタ・ガーウィグ監督がフロントロウ編集部に明かした。(フロントロウ編集部)

バービー好きではない母親に育てられたグレタ・ガーウィグ監督

 近所の子どものおさがりのバービーで遊ぶほどバービーが好きだったというグレタ・ガーウィグ監督。一方で、母親がバービー好きではなかったため、バービー人形が過去に広めた標準体型や女性らしさに対するステレオタイプを教わって育ったという。

 「私はバービーが好きでない母親のもとで育ったので、子どもの頃は、バービーに対するあらゆる反論をきちんと認識していました。でも、バービーは進化し、変化してきた。バービーの信念である、誰もが(バービーランドという)この世界に自分を見つけることができるということを映画で見せることが重要だったのです」。

 バービーの表も裏も知り尽くしたうえでバービーを愛する監督だからこそ、マテル社がバービーのハッピーな部分もアンハッピーな部分もすべて見せることが絶対条件だったそう。マテル社からは、バービーの複雑な側面をどれだけ取り上げるかに対して不安の声があがることがあったものの、もしもマテル社が“マテル社いじり”を許容できない場合は、「このような映画にしたくないなら良いです。私はバービーの映画なら何でもいいわけではなく、このバービーの映画が作りたいのです」と言って断っていただろうと話す。「バービーのきれいではない部分もすべて認めないといけないと心から思ったのです。そうじゃないと、不誠実であると感じました」。

画像1: バービー好きではない母親に育てられたグレタ・ガーウィグ監督

 マテル社は「最終的には、気まずいと思うことに慣れてくれるようになった」そうだが、監督自身は毎日、「(マテル社が)こんな映画作らせてくれるなんて」と思っていたそうで、「盗んだクルマかのように走れという表現がありますが、つねにそういう気分でした。この映画を盗んだかのように走らなければ。だってもし捕まったら、クルマ(=映画)を返さなきゃいけないからってね」と、制作中に内心持っていた“ヒヤヒヤ感”を明かして笑った。

 そして、劇中の“マテル社いじり”に嫌味がない背景には、丁寧なキャスト選びがある。キャスティングにおいて監督がこだわったのが、バービーをバカにすることなくネタにできる人であること。「とても面白いけど、決してバカにしない、真摯な姿勢で挑んでくれる人たちを求めました。キャスティングにおいてはそこが最も重要でしたね。結果的に、最高のグループとなりました」と監督は説明する。

画像2: バービー好きではない母親に育てられたグレタ・ガーウィグ監督

 ちなみに今回の取材中には、アメリカでムーブメントとなっているバーベンハイマー(※)に関連したミーム騒動の話にもなった。監督はこの件について、「ワーナー・ブラザースが謝罪することは私にとっては重要なことでした」コメント。「彼らが(謝罪を)したことは重要なことだと思いました」と強調した。

 映画『バービー』は8月11日公開。

※『バービー』と『オッペンハイマー』という大作映画が7月21日に全米で同時公開されたことを受けてインターネット上で誕生した、“夏の超大作を両方とも観に行こう”というムーブメント。

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