ストーリーテリングとイノベーション。ディズニーの100年の歴史はこの二つの言葉とつねにリンクしてきた。創立100周年イヤーの集大成となる映画『ウィッシュ』がついに日本公開されたことを記念して、ディズニーがこの100年に実現してきた“史上初”の数々を巡る旅に出る。
画像: ミッキーマウスの短編映画シリーズとして最初に公開された作品『蒸気船ウィリー』 ディズニープラスで配信中 © 2023 Disney

ミッキーマウスの短編映画シリーズとして最初に公開された作品『蒸気船ウィリー』 ディズニープラスで配信中 © 2023 Disney

1. 最新のテクノロジーを次々と導入

 アニメーションからアトラクションまで、ウォルト・ディズニーはつねに革新的なテクノロジーの手を借りてイマジネーションを具現化してきた。

 1920年代に『蒸気船ウィリー』で音と音楽が完全にシンクロした初のアニメーション映画を制作したところからはじまり、1930年代にはアニメーション映画として初めて三色法のテクニカラーを使用。1940年代には『ファンタジア』で映画史上初めてステレオサウンドを使用し、1950年代には初のステレオテレビ/ラジオ同時放送を実現。1960年代にはディズニーランドで初めて立体アニメーション(オーディオ・アニマトロニクス)を使用した。

 ウォルトのレガシーは現代にも受け継がれており、2021年にはディズニー・カリフォルニア・アドベンチャーのアベンジャーズ・キャンパスにて初めて曲芸飛行が可能なロボットフィギュア「スタントロニクス」の通常運用を開始したり、2022年にはあらゆる方向に回転できる初のコースター型ライドシステムを導入したりと、最新テクノロジーの導入は続く。

2. アカデミー賞に新しい部門を新設させた

 32ものアカデミー賞受賞歴があるウォルト・ディズニーだが、すごいのは受賞したことだけではない。彼は世界が未だかつて見たことがないストーリーテリングをしていたため、アカデミー賞は彼をきっかけに最優秀カートゥーン賞という部門を新設。この部門は現在はアカデミーアニメ映画賞(長編と短編)として知られている。

 アカデミー賞はもともとアニメーション作品の評価をすることにあまり乗り気ではなかったそうだが、それをディズニーが変えて現在までのレールを敷いてくれたのだ。

 ちなみに、アカデミー賞では1992年に『美女と野獣』がアニメーション作品として初めてアカデミー賞作品賞にノミネート。それ以来、ディズニー/ピクサー作品の『カールじいさんの空飛ぶ家』と『トイ・ストーリー3』が同じ快挙を達成した。

画像: ミッキーマウスとオスカー像と共にポーズするウォルト・ディズニー ©ニュースコム

ミッキーマウスとオスカー像と共にポーズするウォルト・ディズニー ©ニュースコム

3. 物語+音楽というストーリーテリングを確立し、サントラ文化を生んだ

 今でこそ映画のサウンドトラックは当たり前だが、その当たり前を作ったのもディズニー。史上初の長編アニメーション映画『白雪姫』で音楽とストーリーを統合したストーリーテリングという新しい業界基準を作り、本作より、史上初のオリジナル・モーション・ピクチャー・サウンドトラックを発売した。

4. テレビ、VHS、ストリーミングと、時代に合わせたフォーマットで観客と繋がった

 エンターテイメントを観客に届けるためにはどうしたらいいか? ディズニーはつねに観客と共に進化してきた。

 1950年代には、他のハリウッドスタジオが敵視していたテレビ業界に進出。『ミッキーマウス・クラブ』(1959年~1961年)や『怪傑ゾロ』(1957年~1959年)などのヒット作を製作した。1980年代には、家庭用ビデオ(VHS)のリリースを始め、VHSシリーズ第1弾『ダンボ』は驚異的な売り上げを記録。そして2019年、定額制動画配信サービスDisney+をローンチして初日登録者数1,000万を突破した。

5. 若者のコミュニティを作り、未来のスターを多く輩出

 ディズニーはテレビを通して新しいスターを輩出し、若者のコミュニティを作り、ティーン/キッズカルチャーをけん引してきた存在でもある。若いキャストたちを中心にした番組『ミッキーマウス・クラブ』(1959年~1961年)を成功させたディズニーは、1983年にディズニー・チャンネルをローンチ。

 同チャンネルから排出された未来のスターは、ブリトニー・スピアーズ、クリスティーナ・アギレラ、ジャスティン・ティンバーレイク、ライアン・ゴズリング、マイリー・サイラス、ザック・エフロン、セレーナ・ゴメス、ダヴ・キャメロンなど、挙げ出したらきりがない。ディズニー・チャンネルは日本でも放送され、観客に新たな視点を与えるなど、キッズ/ティーン層に大きな影響を与えた。

画像: 『ハイスクール・ミュージカル』は現代セレブにも影響を与えるほどの社会現象になった。ディズニープラスで配信中 ©2023 Disney

『ハイスクール・ミュージカル』は現代セレブにも影響を与えるほどの社会現象になった。ディズニープラスで配信中 ©2023 Disney

6. ディズニーランドがファミリーエンターテイメントを変えた

 テーマパークという、今では定番になったファミリーエンターテイメントを主流にしたのもディズニー。1955年、世界初のテーマパークであるディズニーランドが開業。遊園地でおなじみのスリルを味わうための乗り物ではなく、物語を伝える“アトラクション”で観客をディズニーワールドに没入させるという楽しみを作り出した。

 1983年には東京ディズニーランドで海外初進出。現在では世界6都市に12のパークがオープンしており、そのほかにも、53のリゾートホテル、クルーズ船5隻(2024年と2025年にさらに2隻完成予定)、ディズニーの世界に住める企画型コミュニティなど、ディズニーのホスピタリティ・ビジネスは広がり続けている。

画像: カリフォルニア州アナハイムのディズニーランド ©ニュースコム

カリフォルニア州アナハイムのディズニーランド ©ニュースコム

7. ブロードウェイミュージカルの歴史を変えた

 ディズニーは、ミュージカルの本場であるニューヨークのブロードウェイに新たな人気コンテンツを誕生させた。

 1993年、ディズニーの名作をミュージカルとしてオーディエンスに届けるためにディズニー・シアトリカル・プロダクションズを設立し、翌年、史上初のアニメーション発のブロードウェイミュージカル『美女と野獣』が初上演。2023年現在、『ライオン・キング』のミュージカルはブロードウェイで史上最高収益を記録しているミュージカルとして君臨している。

8. ボックスオフィスの記録を何度も塗り替えてきた

 『ファインディング・ニモ』と『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』がメガヒットした2003年に映画スタジオとして史上初めて世界収益30億ドルを達成したディズニーは、その後も、『トイ・ストーリー3』(2010)で長編アニメーション映画として初めて全世界興行収入10億ドルを達成するなど記録更新を続け、現在、興行収入歴代トップ3は『アバター』2作と『アベンジャーズ/エンドゲーム』と、ウォルト・ディズニー・カンパニーが独占している。


 クリエイターたちが作るストーリー、キャラクター、音楽を中心に、エンターテイメントで世界を何度も変えてきたディズニー。最新作『ウィッシュ』では、100年の間に誕生したディズニーのオリジナル作品にインスパイアされながら、新たなストーリーを紡ぐ。ディズニー100年間の集大成であり、ディズニーの未来を感じる作品である『ウィッシュ』は劇場公開中。

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