埼玉の自民党県議団が提案した、小学3年生以下の子どもだけで留守番・外出させることを虐待として禁じる埼玉県虐待禁止条例改正案が、子育て世代を中心に県民・国民からの大きな反発を受けて撤回に追い込まれた。アメリカでは2022年に、仕事のため14歳の娘に下の子どもたちを預けて留守番させたひとり親が逮捕・起訴されて論争になった。(フロントロウ編集部)

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仕事に行かなくてはいけないのに、保育園に預けられない

 米ジョージア州ブレアズヴィルで5人の子どもと暮らすシングルマザーのメリッサ・ヘンダーソンさん。2020年5月に仕事のために家を空ける必要があったが、当時は新型コロナウイルスの流行中で保育園や小学校が閉まっていたため、仕方なく14歳の娘に留守を預けて仕事に出かけた。

 留守番中、家の外に友達がいるのを発見した4歳の息子がひとりで外に出て友達と遊び始めたという。10~15分ほどの話だったというが、これを見た友人の母親が警察に通報。ここから、ヘンダーソンさんの悪夢が始まった。

画像: 右側に見えるのが友人の家で、4歳の息子はそちらの方に友人の姿を見て外に出たという。 www.gofundme.com

右側に見えるのが友人の家で、4歳の息子はそちらの方に友人の姿を見て外に出たという。

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 約2週間後、警察が子どもたちの目の前でヘンダーソンさんを逮捕。ヘンダーソンさんは、有罪判決を受けたら最高で懲役1年・罰金1,000ドルが科せられる「無謀な行為(reckless conduct)」で起訴された。「無謀な行為」は、過失訴訟においてその行為が他人に危害を加えることを知っていた、または知るべきであった行為に対して使われるもの。

 裁判費用を捻出するためのクラウドファンディングページでヘンダーソンさんの家族が綴ったところによると、ヘンダーソンさんは逮捕のせいで仕事をする機会が奪われ収入が減ったせいで借金することになり、養育環境はさらに厳しくなったという。

 英語には“it takes a village to raise a child”という表現がある。直訳すると、「子どもを育てるためには村が必要だ」となり、「子どもは地域のみんなで協力して育てなくてはいけない」という意味にあたる。しかし今回の場合は地域が協力するどころか、ただでさえ助けが必要な母親をさらに追い込む状況が作り出され、米Reasonが最初に事件を報じると、SNSを中心に強い批判が行政に集まった。

「このニュースには多くの悲劇が含まれていますが、とくに痛ましいのは、このシングルマザーにはコミュニティが必要なのに、そのコミュニティが彼女を捕まえようとしていることです」

「子どもが外に走り出してしまっただけで刑務所に入れられるなら、私は今から保釈金を貯めておくべきみたいですね」

「1日の一部分であっても母親が子どもから離れてはダメだと言っておいて、母親を刑務所送りにして数ヵ月くらい子どもと離すことがなぜ良い判断であるのか教えてください」

 ヘンダーソンさんはこのような状況にある保護者を支援するNPO団体Parents USAを創設したデヴィッド・デルガス弁護士に弁護をしてもらえることになったが、裁判は長く続き、2023年4月にようやく裁判所がヘンダーソンさんに無罪を言い渡した。

 しかしヘンダーソンさんの闘いはまだ終わりではない。Reasonによると、ヘンダーソンさんの元夫が今回の逮捕を一因として下の子ども2人の親権を求めているそうで、ヘンダーソンさんは争う姿勢だという。また、今後の就職に影響が出ないように、逮捕記録や裁判所の記録を抹消するために時間とお金がかかるとのこと。ヘンダーソンさんはGoFundMeでそれらの費用を募っている。

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