隠すはずの剣山を見せる。ZARA HOMEとベルリンの花スタジオ


花を活ける時、茎を支えているものは基本的に見せない。剣山もピンも、水の中や葉の陰に隠すのが前提の道具だ。ZARA HOMEが8月27日に発売した新しいコレクションは、その前提をひっくり返している。(フロントロウ編集部)
隠すはずの「メカニック」を、そのままデザインにした
ZARA HOMEが組んだのは、ベルリンを拠点とするボタニカル・デザイン&フラワーアート・スタジオ、スタジオ・メアリー・レノックス(Studio Mary Lennox)。オーストラリア出身のフラワーアーティスト、ルビー・バーバーが設立したスタジオで、季節への理解と植物の観察、そして彫刻的な構成によって現代のフラワーデザインを更新してきた存在だ。
今回のコレクションは花器とフローリストツール、デコラティブオブジェで構成される。核にあるのは「メカニック」――プロが花を固定するために使う仕組みを、隠さずにデザインの一部として組み込むという発想だ。仕切り(グリッド)を一体化させた花器、茎が自然に決まる位置へ落ちるフォルム、そしてピンや剣山そのもの。プロが手の内でやってきたことを、道具の形として外に出したことになる。
裏を返せば、花を活けるのがうまくいかない理由の多くは、センスではなく支える仕組みの問題だったということでもある。
「理想の器を探し続けた末」に生まれた
コレクションの出発点は、スタジオ・メアリー・レノックスで実際に最も使い込まれてきた花器だという。花を美しく、かつ正確に支える器を長年探し求めた末にたどり着いた形が、そのまま製品になった格好だ。
素材の選び方も具体的だ。鋳造ブラス、ヘアライン仕上げのステンレススチール、ストーンウェア(炻器)、磁器、オニキス、銅、亜鉛。彫刻的な佇まいと実用性を両立させるための組み合わせで、花器や台座のほか、じょうろや植物まわりのアクセサリーまでが同じトーンで揃う。ビジュアルは20世紀初頭のフラワーデザインスタジオを思わせる設えで撮影された。

価格帯は2,290円から45,900円。ZARA HOME公式オンラインストアで8月27日(木)から販売されている。剣山1本から入れる幅があるのは、プロ向けの道具箱ではなく日常の習慣に落とし込むことを狙ったからだろう。
スタジオ名は『秘密の花園』の主人公から
スタジオの名前は、フランシス・ホジソン・バーネットの小説『秘密の花園』の主人公メアリー・レノックスに由来する。自然の美しさと、それが人を癒やす力を描いた物語だ。
そしてもうひとつ、偶然が重なっている。ルビー・バーバーが最初にスタジオを構えたのは、オーストラリア・シドニーのメアリー・ストリートとレノックス・ストリートの交差点だった。2012年にベルリンへ拠点を移してからは、花をひとつの表現媒体として扱うアプローチで国際的な評価を確立し、小規模なアレンジメントから大規模なフローラル・インスタレーション、空間デザインまでを手がけている。
ZARA HOMEは、ZARAやマッシモ・ドゥッティ、ベルシュカなどと同じインディテックス・グループのホームファニシングブランド。2003年の誕生以来、世界60以上の市場に広がっている。手ごろな価格でインテリアの気分を変えられるブランドという意味では、イケアの新作コレクションと同じ棚に並ぶ存在だ。今回はそこに、花を扱う専門的な知見が持ち込まれた。















